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従業員への表彰金は給与? 一時所得? 所得区分と源泉徴収を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 5月29日
  • 読了時間: 9分

おはようございます!代表の安田です。


会社では、従業員のモチベーション向上や業績貢献への感謝を目的として、表彰金を支給することがあります。


たとえば、新商品の企画がヒットした従業員に報奨金を支給するケース、業務改善のアイデアを出した従業員を表彰するケース、営業成績に応じてインセンティブを支給するケースなどです。


一方で、経理・人事担当者からは、次のような相談を受けることがあります。

  • 従業員への表彰金は給与として源泉徴収が必要なのか

  • 通常業務とは別に出したアイデアへの報奨金も給与になるのか

  • 一時所得や雑所得になるケースはあるのか

  • 永年勤続表彰の記念品も課税されるのか」


表彰金は、会社から従業員へ支払われる金銭であるため、すべて給与所得になりそうにも見えます。しかし、税務上はその表彰の対象となった功労が、従業員の通常の職務の範囲内かどうかによって取扱いが変わります。


今回は、従業員へ支給する表彰金の所得区分と源泉徴収の要否について、税理士の視点からわかりやすく解説します。


1.会社が従業員に支払う金銭は原則として給与所得

まず、基本的な考え方を確認しましょう。


会社が従業員に対して支払う金銭や経済的利益は、所得税法上、原則として給与所得に該当します。給与所得に該当する場合、会社は支払時に所得税を源泉徴収する必要があります。


会社が従業員に対して支払う金銭等は、所得税法上、原則として給与所得に区分され、源泉徴収が必要とされています。


そのため、表彰金や報奨金という名称であっても、まずは給与所得に当たらないかを確認することが出発点です。


2.通常の職務の範囲内なら給与所得

従業員への表彰金で重要なのは、その功労が通常の職務の範囲内かどうかです。


事務作業の合理化や製品品質の改善など、業務上有益な考案等をした従業員に表彰金を支給する場合、その考案等が功労者の通常の職務の範囲内であれば、給与所得に区分されるとされています。


たとえば、商品開発部の従業員が新商品の企画立案を行ない、その商品がヒットしたため会社が表彰金を支給する場合を考えてみましょう。


商品企画は商品開発部員にとって通常の職務の範囲内と考えられます。そのため、この表彰金は給与所得となり、会社は源泉徴収を行なう必要があります。


3.業務上の功績も同じ考え方で判断する

特許等を受けるに至らない程度の考案等に関する取扱いについて触れたうえで、業務上の功績等についても同様に考えて良いでしょう。


つまり、発明や考案だけでなく、売上増加、業務改善、品質向上、コスト削減などの功績についても、本人の通常業務の範囲内かどうかで判断します。


たとえば、営業担当者が営業活動の中で大口契約を獲得し、会社が表彰金を支給する場合、その営業活動は通常の職務の範囲内です。この場合、表彰金は給与所得として処理するのが基本です。


4.通常の職務の範囲外なら一時所得または雑所得

一方で、従業員の考案や功績が通常の職務の範囲外である場合は、給与所得とは異なる取扱いになります。


従業員の考案等が通常の職務の範囲外のものである場合に支給する表彰金について、一時所得または雑所得に区分され、源泉徴収は不要とされています。


たとえば、営業部員が、通常業務とは別に新商品の企画アイデアを出し、その企画が採用されて表彰金を受け取った場合です。


商品の企画立案がその営業部員の通常の職務の範囲外であれば、表彰金は給与所得ではなく、一時所得または雑所得として扱われる可能性があります。


5.一時に支給されるなら一時所得

通常の職務の範囲外の功績に対する表彰金であって、支給が一回限りである場合には、一時所得に該当することがあります。


通常の職務の範囲外として商品の企画立案を行なった営業部員等に表彰金を支給する場合、その支給が一時に支払われるのであれば、一時所得に区分されるとされています。


一時所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得ではなく、一時的・偶発的な所得です。そのため、単発の表彰金や報奨金は、一時所得として整理される可能性があります。


6.継続的に支給されるなら雑所得

一方で、通常の職務の範囲外の功績に対する表彰金であっても、支給が継続的に行なわれる場合には、雑所得になることがあります。


たとえば1万個売り上げるごとに支給するなど、売上等に応じて複数回にわたり継続的に支給される場合は、雑所得になると整理されています。


つまり、通常の職務の範囲外であっても、支給方法が一回限りか、売上や成果に応じて継続的に発生するかによって、所得区分が変わります。


7.給与所得・一時所得・雑所得の違い

表彰金の所得区分を整理すると、次のようになります。

通常の職務の範囲内の功績に対する表彰金は、給与所得です。会社が支払う際には源泉徴収が必要になります。


通常の職務の範囲外の功績に対する表彰金で、単発・一時的に支給されるものは、一時所得になる可能性があります。この場合、会社での源泉徴収は不要とされています。


通常の職務の範囲外の功績に対する表彰金で、売上等に応じて複数回・継続的に支給されるものは、雑所得になる可能性があります。この場合も、給与所得とは異なり、源泉徴収は不要と整理されています。


