大法人の電子申告義務化とは?書面提出した場合の無申告加算税・青色申告取消しリスクを税理士が解説
- 安田 亮
- 6月1日
- 読了時間: 15分
こんにちは!代表の安田です。
法人税や消費税の申告は、現在、多くの法人がe-Taxで行なっています。
その中でも、資本金の額等が1億円を超える大法人などについては、単に「電子申告が便利」という話ではなく、法律上、電子申告が義務付けられています。
大法人が、電子申告義務化の対象となる申告書や添付書類を誤って書面で提出した場合、その書面申告は法令上有効な申告として扱われないことがあります。
その結果、無申告加算税や延滞税、納税証明書が交付されない、2期連続で期限後申告となる場合の青色申告承認取消しなど、思った以上に大きなリスクが生じます。
一方で、申告書や添付書類の一部を書面提出してしまった場合でも、「申告書の主要な部分」が申告期限内にe-Taxで提出されていれば、無申告加算税は課されない取扱いとされています。
もっとも、この「主要な部分」の具体的範囲は明示されていないため、実務上はすべての対象書類をe-Taxで提出することが大前提です。
本日は、大法人の電子申告義務化の対象法人・対象税目・対象書類、書面提出した場合のリスク、届出書未提出の場合、電子申告が困難な場合の手続き、実務上の対応ポイントについて解説します。
大法人の電子申告義務化とは
大法人の電子申告義務化とは、一定の法人が法人税や消費税などの申告を、紙ではなくe-Taxにより提出しなければならない制度です。
国税庁は、平成30年度税制改正により「電子情報処理組織による申告の特例」が創設され、一定の法人が行なう法人税等の申告について、e-Taxにより提出しなければならないこととされたと案内しています。
対象は、法人税・地方法人税、消費税・地方消費税などで、令和2年4月1日以後に開始する事業年度または課税期間から適用されています。つまり、対象法人に該当する場合、紙で申告するか電子で申告するかを任意に選べるわけではありません。法令上、電子申告で提出することが求められます。
電子申告義務化の対象法人
国税の電子申告義務化の対象となる法人には、主に次のような法人があります。
・事業年度開始時に資本金の額または出資金の額が1億円を超える法人
・相互会社
・投資法人
・特定目的会社
・グループ通算制度の適用法人電子申告義務化の主な対象法人は、事業年度開始時に資本金の額が1億円超の法人等と整理されています。
ここで注意したいのは、判定時点です。
資本金が1億円を超えるかどうかは、原則として事業年度開始時点で判定します。
事業年度の途中で増資を行ない、資本金が1億円を超えた場合には、その後の届出書提出期限や適用関係を確認する必要があります。
対象税目は法人税・消費税など
大法人の電子申告義務化の対象となる国税は、法人税および地方法人税、消費税および地方消費税です。
また、地方税についても、法人住民税や法人事業税等について電子申告が義務化されています。国税庁の案内でも、地方税の法人住民税および法人事業税について電子申告が義務化される旨が示されており、地方税ポータルシステムeLTAXでも、大法人の電子申告義務化に関する特設ページが設けられています。国税はe-Tax、地方税はeLTAXを利用します。
どちらか一方だけ対応すればよいわけではありません。
法人税・消費税のe-Tax対応と、法人住民税・法人事業税のeLTAX対応を、それぞれ確認しておく必要があります。
対象書類は申告書だけではない
電子申告義務化で特に重要なのが、対象書類の範囲です。
「申告書本体だけe-Taxで送信すればよい」と考えていると、実務上のミスにつながります。
大法人は、申告書だけでなく、申告書に添付すべきこととされている書類も含め、すべてをe-Taxで提出する必要があると説明されています。法人税の場合、財務諸表、勘定科目内訳明細書、租税特別措置法上のインセンティブ措置の適用に必要な添付書類なども含まれるとされています。
国税庁のe-Taxページでも、大法人の電子申告義務化について、申告データを電子提出するための情報やよくある質問を掲載しています。
したがって、対象法人は次のような書類も含めて電子提出する体制を整える必要があります。
・法人税申告書別表
・地方法人税申告書
・消費税申告書
・財務諸表データ
・勘定科目内訳明細書
・法人事業概況説明書または会社事業概況書
・租税特別措置法関係の明細書
・添付書類
・申告書に添付すべきその他の書類申告書本体だけでなく、添付書類まで含めた「ALL e-Tax」の体制を作ることが重要です。
