ASBJ「のれん」に関する第3回公聴会
- 安田 亮
- 10月24日
- 読了時間: 2分
おはようございます!代表の安田です。
今回は、2025年9月に開催された企業会計基準委員会(ASBJ)の第3回公聴会について解説します。テーマは「のれんの非償却化」でした。
1. 公聴会の概要
開催日:2025年9月18日
出席者:監査法人の実務家・学識経験者
議題:
のれんを一定期間で償却する方式
償却せず減損テストのみで評価する方式(非償却化)
それぞれのメリット・デメリットについて議論されました。
2. 監査人の立場
監査法人からは、以下のような意見が出されました。
非償却化の利点
スタートアップM&Aなどでは、買収後短期間で成否が明確になることが多いため、減損テストで「適時に」「正確に」価値を評価する方が実態に合う
非償却化を導入するなら、PPA(取得原価配分)の厳格化や、外部専門家を活用した体制整備が不可欠
懸念点
非償却化を続けると、のれんが貸借対照表に積み上がり、純資産の過半を占めるリスクがある
この場合、経営陣が追加的なM&Aを躊躇する可能性もある
3. 学識経験者の意見
大学教授からは、実証研究の結果を踏まえて非償却化を支持しない立場が示されました。
非償却化を導入しても、国内M&Aが増える証拠はない
減損テストのみでは、減損が認識されにくい構造的な問題がある
海外の研究では、非償却化が「のれんの積み上がり」「会計の信頼性低下」につながった例が報告されている
コーポレートガバナンスが弱い企業では、減損認識が遅れる傾向がある
そのため、基準変更は他の制度(ガバナンス体制の強化など)と合わせて行なう必要があると指摘されました。
4. 実務への影響
今回の議論から、以下のような示唆が得られます。
非償却化導入なら体制強化が必須
減損テストを厳格に行なうため、企業は専門家活用や内部統制の整備が求められる
のれん残高の増加リスクに注意
特にM&Aを繰り返す企業は、財務の健全性をどう示すかが課題になる
ガバナンスとの一体的対応
単に会計基準を変えるだけでなく、取締役会や監査体制の強化とセットで検討すべき
まとめ
「のれん」の非償却化は国際基準(IFRS)に沿った流れではありますが、実務やガバナンス面で課題も多く残されています。今回の公聴会では、非償却化を支持しない学術的見解も示され、今後の基準策定に影響を与える可能性があります。
当事務所では、M&Aに関する会計処理やのれんの取扱いについてもご相談を承っております。制度変更が企業の財務戦略に与える影響を一緒に検討していきましょう。



コメント