使用人を役員として出向させた場合の給与負担金・退職給与負担金の税務処理を税理士が解説
- 安田 亮
- 6月30日
- 読了時間: 22分
こんにちは!代表の安田です。
グループ会社間では、親会社の使用人を子会社へ出向させるケースがよくあります。
たとえば、親会社の管理職を子会社の取締役として出向させる場合です。
子会社の経営管理を強化するため、親会社の経理部長を子会社の取締役管理本部長にする。
新規事業を立ち上げるため、親会社の営業責任者を子会社の代表取締役にする。
事業再建のため、親会社の幹部社員を関係会社の取締役として送り込む。
こうした出向は、実務ではよく行なわれていますが、税務上は注意点が多い分野です。
出向者への給与は誰が負担すべきなのか
出向元が給与を支払い、出向先が給与負担金を支払う場合、出向先では損金になるのか
出向先で役員になっている場合、役員給与の定期同額給与や事前確定届出給与のルールはどうなるのか
出向者が将来退職する際、退職金のうち出向期間に対応する部分は誰が負担すべきなのか
このあたりを曖昧にしたまま処理していると、寄附金課税、役員給与の損金不算入、事前確定届出給与の届出漏れ、出向元側での益金計上漏れなどにつながる可能性があります。
本日は、使用人を役員として出向させた場合の給与負担金と退職給与負担金について、法人税実務のポイントを税理士の視点から解説します。
出向と転籍の違い
まず、出向と転籍の違いを確認しましょう。
出向とは、使用人が出向元法人との雇用関係を維持したまま、出向先法人で労務を提供することをいいます。つまり、出向者は出向元に籍を残したまま、出向先で働きます。
これに対して、転籍とは、出向元との雇用関係を終了し、相手先法人へ移籍して、その法人の従業員または役員として働くことをいいます。
出向と転籍の本質的な違いは、出向元との労働契約関係が存続しているかどうかです。
出向では、出向元との雇用関係が続いています。
そのため、給与の支給、社会保険、退職金、労務管理について、出向元と出向先の間で精算が必要になることがあります。
出向者の給与は誰が負担するのが原則か
税務上、法人の使用人が出向した場合、その出向者に支給する給与は、労務の提供を受ける出向先法人が負担するのが原則です。
なぜなら、出向者は出向先法人のために働いているからです。
出向先法人がその労務提供を受けて事業活動を行なっている以上、その給与相当額は出向先法人が負担すべき費用と考えられます。
給与の支給方法には、大きく2つあります。
1つ目は、直接支給です。
出向先法人が出向者へ直接給与を支払う方法です。
2つ目は、間接支給です。
出向元法人が出向者へ給与を支払い、出向先法人が出向元法人へ給与負担金を支払う方法です。
実務では、出向元との雇用関係が継続しているため、間接支給が多いでしょう。
間接支給の場合の給与負担金
間接支給の場合、出向元法人が出向者へ給与を支給します。
そして、出向先法人は、出向元法人へ給与負担金を支払います。
この給与負担金は、出向先法人において、出向者に対する給与として取り扱われます。
名称が「給与負担金」であれば分かりやすいですが、実務では別の名称で処理されることもあります。
たとえば、経営指導料、業務委託料、出向費用、管理費、グループ支援料などです。
しかし、名目が経営指導料などであっても、その実質が出向者の給与相当額であれば、給与負担金として取り扱われます。
そのため、出向契約書や請求書では、給与相当部分、福利厚生部分、経営指導料部分などをできるだけ明確に区分しておくことが重要です。
出向先が負担しない場合は寄附金課税に注意
出向者の給与は出向先法人が負担するのが原則です。
それにもかかわらず、出向先法人が給与負担金を負担せず、出向元法人が給与を負担したままにしている場合、合理的な理由がなければ問題になります。
この場合、出向元法人が本来出向先法人が負担すべき給与を肩代わりしていると考えられます。税務上は、出向元法人から出向先法人への経済的利益の供与、つまり寄附金として取り扱われる可能性があります。
寄附金になると、出向元法人では損金算入限度額の範囲内でしか損金算入できません。
完全支配関係があるグループ法人間であれば、グループ法人税制により、寄附側では全額損金不算入、受贈側では全額益金不算入などの取扱いが関係することもあります。
いずれにしても、給与負担を曖昧にしておくと、思わぬ税務調整が必要になります。