書面申告は法令上無効になる可能性がある
電子申告義務化の対象法人が、e-Taxではなく書面で申告書を提出した場合、その書面申告はどうなるのでしょうか。
電子申告義務化の対象法人が「e-Taxによる申告が困難である場合の特例の申請書」の提出なしに書面申告した場合、税務署はその書面申告を法令上無効なものとして扱い、速やかに行政指導により電子申告を促すとされています。つまり、税務署の窓口で紙の申告書を受け付けてもらったように見えても、法令上は有効な申告と扱われない可能性があります。
そのまま申告期限を過ぎると、期限内申告をしていない状態になり、後日e-Taxで送信した時点で期限後申告となることがあります。
無申告加算税・延滞税のリスク
書面申告が無効と扱われ、申告期限後に改めてe-Taxで申告した場合には、無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。
義務対象法人が書面申告をした場合、行政指導により電子申告が促され、その際、申告期限後に電子申告が行なわれた場合には無申告加算税および延滞税が課される場合があることがされています。
無申告加算税とは、申告期限までに申告しなかった場合に、本税とは別に課されるペナルティです。「紙で期限内に出したから大丈夫」と思っていても、電子申告義務化の対象法人では、紙での提出が有効な申告にならない可能性があります。
この点は、経理担当者だけでなく、経営者も押さえておきたいところです。
一部を書面提出した場合はどうなるか
実務では、申告書本体はe-Taxで送信したものの、添付書類の一部を誤って紙で提出してしまうことがあります。
この場合も、本来は、申告書および添付書類のすべてをe-Taxで提出する必要があります。
申告書や添付書類の一部を書面提出した場合、その書面提出した書類も電子申告するよう促されるとされています。
一方で、申告書の「主要な部分」を期限内に電子申告していれば、無申告加算税は課されないとされています。
また、e-Taxで送信後に一部書類の提出漏れに気付き、誤って書面提出してしまった場合でも、すでにe-Taxで「申告書の主要な部分」が提出されていれば、有効な申告として扱われ、無申告加算税は課されないとされています。
ただし、これはあくまで無申告加算税との関係です。
一部書類を紙で提出してよいという意味ではありません。
「申告書の主要な部分」は明示されていない
一部を書面提出しても、「申告書の主要な部分」が期限内にe-Taxで提出されていれば無申告加算税は課されない。
このように聞くと、「では主要な部分とは具体的にどこまでなのか」が気になります。
しかし、「申告書の主要な部分」の具体的範囲について、当局は「一部申告書等のみのe-Tax提出を助長するおそれがあるため、現在でも示すことができない」としています。
つまり、実務上は「主要な部分だけ電子申告すればよい」と考えるべきではありません。
主要な部分の範囲が明示されていない以上、申告書や添付書類の一部を紙で提出することはリスクがあります。
申告書の主要な部分をe-Taxで提出し、一部書類を紙で提出した場合は無申告加算税が課されない一方、一部書類のみをe-Taxで提出し、申告書の主要な部分を紙で提出した場合は無申告加算税が課されるイメージが示されています。
添付書類を出し忘れた場合は追加送信で対応する
申告書をe-Taxで送信した後に、添付書類の提出漏れに気付くことがあります。
この場合、誤って紙で提出するのではなく、e-Taxの追加送信機能などを使って電子的に提出することが望ましいです。
申告書等のすべてをe-Taxで提出することが義務である以上、一部書類の提出漏れがあっても、意図的な書面での提出は避けるべきであり、e-Taxの追加送信機能を使うなどして対応したいとされています。
実務上は、申告前に添付書類チェックリストを作成し、提出漏れを防ぐことが第一です。
万一、送信後に漏れが見つかった場合でも、電子で追加提出できる体制を整えておきましょう。
届出書を提出していなくても電子申告は有効
電子申告義務化の対象法人は、「e-Taxによる申告の特例に係る届出書」を一定期限までに提出する必要があります。では、この届出書を出し忘れたままe-Taxで申告した場合、その申告は無効になるのでしょうか。
届出書は法人自身が義務対象法人であることを認識している旨を税務署が確認するための書類であり、提出の有無は電子申告の有効性には影響しないとされています。そのため、届出書を提出していなくても、電子申告をしていれば無申告扱いにはならないとされています。
ただし、だからといって届出書を提出しなくてよいわけではありません。
