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日本郵便に100万円を返還さえる権限なんて無いと思う話

こんばんは、神戸市中央区のfreee専門会計事務所の若手公認会計士・税理士の安田です。


yahooニュースにこんな記事があり、昨日から憤っていました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b42d66c0991de0c9c14dc6f8e57b6ec65f219b4f


日本郵便が、契約している外注先の保険販売員が持続化給付金の支給を受けていたことを知り、「コロナの影響ではないので不正受給だ」として日本郵便が保険販売員に返還を求め、かなりの人数が応じているようです。


ネット掲示板で、持続化給付金の給付を受けた日本郵便の保険販売員を批判する書き込みがあり、それに屈した形の対応です。


突っ込みたい点はいくつかあります。


①コロナ影響でないことを証明することは不可能な点

コロナウイルスによる自粛要請の影響を受けていない国民など1人もいません。

売上の半減について、コロナの影響が1円も無いということは絶対に証明できません。


私も保険会社と代理店契約をしているので分かるのですが、保険業法においては対面販売が原則とされています。古い体質の日本郵便ですから対面販売がほぼ100%でしょう。


そしてコロナ関連の自粛要請により、対面販売は2ヶ月ほど出来なかったと思います。

その影響もかなりあるはずです。


今までかんぽ生命は契約書を偽造するなどの犯罪行為をしてきたという事実はあれど、真面目にやっている販売員も中にはいるはずです。


今回の持続化給付金は、政府が自粛要請を強いたことについての補償の意味合いが強く、「事業の継続を支え、再起の糧としていただくために、事業全般に広く使える給付金を給付します。」と言っており、コロナウイルスの影響”等”により、売上が半減した方(実際は色々なパターンがあります)を対象としています。


ここで、コロナウイルスの影響”等”と言っているのは、売上の半減がコロナウイルスの影響かそうでないかを判断することは不可能なので”等”という文字を入れており、実務上は数値基準で全て判断していると私は理解しています。


日本郵便がコロナの影響じゃないと言い切る能力はありませんし、こんなことをやりだしたら他の業種でも同様の事象が起こりえます。


日本社会は少数のクレーマーにビビり過ぎです。



②外注先に100万円の返還を求める権限はない点

外注先の個人事業主に持続化給付金100万円を返還させる権利は日本郵便にはありませんし、持続化給付金を受け取ったかどうかを調べる権限自体も無いと思います。契約書に書いていたら別ですが、そんなの書いているわけがありません。

個人事業主は回答する義務など無いでしょう。売上が半減しているかどうかって物凄くセンシティブな情報ですし。


そもそも日本郵便の保険の販売員は外注先なのか?という点がかなり疑問です。

個人事業主として事業所得の確定申告をしているわけですが、その場合は日本郵便からは独立して事業をやっているということになります。日本郵便が100万円の返還を求め、大部分の販売員がそれに応じている(応じざるを得ない)ということは、それって雇用なんじゃないの?と思うわけです。


雇用契約か業務委託契約かというのは税務調査でもよく論点になる点です。

次にあげる4つの項目を総合的に判断して決めることとされています。


<消費税法基本通達1-1-1より>

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/01/01.htm


(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。

(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。

(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。

(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。


100万円という大金の返還を要求し、それに応じざるを得ないって、(2)の「指揮監督を受けるかどうか」の点で完全にアウトだと思います。


普段は都合よく(③で記述します)外注業者扱いにして、世間から批判を受けるとまるで従業員のように指揮命令するというダブルスタンダード。これで良いんでしょうか?



③日本郵便が保険販売員を外注業者扱いにして、消費税と社会保険料を節約している点

100万円の返還を求めるほどに指揮命令しているんだったら雇用扱いにしろよと思うわけですが、雇用ではなく外注扱いにするメリットは大きいのです。


(1)消費税の節約になる

給料だと不課税取引、外注だと課税取引になり、外注費については仕入税額控除が適用できるので、日本郵便が国に納める消費税額は安くなります。保険販売員の全員を雇用→外注にするだけで少なくとも数億円は変わるでしょう。


(2)社会保険料の節約になる

外注扱いの場合、健康保険や厚生年金に会社として加入させる必要は無いので、社会保険料を相当節約できます。これも影響額は少なくとも数億円はいくでしょうね。



都合良い時だけ指揮命令して、普段は社会保険にも加入させてやっていないわけです。

世間体だけで100万円を奪い取るなら雇用してきちんと身分保証してやれよと思います。



それと、叩きやすいところを叩いてリテラシーの低い視聴者や読者からの支持を得ようとするメディアもいい加減にしてほしいですね。

完全に私見ですが、日本郵便の保険の販売員なんてそんなに稼いでないですよ。叩くにはあまりに弱すぎると思うし。電通社員の方が全然稼いでますって。


けっこう頭にきたので久々に長い記事になりました。

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