出向元が差額を負担してもよい場合
出向先法人の給与水準が出向元法人より低い場合、出向元法人が出向者に対して給与水準の維持を保証していることがあります。
たとえば、親会社では月額80万円の給与だった社員を、子会社へ出向させる。
しかし、子会社の役員報酬水準は月額60万円である。
この場合、子会社は60万円を負担し、親会社が差額20万円を支給することがあります。
この差額は、較差補填金と呼ばれることがあります。
合理的な理由がある場合、出向元法人が支給する差額は損金算入され、出向先法人への寄附金とはされません。
典型例は次のようなケースです。
出向元法人の給与水準が出向先法人より高く、出向元が出向者に給与水準維持を保証している場合
出向先法人が経営不振等により賞与を支給できないため、出向元法人が賞与を支給する場合
出向先法人が海外にあるため、出向元法人が留守宅手当を支給する場合
このような場合は、出向元が差額を負担する合理性があります。
出向先が支給額を超えて負担した場合
逆に、出向先法人が出向元法人に対して、出向元法人が出向者に支給した給与額を超える金額を支払う場合にも注意が必要です。
給与負担金としての性質があるのは、基本的には出向者に対する給与相当額です。
それを超える部分について、経営指導料などとして適正額である合理的な理由がない場合には、出向先法人から出向元法人への贈与、つまり寄附金として取り扱われる可能性があります。
たとえば、出向元が出向者に月額80万円を支給しているにもかかわらず、出向先が毎月150万円を給与負担金として支払っている場合です。
差額70万円について、出向者の給与や福利厚生ではなく、実質的な経営指導料やノウハウ提供料としての内容を説明できなければ、寄附金課税のリスクがあります。
出向先が負担する金額は、出向者の給与、賞与、社会保険料、退職金負担など、何の対価なのかを明確にしておきましょう。
出向先で役員になっている場合
出向者が出向先法人で単なる使用人として働いている場合、出向先が負担する給与負担金は、基本的には使用人給与として扱われます。
特殊関係使用人に対する過大給与などに該当しない限り、通常は損金算入されます。
一方、出向者が出向先法人において役員になっている場合には、話が変わります。
出向先法人が支払う給与負担金は、出向先法人における役員給与として取り扱われます。
役員給与となる以上、定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与、過大役員給与などのルールが関係します。
つまり、出向元では使用人として給与を受けている人であっても、出向先では役員である以上、出向先側の税務では役員給与として判定する必要があります。
ここが実務上の大きな落とし穴です。
出向先で役員給与として扱うための要件
出向者が出向先法人で役員になっている場合、出向先法人が支出する給与負担金について、出向先法人における役員給与として損金算入を検討するには、次の要件を満たすことが重要です。
1つ目は、その役員に係る給与負担金の額について、出向先法人の株主総会、社員総会またはこれらに準ずるものの決議がされていることです。出向先法人が支払う給与負担金は、実質的には出向先法人の役員に対する職務執行の対価です。
そのため、会社法上の役員報酬と同じく、株主総会等の決議が必要になります。
2つ目は、出向契約等において、出向期間と給与負担金の額があらかじめ定められていることです。役員給与の損金算入では、あらかじめ定められた支給であることが重要です。
給与負担金についても、後から自由に決めるのではなく、出向契約書等で事前に定めておく必要があります。
株主総会決議が必要な理由
出向先法人で役員となっている出向者への給与負担金は、出向先法人から直接その人へ支払われていないことがあります。しかし、出向先法人が出向元法人へ支払う給与負担金は、実質的にはその役員の職務執行の対価です。
そのため、出向先法人では、通常の役員報酬と同じように株主総会等で決議する必要があります。中小企業では、出向契約書だけを作成し、出向先法人の株主総会議事録や取締役会議事録を作成していないケースがあります。
これは危険です。
出向先法人で役員になっている以上、その給与負担金が役員給与として適正に決定されていることを説明できる資料が必要です。