税務署は納税者情報に基づき届出書の提出が必要な法人を把握でき、期限内に提出していない場合は行政指導により届出書の提出を促すとされています。
届出書は忘れずに提出しておきましょう。
届出書の提出期限
届出書の提出期限について次のように整理されています。
・令和2年4月1日以後に増資により義務対象法人となる場合 → 資本金の額が1億円超となった日から1か月以内
・令和2年4月1日以後に新たに設立された法人で、設立後最初の事業年度から義務対象法人となる場合 → 設立の日から2か月以内現在でも、増資や新設法人により新たに電子申告義務化の対象となる場合には、届出書の提出要否と期限を確認する必要があります。
電子申告が困難な場合は申請が必要
災害、通信障害、システム障害などにより、どうしてもe-Taxによる申告が困難な場合があります。このような場合には、一定の手続きを行なうことで、書面申告が認められることがあります。
電子申告が困難であることについて問い合わせがあった場合、税務署は法人に事情を聴取し、電気通信回線の故障などで電子申告が困難と認められる場合には、「e-Taxによる申告が困難である場合の特例の申請書」の提出を促すとされています。
一方、電子申告が困難である事情が相当ではないと認められる場合には、申請が却下されます。つまり、単に「電子申告の準備が面倒」「社内で対応できる人がいない」といった理由だけでは、書面申告が認められない可能性があります。
申請は原則みなし承認
電子申告が困難な場合の書面申告に係る申請は、原則としてみなし承認の仕組みです。
この申請について、税務署から特段通知等はされず、申請が認められない場合には、理由が付されたうえで申請却下の通知がなされます。
そのため、申請した後に税務署から何も連絡がない場合、原則として承認されたものとして扱われます。ただし、申請内容に不備がある場合や、電子申告が困難な事情が認められない場合には却下される可能性があります。
申請を行なう場合は、事情を具体的に整理し、期限に余裕をもって対応することが大切です。
2期以上の書面申告は継続確認がある
電子申告が困難な事情が複数年続く場合もあります。
電子申告が困難であるとして2事業年度以上にわたる書面申告の申請をしている場合、2期目の申告期限の1か月前までに税務署から法人へ連絡があり、その困難な事情の継続状況が確認されるとされています。
困難な事情が継続していないと認められれば、「e-Taxによる申告が困難である場合の特例の取りやめの届出書」の提出が促されます。
法人が応じない場合には、税務署が理由を付して取消通知書を発送し、書面申告の承認が取り消されることがあります。つまり、一度書面申告が認められたとしても、将来にわたり無条件に書面申告を続けられるわけではありません。
電子申告に応じない場合は実地調査もあり得る
電子申告義務化の対象法人が書面申告をした場合、まずは行政指導により電子申告が促されます。では、それでも電子申告に応じない場合はどうなるのでしょうか。
義務対象法人が書面申告をし、行政指導により電子申告を促されても応じない場合には、必要に応じて実地調査が行なわれるとされています。
電子申告義務化は、単なる努力義務ではありません。
対象法人が対応しない場合には、税務当局の対応も段階的に厳しくなる可能性があります。
2期連続で期限後申告になると青色申告取消しリスク
電子申告義務化に対応せず、書面申告が無効と扱われた結果、申告期限後にe-Taxで申告することになると、期限後申告となる可能性があります。
行政指導により電子申告を促す際、2期連続で期限後申告となる場合には、青色申告の承認が取消しになることが説明されるとされています。
青色申告の承認が取り消されると、欠損金の繰越控除、各種特別措置の適用、青色申告に基づく税務上のメリットに大きな影響が出ます。
電子申告の不備が、単なる提出方法の問題にとどまらず、青色申告そのものに影響する可能性がある点は重要です。
書面申告では納税証明書が受けられないことがある
大法人が書面申告をした場合、無申告加算税や延滞税だけでなく、納税証明書の問題も生じます。義務対象法人が書面申告をすると、法令上無効なものとして扱われるため、それに係る納税証明書の交付が受けられないとされています。
納税証明書は、金融機関からの借入、入札参加、補助金申請、許認可、取引先からの信用確認などで必要になることがあります。
申告方法の不備により納税証明書が取得できないと、税務以外の事業活動にも支障が出る可能性があります。
中間申告も電子申告が必要
電子申告義務化は、確定申告だけの話ではありません。
