おはようございます!代表の安田です。
令和元年に改正された会社法により、上場会社が取締役などの報酬として株式を発行する際に、金銭の払い込みが不要となり、株式の無償交付が認められています。この改正によって、上場企業では取締役への報酬として、金銭を用意せずに株式を直接交付することが可能となり、報酬制度に新たな選択肢が増えました。
以前は、株式を直接交付することができなかったため、取締役に金銭債権を付与し、その債権を現物出資する形で実務が行なわれていました。しかし、今回の改正により、よりシンプルに株式を報酬として提供できるようになりました。
株式無償交付の具体的な形態
株式無償交付の具体例として、譲渡制限付株式報酬制度が挙げられます。これは、事前に譲渡制限付株式を交付し、一定の業績目標を達成した後にその制限を解除する形態や、一定の勤務期間を経てから株式を交付する形態です。例えば、ギックス(東証グロース市場)は、2024年6月期の有価証券報告書で、この譲渡制限付株式報酬制度を導入したと発表しました。
今後の改正の動向
現行の会社法では、株式無償交付の対象は上場会社の取締役または執行役に限定されていますが、これを従業員や子会社の役職員にも拡大するための改正が検討されています。内閣府の「規制改革実施計画」(令和6年6月)では、令和6年度中に法制審議会での議論を行なう予定とされています。また、経済産業省の研究会でも、この改正について検討が進められており、無償交付による1株あたりの価値の下落など、既存株主の利益に配慮する必要性が指摘されています。
経営への影響
株式無償交付は、特に経営者にとって、報酬制度の多様化を促進し、株主と経営陣の利害を一致させる手段として注目されています。しかし、今後の会社法改正によっては、従業員に対してもこの制度が適用される可能性があり、その影響は広がっていくでしょう。企業としては、報酬制度の変更に対する株主や従業員の反応を見ながら、適切な対応が求められます。
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