株主総会で役員報酬の総額を決議し、各人別の具体的金額を取締役会や代表取締役に委任する方法もあります。
いずれにしても、決議の有無を確認しましょう。
出向契約書に定めておきたい事項
出向契約書には、少なくとも次の事項を明記しておくことをおすすめします。
出向者の氏名
出向元法人
出向先法人
出向期間
出向先での役職
出向先での職務内容
給与の支給方法
出向元が出向者へ支給する給与額
出向先が出向元へ支払う給与負担金の額
賞与負担の有無と金額
社会保険料等の負担方法
退職給与負担金の負担方法
精算時期
給与改定があった場合の取扱い
出向契約書に期間と負担額が明記されていれば、役員給与としての定期同額給与や事前確定届出給与の判定もしやすくなります。
逆に、契約書が曖昧だと、後から損金算入可否を説明しにくくなります。
毎月同額で負担する場合
出向先法人で役員になっている出向者について、出向先が毎月同額の給与負担金を支払う場合、その給与負担金は定期同額給与に該当する可能性があります。
たとえば、出向元法人が出向者に月額60万円、賞与を6月と12月に各90万円、年間合計900万円を支給しているとします。出向先法人が、この年額900万円を12で割り、毎月75万円ずつ給与負担金として支払う場合、毎月同額の支払です。
この場合、給与負担金全額が定期同額給与に該当すると整理できます。
定期同額給与に該当すれば、不相当に高額な部分を除き、出向先法人で損金算入できます。
実務上、役員出向者の給与負担金は、毎月同額で負担する形にすると処理が比較的安定します。
出向元の支給に合わせて負担する場合
出向元法人の支給に合わせて、出向先法人が毎月60万円、6月と12月に各90万円を負担する場合はどうでしょうか。
この場合、毎月60万円部分は定期同額給与に該当します。
一方、6月と12月に支払う各90万円の賞与部分は、毎月同額ではありません。
そのため、出向先法人が事前確定届出給与の届出を行なうことで、損金算入を検討することになります。
ここで重要なのは、届出を行なうのは出向元法人ではなく、出向先法人であるという点です。出向者が出向元では使用人であっても、出向先では役員です。
したがって、出向先法人における役員給与として、出向先法人が届出を行なう必要があります。この届出を忘れると、賞与部分が損金不算入になるリスクがあります。
まとめて支払う場合
出向先法人が毎月ではなく、6月と12月にそれぞれ450万円ずつ、年2回にまとめて給与負担金を支払うケースもあります。
この場合、毎月同額の支払ではないため、定期同額給与には該当しません。
出向先法人が事前確定届出給与の届出を行なうことで、損金算入を検討することになります。ただし、出向先法人が同族会社でない場合で、1か月以下の定期の給与負担金支出がないときには、届出不要とされる取扱いもあります。
とはいえ、中小企業では同族会社に該当することが多いため、基本的には届出の要否を慎重に確認すべきです。
また、事前確定届出給与は、届出どおりに支給する必要があります。
6月に450万円、12月に450万円と届出したにもかかわらず、12月は資金繰りの都合で100万円しか支払わなかった場合、6月分を含めて損金不算入となる可能性があります。
届出どおりに支払わないと損金不算入リスク
事前確定届出給与は、届出どおりに支給することが非常に重要です。
出向先法人で役員となっている出向者の賞与相当の給与負担金についても同じです。
たとえば、出向契約で6月と12月に各90万円を出向先が負担すると定め、事前確定届出給与として届出したとします。
6月には届出どおり90万円を支払ったものの、12月には資金繰りの都合で10万円しか支払わなかった場合、6月分90万円と12月分10万円の合計100万円が損金不算入となるリスクがあります。
一部だけが否認されるのではなく、届出どおりに支給されなかった給与全体が問題になる可能性があります。
ただし、12月の減額が臨時改定事由や業績悪化改定事由に該当する場合には、変更届出書の提出により損金算入が認められる余地があります。
いずれにしても、事後的に支払額を変えるのは危険です。
出向元で給与改定があった場合
出向者は、出向元法人では使用人です。
そのため、出向元法人でベースアップや昇給が行なわれ、出向者の給与が変更されることがあります。
このとき、出向先法人で出向者が役員となっている場合には、給与負担金の変更が役員給与の改定に当たる可能性があります。