仮決算による中間申告も書面申告では無効になると説明されています。そのまま中間申告期限までに電子申告をしないと、みなし申告、つまり前期法人税額の半分を納付する予定申告がされたものとして税額が確定するとされています。
また、消費税の任意の中間申告についても、書面申告では無効となり、中間申告期限までに電子申告をしないと、「任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書」を提出したものとみなされ、任意の中間申告をやめることになるとされています。
つまり、確定申告だけでなく、中間申告、修正申告、還付申告など、対象となる申告手続き全体について電子対応が必要です。
実務上のチェックポイント
電子申告義務化の対象法人は、次の点を確認しておきましょう。
1. 自社が対象法人か確認する
事業年度開始時点の資本金の額等が1億円を超えるか、グループ通算制度の適用法人かなどを確認します。
2. 届出書を提出しているか確認する
届出書未提出でも電子申告自体は有効ですが、届出書は提出すべきものです。増資や新設法人の場合は提出期限に注意しましょう。
3. 申告書だけでなく添付書類も電子提出する
財務諸表、勘定科目内訳明細書、会社事業概況書、租税特別措置法関係書類なども含め、対象書類を洗い出します。
4. 書面提出をしない運用にする
一部書類の提出漏れに気付いた場合でも、紙で出すのではなく、e-Taxの追加送信機能などで対応します。
5. 送信前チェックリストを作成する
申告書別表、添付書類、電子署名、送信結果、受信通知を確認するチェックリストを作成します。
6. 電子申告が困難な場合は事前に相談する
通信障害や災害などで電子申告が難しい場合は、期限前に税務署へ相談し、必要に応じて特例申請を検討します。
7. 中間申告も電子対応する
仮決算による中間申告や消費税の任意の中間申告も、対象法人では書面提出すると無効になる可能性があります。
よくある誤解
申告書本体だけe-Taxで出せばよい
誤りです。大法人は、申告書だけでなく、申告書に添付すべき書類も含め、すべてをe-Taxで提出する必要があります。
紙で期限内提出していれば期限内申告になる
電子申告義務化の対象法人が、特例申請なしに書面申告した場合、その書面申告は法令上無効なものとして扱われることがあります。
届出書を出していないと電子申告も無効になる
届出書未提出でも、電子申告の有効性には影響せず、無申告扱いにはならないとされています。ただし、届出書は提出すべきです。
一部を紙で出しても主要部分がe-Taxなら問題ない
無申告加算税が課されない場合はありますが、書面提出した書類も電子申告するよう促されます。「主要な部分」の具体的範囲も明示されていないため、すべて電子提出するのが原則です。
電子申告が苦手なら紙で出してもよい
単に社内対応が不十分というだけでは、書面申告が認められるとは限りません。電子申告が困難な事情がある場合は、特例申請が必要です。
確定申告だけ電子化すればよい
仮決算による中間申告も書面申告では無効になる可能性があります。消費税の任意の中間申告にも注意が必要です。
まとめ
資本金の額等が1億円を超える大法人などは、法人税・地方法人税、消費税・地方消費税について、e-Taxによる電子申告が義務付けられています。
対象法人は、申告書本体だけでなく、財務諸表、勘定科目内訳明細書、会社事業概況書、租税特別措置法関係の添付書類など、申告書に添付すべき書類も含めて電子提出する必要があります。
電子申告義務化の対象法人が、特例申請なしに書面申告をした場合、その書面申告は法令上無効なものとして扱われ、申告期限後にe-Taxで送信すると無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。
また、2期連続で期限後申告となれば青色申告承認取消しのリスクがあり、書面申告に係る納税証明書が交付されないなど、税務以外の実務にも影響することがあります。
一部の添付書類を誤って書面提出してしまった場合でも、申告書の主要な部分が期限内にe-Taxで提出されていれば、無申告加算税は課されない取扱いがあります。ただし、「主要な部分」の具体的範囲は示されていないため、一部だけ電子申告すればよいという考え方は危険です。
電子申告義務化の対象法人は、申告前に対象書類を洗い出し、添付書類の電子データ形式、電子署名、送信結果、受信通知まで確認する体制を整えておきましょう。




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