おはようございます!代表の安田です。
企業のコーポレートガバナンスの強化が求められる中、「実質株主の情報開示」に関する議論が活発化しています。現行制度では、企業が株主に対して積極的な対話を行なう上で、実際に意思決定を行う「実質株主」を特定することが困難なケースが多く、その改善が求められています。本記事では、実質株主の概念、現在の課題、そして経済産業省による制度改革の提案について解説します。
実質株主とは?
株主名簿に記載されている「名義株主」とは異なり、実際に投資判断を行ない、議決権を行使する権限を持つ株主を「実質株主」と呼びます。典型的な例としては、信託銀行などが名義株主として株式を管理し、投資判断を行なう運用会社が実質株主となるケースが挙げられます。
しかし、名義株主と実質株主が異なる場合、企業側がどの株主と対話すべきか分からず、ガバナンスの観点からも問題が生じる可能性があります。
現行制度の課題
日本では、一定の株式保有割合を超えた場合にのみ、大量保有報告制度に基づいて保有情報を開示する必要があります。5%未満の株式保有者については、企業が実質株主を特定する制度は存在せず、欧州諸国と比較して透明性が低いと指摘されています。
このため、一部の企業は民間調査会社を活用し、実質株主の特定を試みていますが、高額な調査コストが発生するため、すべての企業が実施できるわけではありません。
経済産業省の提案
こうした問題を解決するため、経済産業省は「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会」の報告書において、実質株主の情報開示制度の導入を提案しています。この制度では、以下のような仕組みが検討されています。
企業が名義株主や実質株主に対して質問を行ない、その回答を義務付ける制度の導入
回答拒否や虚偽の回答が行われた場合、一定の基準を満たす違反には議決権停止などのペナルティを設ける
企業が株主との対話を強化できるよう、透明性の向上を図る
会社法改正の動き
2025年2月10日の法制審議会では、会社法の見直しに関する議論の中で、実質株主に関するルールの整備が検討課題として挙げられました。これにより、企業と株主の関係をより明確にし、企業側がガバナンスの向上を図るための仕組みが構築される可能性があります。
今後の展望
実質株主の開示制度が導入されれば、企業の株主対応戦略が大きく変わる可能性があります。特に、株主総会における意思決定の透明性向上、敵対的買収の防止、機関投資家との関係強化など、企業経営にとって重要な影響を与えるでしょう。
一方で、新たな制度の導入に伴い、企業にとっての負担や実効性の確保が課題となるため、今後の法改正の動向を注視する必要があります。
まとめ
実質株主の情報開示制度は、企業のガバナンス強化に向けた大きな一歩となる可能性があります。企業としては、今後の法改正の動向を注視しつつ、適切な株主対応の準備を進めることが求められます。

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