定期同額給与として損金算入するには、原則として事業年度開始の日から3か月以内に改定する必要があります。
ただし、出向元法人と出向先法人の決算期が異なる場合や、出向元法人での労使交渉が長引いた場合など、3か月経過後に改定されることについて特別の事情があると認められる場合には、通常改定として認められる余地があります。
給与負担金の改定は、出向元の人事制度だけでなく、出向先の役員給与税制にも影響します。
事後的な臨時賞与を出向先に請求する場合
出向元法人で業績が良かったため、使用人全体に臨時賞与を支給することがあります。
出向者にも同じように臨時賞与を支給し、その出向者分を出向先法人に請求する場合は注意が必要です。
出向先法人で出向者が役員になっている場合、その臨時賞与分の給与負担金は、定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与のいずれにも該当しない可能性があります。
その場合、出向先法人では損金算入できません。
無駄な税負担を避けるためには、事後的に発生した給与について、較差補填金として合理的なものは出向先法人に請求せず、出向元法人が負担する方がよいケースがあります。
出向者が出向先で役員か使用人かによって、追加支給の扱いが大きく変わるため、事前に確認しましょう。
退職給与負担金の基本
出向者の退職給与についても、基本的な考え方は給与と同じです。
法人の使用人が出向した場合、その出向者に対する給与は、労務提供を受ける出向先法人が負担するのが原則です。
退職給与についても、出向者が出向元法人に復帰し、後日退職する際に出向元法人が支給する退職給与のうち、出向期間に対応する部分は、基本的には出向先法人が負担すべきものと考えられます。
たとえば、親会社から子会社へ5年間出向し、その後親会社に戻って退職した場合、退職金のうちその5年間の出向期間に対応する部分は、子会社が負担するのが原則です。
ただし、退職給与は月額給与や賞与と違い、実際の退職時期や退職事由により金額が変動することがあります。
そのため、必ず常に出向先が負担しなければならないわけではなく、相当な理由があれば出向先が負担しないことも認められます。
出向先が退職給与負担金を負担しなくてもよい場合
出向先法人が、出向期間に対応する退職給与負担金を負担しない場合でも、相当な理由があれば問題とされないことがあります。
たとえば、親会社が経営危機にある関係会社へ強制的に使用人を出向させ、その業務の監督等をさせたような場合です。
このようなケースでは、関係会社を支援するために親会社が人員を送り込んでいる側面が強く、退職給与まで関係会社に負担させることが必ずしも合理的でないことがあります。
また、出向期間が比較的短期であり、退職給与まで出向先法人に負担させる必要がない場合もあります。
たとえば、数か月から1年程度の短期出向であれば、退職金負担をあえて精算しないことに合理性がある場合もあるでしょう。
重要なのは、出向先が負担しない理由を説明できることです。
単に処理が面倒だから、グループ内だから、という理由では不十分です。
退職給与負担金の精算時期
出向者に対する退職給与負担金の精算時期には、主に3つの方法があります。
1つ目は、出向者が出向元法人へ復帰した時に精算する方法です。
2つ目は、出向者が出向元法人を退職した時に精算する方法です。
3つ目は、毎事業年度など定期的に精算する方法です。
いずれの方法でも、出向先法人では、その退職給与負担額が出向期間に対応する部分として合理的に計算された金額であれば、支出時の損金とされます。
一方、出向元法人では、収受時の益金になります。
ここが実務上重要です。
出向元法人が受け取った退職給与負担金は、将来退職金を支払うまで預り金として処理できるわけではありません。
返還義務がない限り、収受時の益金となります。
出向元への復帰時に精算する方法
出向者が出向先法人での勤務を終え、出向元法人へ復帰するタイミングで、出向期間に対応する退職給与負担金を精算する方法があります。
この方法では、出向先法人は復帰時に負担金を支出し、支出時の損金とします。
出向元法人は、その負担金を収受時の益金とします。
この時点では、出向者はまだ退職していないため、出向元法人では退職金の支給は発生していません。
