おはようございます!代表の安田です。
2024年9月に企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した新リース会計基準により、従来のオペレーティング・リース取引もオンバランス処理が求められるようになりました。これにより、一部の上場会社の子会社が「会社法上の大会社」の定義に該当し、法定監査の対象となる可能性が出てきました。
この変化により、負債の増加が子会社の監査要件に影響を及ぼすかどうかが議論されています。本記事では、新基準の適用に関する問題点を整理し、上場会社の子会社が新リース会計基準を回避することが可能かどうかについて解説します。
<新リース会計基準の影響>
新リース会計基準では、オペレーティング・リースもオンバランス処理となり、負債が増加します。その結果、以下の影響が考えられます。
会社法における「大会社」(負債200億円以上)に該当し、法定監査の対象になる可能性
これまで監査法人による監査を受けていなかった子会社も、監査が義務化される可能性
監査対応によるコスト増加や業務負担の増大
<中小企業会計指針の適用は可能か?>
上場会社の子会社が監査義務を回避する方法として、中小企業会計指針(中小会計指針)の適用が検討されました。しかし、以下の理由から適用は難しいと考えられます。
中小会計指針の適用除外要件
金融商品取引法(金商法)に基づく開示対象企業の子会社・関連会社は、中小会計指針を適用できません
したがって、上場会社の子会社は適用対象外となります
ASBJ基準による会計方針の統一
会計方針はグループ会社間で統一することが原則(連結会計基準10項・17項)
これにより、子会社のみ従来のオフバランス処理を続けることは許されない可能性が高い
<例外的な回避策は可能か?>
仮に、子会社が個別財務諸表では従来のリース処理を継続し、連結修正で対応することは可能でしょうか?
会社計算規則3条では「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」に従うことが求められる。
連結会計基準上、会計方針の統一が求められるため、「個別財務諸表での従来基準の適用」は法令違反と判断される可能性が高い。
このため、形式的な回避策を取ることは難しく、監査対象の拡大を受け入れる必要があると考えられます。
<まとめ>
新リース会計基準の適用により、上場会社の子会社は法定監査の対象となる可能性が高まります。中小企業会計指針の適用は難しく、子会社単体で従来のオフバランス処理を続けることも困難です。
これにより、以下の点が今後の課題となります。
監査コストの増加にどう対応するか
グループ内での会計方針統一の適用範囲をどこまで厳格にするか
企業の財務戦略として、新リース会計基準の影響をどのように管理するか
上場会社グループにとっては、新リース会計基準の適用による影響を十分に考慮し、事前の対応策を検討することが重要です。

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