非居住者が日本の不動産を賃貸・譲渡した場合の確定申告|源泉徴収済みでも申告が必要なケースに注意
- 安田 亮
- 6月28日
- 読了時間: 10分
おはようございます!代表の安田です。
近年、日本国内の不動産を所有する外国人や海外在住者、外国法人が増えています。投資用マンションを日本で所有して賃貸している方、以前住んでいた日本の自宅を海外転勤後も貸している方、日本国内の不動産を売却する外国法人など、実務でも相談が増えている分野です。
ここで注意したいのが、非居住者や外国法人が日本国内の不動産を賃貸・譲渡した場合、日本で確定申告が必要になることがあるという点です。
海外に住んでいるから日本で申告しなくてよい
賃料は海外口座で受け取っているから日本の税金は関係ない
買主や借主が源泉徴収しているから確定申告は不要
このように考えてしまうケースがありますが、必ずしもそうではありません。
日本国内の不動産から生じる所得は、非居住者等にとっても国内源泉所得として日本で課税対象になります。そのため、一定の場合には、日本で確定申告を行い、源泉徴収された税額との精算や納税を行う必要があります。
本日は、非居住者等が日本国内の不動産を賃貸・譲渡した場合の確定申告について、税理士の視点から整理します。
非居住者等とは?
まず、今回のテーマでいう非居住者等とは、主に次のような方・法人を指します。
日本国内に住所等を有しない非居住者
外国法人
海外に居住している個人で、日本国内の不動産を所有している方
日本国内に不動産を保有する外国法人
所得税では、個人について「居住者」と「非居住者」で課税関係が異なります。居住者は原則として全世界所得が課税対象になりますが、非居住者は日本国内で生じた一定の所得、つまり国内源泉所得について日本で課税されます。
外国法人についても、日本国内に源泉のある所得について、日本で法人税等の課税関係が生じることがあります。
日本国内の不動産賃貸による所得は国内源泉所得
非居住者等が日本国内の不動産を所有し、その不動産を賃貸して賃料を得た場合、その所得は日本国内の不動産から生じる所得です。
したがって、日本の税法上、国内源泉所得として日本で課税対象になります。
たとえば、海外在住の個人が、日本国内のマンションを貸して賃料を受け取っている場合、その賃貸収入に係る所得は日本で申告が必要となる可能性があります。
これは、賃料の受取口座が日本国内か海外かによって変わるものではありません。海外口座で賃料を受け取っていても、その所得の発生源泉が日本国内の不動産であれば、日本で課税関係が生じます。
日本国内の不動産譲渡による所得も国内源泉所得
非居住者等が日本国内の不動産を売却した場合、その譲渡による所得も国内源泉所得として日本で課税対象になります。
たとえば、海外に住んでいる個人が、日本に所有していた土地や建物を売却した場合、日本で譲渡所得の申告が必要となることがあります。
また、外国法人が日本国内の不動産を売却した場合にも、日本で法人税等の申告が必要となる場合があります。
不動産の所在地が日本国内である以上、売主が海外在住であっても、日本の課税関係を確認する必要があります。
源泉徴収されていても確定申告が必要な場合がある
非居住者等に対して日本国内不動産の賃料や譲渡対価を支払う場合、支払者側に源泉徴収義務が生じることがあります。このため、借主や買主が所得税を源泉徴収しているケースがあります。
しかし、ここで重要なのは、源泉徴収されていれば確定申告が不要になるとは限らないという点です。非居住者等が日本国内の不動産を賃貸・譲渡した場合、源泉徴収されている場合であっても、確定申告により所得金額や税額を計算し、源泉徴収税額との差額を精算する必要があるケースがあります。
たとえば、賃貸収入から必要経費を差し引いた不動産所得を計算し、源泉徴収税額との差額を申告で精算する場合があります。源泉徴収税額が実際の税額より多ければ還付となることもありますし、不足していれば追加納税となることもあります。
国外で収受していても申告対象になり得る