したがって、出向元法人では益金が先行して計上され、法人税負担が一時的に増える可能性があります。
将来、出向者が退職して退職金を支給したときには、その退職金が損金になります。
長い目で見れば対応しますが、出向元法人の資金繰りや納税に影響する点に注意しましょう。
出向元法人の退職時に精算する方法
出向者が出向元法人を退職するタイミングで、出向期間に対応する退職給与負担金を出向先法人から出向元法人へ精算する方法もあります。
この方法では、出向元法人が退職金を支給する事業年度に、出向先法人から退職給与負担金を受け取ります。
出向元法人では、退職金の損金と退職給与負担金の益金が同じ事業年度に計上されるため、税務上のタイミングがそろいやすいです。
出向元法人で益金の先行計上による納税を避けたい場合には、この方法が実務上使いやすいでしょう。
また、出向者が出向元法人に復帰しないまま出向元法人を退職し、引き続き出向先法人で勤務する、いわゆる転籍のケースでも、この取扱いが関係します。
出向先法人においては、まだその人が退職していなくても、出向元法人の退職時に出向期間対応分を退職給与負担金として支出した場合には、支出時の損金とされます。
毎事業年度など定期的に精算する方法
退職給与負担金を毎事業年度など定期的に精算する方法もあります。
この方法では、あらかじめ定めた負担区分に基づき、出向期間に対応する退職給与の額として合理的に計算された金額を、定期的に出向先法人が出向元法人へ支払います。
この場合、出向先法人では支出時の損金とされます。
出向元法人では収受時の益金になります。
定期精算のポイントは2つです。
1つ目は、計算方法が合理的であることです。
出向期間に対応する退職給与相当額として、合理的に算定されている必要があります。
2つ目は、定期的に支出していることです。
毎月、毎事業年度など、継続的・定期的な支出である必要があります。
任意の時期に思いつきで負担するような方法は認められません。
また、出向元法人から見て複数の出向先がある場合、出向先ごとにバラバラの計算方法を使うことは、一般に合理的とはいえません。
出向元法人側では収受時に益金
退職給与負担金で忘れやすいのが、出向元法人側の処理です。
出向先法人では支出時の損金となる一方、出向元法人では収受時の益金になります。
「将来、退職金を払うために預かっただけだから預り金でよいのでは」と考えるかもしれません。しかし、出向先法人へ返還するものではない場合、預り金とはいえません。
もし返還可能性があるなら、そもそも出向先法人側で債務が確定しておらず、損金にできないことになります。
したがって、出向元法人が退職給与負担金を受け取った場合には、基本的に収受時の益金として処理します。
復帰時精算や定期精算では、退職金の支給より前に益金が計上されるため、出向元法人で納税が先行する可能性があります。
この点を避けたい場合は、退職時精算を検討することになります。
出向契約で退職金負担も決めておく
給与負担金だけでなく、退職給与負担金についても、出向契約書であらかじめ定めておくことが重要です。
最低限、次の事項を定めておきましょう。
退職給与負担金を出向先が負担するかどうか
負担する場合の計算方法
出向期間に対応する金額の算定方法
精算時期
復帰時精算か、退職時精算か、定期精算か
出向者が転籍した場合の取扱い
出向期間が延長された場合の取扱い
出向先が負担しない場合の理由
このような定めがないと、退職時になって出向元・出向先間で精算方法をめぐるトラブルになることがあります。
また、税務調査でも、退職給与負担金の合理性を説明しにくくなります。
税務調査で確認されやすいポイント
使用人を役員として出向させた場合、税務調査では次のような点が確認されます。
出向契約書の有無
出向元との雇用関係が継続しているか
出向先での役職
出向先で役員か使用人か
給与の支給方法
直接支給か間接支給か
出向先が給与負担金を負担しているか
給与負担金の額が出向元支給額と一致しているか
差額がある場合の理由
出向先法人で役員報酬決議をしているか
出向契約で期間と負担額をあらかじめ定めているか
賞与相当分について事前確定届出給与の届出をしているか
出向元の給与改定に伴う負担金変更が適正か
事後的な臨時賞与を出向先に請求していないか
退職給与負担金の負担区分
退職給与負担金の精算時期
出向元法人で収受時に益金計上しているか