8.「表彰金」という名称では判断しない

実務で特に注意したいのは、名称だけで判断しないことです。

会社が「表彰金」「報奨金」「インセンティブ」「特別賞」などの名称で支給していても、税務上は、その名称ではなく、支給の実態を見て判断します。

重要なのは、次の3点です。

  • 表彰対象となった功績は何か

  • その功績は本人の通常の職務の範囲内か

  • 支給は一時的か、継続的か


たとえば「表彰金」と呼んでいても、営業成績に応じて営業担当者へ支給するものであれば、通常は給与所得として扱うべきでしょう。


9.社内表彰制度を設計するときの注意点

会社が表彰制度を設計する場合、税務処理まで考えて制度を作ることが重要です。

特に、次のような点を事前に整理しておくと、経理・人事処理が安定します。

  • 表彰対象となる行為や成果

  • 対象者の職務内容

  • 支給金額の算定方法

  • 支給回数

  • 支給時期

  • 源泉徴収の要否

  • 就業規則や表彰規程との整合性


表彰制度は従業員の意欲向上につながる有効な仕組みですが、税務上の所得区分を誤ると、源泉徴収漏れや年末調整ミスにつながる可能性があります。


10.永年勤続表彰の記念品は非課税になる場合がある

従業員表彰の代表例として、永年勤続表彰があります。

永年勤続表彰で支給する記念品等について、一定の要件を満たせば課税されないとされています。具体的には、社会通念上相当な金額であること、勤続年数がおおむね10年以上の者を対象にしていることなどの要件が挙げられています。


つまり、永年勤続表彰については、通常の業績表彰金とは別に、一定の非課税取扱いがあります。


ただし、金銭で支給する場合や、社会通念上高額な記念品を支給する場合には、給与課税の問題が生じる可能性があります。永年勤続表彰だから必ず非課税、というわけではありません。


11.源泉徴収漏れに注意

表彰金が給与所得に該当する場合、会社には源泉徴収義務があります。

もし給与所得として処理すべき表彰金を、一時所得や雑所得と誤って源泉徴収しなかった場合、税務調査で源泉徴収漏れを指摘される可能性があります。


特に、通常業務に関連する功績への表彰金は、給与所得と判断されやすい点に注意が必要です。


たとえば、商品開発担当者への新商品企画の表彰金、営業担当者への売上達成表彰金、製造部門への品質改善表彰金などは、本人の職務内容との関係を慎重に確認する必要があります。


12.実務でよくある誤解

このテーマでは、次のような誤解が起こりやすいです。

① 表彰金は給与ではないので源泉徴収不要

これは危険です。会社が従業員に支払う金銭等は、原則として給与所得に区分され、通常の職務の範囲内の功績に対する表彰金は給与所得になります。


② 通常業務外のアイデアへの表彰金も必ず給与所得

これも一概にはいえません。通常の職務の範囲外の考案等に対する表彰金は、一時所得または雑所得に区分され、源泉徴収は不要とされています。


③ 1回限りでも継続支給でも所得区分は同じ

これも誤りです。通常の職務の範囲外の功績であっても、一時に支払われる場合は一時所得、売上等に応じて複数回にわたり継続的に支給される場合は雑所得になります。


④ 永年勤続表彰は必ず非課税

これも注意が必要です。永年勤続表彰の記念品等は、社会通念上相当な金額であることや、勤続年数がおおむね10年以上であることなど、一定の要件を満たす場合に非課税とされています。


13.会社が確認しておきたい実務ポイント

従業員に表彰金や報奨金を支給する場合は、次の点を確認しましょう。

  • 表彰対象となる功績は何か

  • その功績は本人の通常の職務の範囲内か

  • 支給対象者の部署・職務内容は何か

  • 支給は一回限りか、継続的か

  • 給与所得として源泉徴収が必要か

  • 一時所得または雑所得として扱う根拠があるか

  • 永年勤続表彰の場合、非課税要件を満たしているか

  • 表彰規程や支給決裁資料を保存しているか


まとめ

従業員へ支給する表彰金は、名称だけで税務処理を判断してはいけません。会社が従業員に支払う金銭等は、原則として給与所得に区分され、源泉徴収が必要です。特に、事務作業の合理化、製品品質の改善、新商品の企画立案などが、本人の通常の職務の範囲内である場合、その表彰金は給与所得になります。


一方で、その考案や功績が通常の職務の範囲外である場合には、支給形態により一時所得または雑所得に区分されます。一時に支払われる表彰金は一時所得、売上等に応じて複数回にわたり継続的に支給されるものは雑所得となり、源泉徴収は不要とされています。


また、永年勤続表彰で支給する記念品等については、社会通念上相当な金額であることや、勤続年数がおおむね10年以上の者を対象にしていることなどの要件を満たせば、課税されない取扱いがあります。


表彰制度は従業員の意欲向上に役立つ一方、税務上は所得区分を誤りやすい分野です。だからこそ、表彰対象となる功績が通常業務の範囲内かどうか、支給が一時的か継続的かを確認し、源泉徴収の要否を正しく判断することが大切です。


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