非居住者等が日本国内不動産の賃料や譲渡代金を、国外の銀行口座で受け取っているケースもあります。
しかし、国内源泉所得に該当するかどうかは、基本的に「どこで受け取ったか」ではなく、何から生じた所得かで判断します。日本国内の不動産の賃貸・譲渡による所得であれば、国外で収受していても、日本で課税対象となる可能性があります。
そのため、海外口座で受け取っているから日本で申告しなくてよい、という判断は危険です。
不動産関連法人の株式譲渡にも注意
今回の注意喚起で重要なのは、不動産そのものの賃貸・譲渡だけではありません。
非居住者等が、日本国内の不動産等を所有する一定の法人の株式を譲渡した場合にも、日本で課税対象となることがあります。
具体的には、資産の価額の総額のうち一定割合以上が、直接または間接に日本国内の不動産により構成される法人、いわゆる不動産関連法人の株式を譲渡する場合です。
このような不動産関連法人の株式譲渡による所得も、国内源泉所得に該当し、日本で確定申告が必要になる可能性があります。
つまり、単に不動産を直接売却した場合だけでなく、不動産保有会社の株式を譲渡する場合にも、日本の税務を確認しなければなりません。
不動産関連法人とは?
不動産関連法人とは、簡単にいえば、その法人の資産価値の大部分が日本国内の不動産等で構成されている法人です。
資産の価額の総額のうち50%以上が、直接または間接に日本国内の不動産により構成される法人の株式譲渡についても、日本で課税対象となります。
たとえば、外国人投資家が、日本国内に不動産を保有する会社の株式を売却する場合、その会社が不動産関連法人に該当するかどうかの確認が必要です。
不動産を直接売っていないから日本の申告は不要とは限りません。
確定申告には納税管理人の届出が必要
非居住者等が日本で確定申告を行なう場合には、実務上、納税管理人を定める必要があります。納税管理人とは、非居住者等に代わって、確定申告書の提出、税金の納付、税務署からの書類の受領などを行なう人です。
海外に居住している方や外国法人が日本の税務手続を直接行うのは難しいため、日本国内に納税管理人を置き、所轄税務署長に納税管理人の届出書を提出することになります。
納税管理人は、親族、知人、税理士などがなることがあります。ただし、税務申告の内容が複雑な場合には、非居住者課税や不動産所得・譲渡所得に詳しい税理士へ相談することをおすすめします。
外国法人は別途届出が必要な場合も
外国法人が日本国内の不動産を賃貸・譲渡する場合には、納税管理人の届出に加えて、外国普通法人となった旨の届出が必要となる場合があります。
外国法人については、個人の非居住者とは異なる届出や申告期限が関係します。不動産を取得・賃貸・譲渡する段階で、日本でどのような届出が必要になるかを確認しておくことが重要です。
特に、外国法人が日本に恒久的施設を有するかどうか、不動産賃貸の規模や管理形態、所得の種類によって、申告実務が変わることがあります。
申告期限と納期限
非居住者や外国法人が確定申告を行なう場合、申告期限にも注意が必要です。
非居住者である個人の場合、確定申告書の提出期限は、原則として翌年3月15日までです。納期限も原則として同日です。
一方、外国法人の場合は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内に確定申告書を提出します。納期限も原則として確定申告書の提出期限と同日です。
個人と法人で申告期限が異なるため、特に外国法人が日本国内不動産を所有している場合には、決算期と申告期限の管理が必要です。
租税条約による取扱いも確認
非居住者等に対する日本の課税関係は、日本の国内法だけで決まるわけではありません。
日本と非居住者等の居住地国との間に租税条約がある場合、所得税等が免除または軽減されるなど、取扱いが異なることがあります。
たとえば、不動産所得や不動産譲渡所得については、多くの租税条約で不動産所在地国に課税権が認められることが多いですが、具体的な取扱いは条約ごとに確認する必要があります。