出向者が役員になっている場合は、役員給与のルールに乗せているかどうかが特に重要です。
実務上のチェックポイント
使用人を役員として出向させる場合は、次の点を確認しましょう。
出向か転籍かを明確にしているか
出向元との雇用関係が継続しているか
出向先での役職を確認しているか
出向先で役員になる場合、株主総会等で報酬決議をしているか
出向契約書で出向期間と給与負担金額を定めているか
給与負担金の支払方法を決めているか
毎月同額で支払う場合、定期同額給与として整理できるか
賞与相当分がある場合、出向先法人で事前確定届出給与の届出が必要か確認しているか
給与負担金と経営指導料等を区分しているか
出向元が差額を負担する場合、較差補填金として合理性があるか
出向先が過大に負担していないか
退職給与負担金の負担方法を決めているか
復帰時・退職時・定期精算のどの方法にするか決めているか
出向元法人で退職給与負担金の益金計上時期を確認しているか
このチェックを行なうことで、出向者給与に関する税務リスクを大幅に下げることができます。
よくある誤解
使用人を役員として出向させる場合の税務について、実務上よくある誤解を整理します。
出向者は出向元の使用人だから、出向先では役員給与のルールは関係ない
出向者が出向先で役員になっている場合、出向先が負担する給与負担金は、出向先における役員給与として扱われます。
出向元が給与を払っているから、出向先で株主総会決議は不要
出向先が支払う給与負担金は、実質的に出向先役員の職務執行の対価です。
出向先法人での役員報酬決議が重要になります。
賞与分も給与負担金だから届出不要
出向先で役員となっている場合、毎月同額でない賞与相当分は、出向先法人で事前確定届出給与の届出が必要になることがあります。
退職給与負担金は出向元で預り金にできる
返還義務がない退職給与負担金は、出向元法人で収受時の益金となります。
まとめ
グループ会社間で使用人を役員として出向させる場合、給与負担金と退職給与負担金の税務処理には注意が必要です。
出向とは、出向元法人との雇用関係を維持したまま、出向先法人で労務を提供することをいいます。税務上、出向者に支給する給与は、労務提供を受ける出向先法人が負担するのが原則です。
出向元法人が出向者に給与を支払い、出向先法人が出向元法人へ給与負担金を支払う間接支給の場合、その給与負担金は出向先法人における出向者への給与として取り扱われます。
出向先法人が合理的理由なく給与負担金を負担しない場合には、出向元法人から出向先法人への寄附金とされる可能性があります。
一方、出向元法人の給与水準維持、出向先法人の経営不振、海外出向に伴う留守宅手当など、合理的な理由がある差額負担については、較差補填金として出向元法人で損金算入できる場合があります。
出向者が出向先法人で役員になっている場合、出向先法人が支払う給与負担金は、出向先法人における役員給与として取り扱われます。
そのため、出向先法人の株主総会等で給与負担金の額を役員給与として決議し、出向契約書等で出向期間と給与負担金額をあらかじめ定めておくことが重要です。
毎月同額で支払う給与負担金は定期同額給与、賞与相当分やまとめ払いは事前確定届出給与として整理する必要がある場合があります。特に、事前確定届出給与の届出は出向元法人ではなく、出向先法人が行なう点に注意しましょう。
また、退職給与についても、出向者が将来出向元法人を退職する際に支給される退職金のうち、出向期間に対応する部分は、基本的には出向先法人が負担すべきものと考えられます。
退職給与負担金の精算時期には、出向元への復帰時、出向元法人の退職時、毎事業年度などの定期精算があります。
いずれの場合も、出向先法人では合理的に計算された出向期間対応分であれば支出時の損金となり、出向元法人では収受時の益金になります。
出向元法人では、退職金支給前に退職給与負担金を受け取ると益金が先行計上されるため、納税タイミングにも注意が必要です。
使用人を役員として出向させる場合は、出向契約書、役員報酬決議、給与負担金の支払方法、事前確定届出給与の届出、退職給与負担金の精算方法を事前に整理しておきましょう。
グループ会社間の出向者給与や役員出向の税務処理で迷う場合は、税理士へ相談することをおすすめします。




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