また、租税条約の適用を受けるためには、所定の届出書や添付書類が必要になる場合があります。そのため、非居住者等の不動産取引では、国内法と租税条約の両方を確認することが大切です。
よくある誤解
非居住者等の不動産賃貸・譲渡では、次のような誤解がよくあります。
海外に住んでいれば日本で申告しなくてよい
日本国内の不動産から生じる所得は、非居住者にとっても国内源泉所得として日本で課税対象になることがあります。
海外口座で受け取れば日本の税金は関係ない
賃料や譲渡代金を国外で収受していても、日本国内不動産から生じる所得であれば、日本で申告が必要になる場合があります。
源泉徴収されていれば確定申告は不要
源泉徴収されている場合でも、確定申告により税額を精算する必要があるケースがあります。
不動産を直接売っていなければ関係ない
日本国内不動産を多く保有する不動産関連法人の株式譲渡も、国内源泉所得として日本で課税対象になる場合があります。
実務で確認したいチェックポイント
非居住者等が日本国内不動産を賃貸・譲渡する場合には、次の点を確認しましょう。
所有者が居住者か非居住者か
所有者が個人か外国法人か
不動産の所在地が日本国内か
賃料や譲渡代金の支払者は誰か
支払者が源泉徴収を行っているか
所得を国外で受け取っているか
必要経費を把握できる資料があるか
確定申告が必要か
納税管理人を選任しているか
納税管理人の届出書を提出しているか
外国法人の場合、必要な届出を提出しているか
租税条約の適用有無を確認しているか
不動産関連法人の株式譲渡に該当しないか
不動産取引は金額が大きくなりやすいため、申告漏れがあると税額や加算税・延滞税の影響も大きくなります。
不動産会社・管理会社が注意したいこと
非居住者等の不動産賃貸では、不動産会社や管理会社が関与するケースも多くあります。
たとえば、海外在住のオーナーに代わって賃料を管理したり、売却手続をサポートしたりする場合です。
このような場合、不動産会社や管理会社は、オーナーが非居住者であるかどうかを確認し、源泉徴収や確定申告の必要性について注意喚起することが望まれます。
もちろん、具体的な税務判断は税理士等の専門家に確認すべきですが、非居住者オーナーであることを見落とすと、支払者側の源泉徴収漏れや、オーナー側の申告漏れにつながる可能性があります。
まとめ
非居住者や外国法人が日本国内の不動産を賃貸・譲渡した場合、その所得は国内源泉所得として日本で課税対象となり、確定申告が必要になることがあります。
賃料や譲渡代金を外国で受け取っている場合や、借主・買主が所得税を源泉徴収している場合であっても、確定申告が必要となるケースがあります。源泉徴収された所得税について還付や追加納税がある場合には、確定申告で精算することになります。
また、日本国内の不動産を直接譲渡する場合だけでなく、資産価額の50%以上が直接または間接に日本国内の不動産で構成される不動産関連法人の株式譲渡についても、国内源泉所得として日本で課税対象となる可能性があります。
非居住者等が日本で確定申告を行う場合には、申告書の提出や税金の納付等を代わりに行なう納税管理人を定め、所轄税務署長へ納税管理人の届出書を提出する必要があります。外国法人の場合には、外国普通法人となった旨の届出が必要となる場合もあります。
申告期限は、非居住者である個人は原則として翌年3月15日まで、外国法人は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。ただし、租税条約により所得税等が免除または軽減されるなど、取扱いが異なる場合があります。
海外在住者や外国法人による日本国内不動産の賃貸・譲渡は、源泉徴収、確定申告、納税管理人、租税条約が絡むため、判断を誤りやすい分野です。該当する取引がある場合には、早めに税理士等へ相談し、申告漏れや届出漏れを防ぎましょう。




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