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合同会社が事前確定届出給与を支給するときの注意点|業務執行社員の職務執行開始日をどう考えるか

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 5月11日
  • 読了時間: 6分

おはようございます!代表の安田です。


役員給与の損金算入を考えるうえで、事前確定届出給与は非常に重要な制度です。特に、利益連動ではなく、あらかじめ支給時期と金額を定めた役員給与を適正に損金処理したい場合には、事前確定届出給与のルールを正確に理解しておく必要があります。


もっとも、実務では株式会社を前提に考えてしまい、合同会社でも同じ感覚で処理できると思われがちです。しかし、合同会社が業務執行社員に事前確定届出給与を支給する場合には、株式会社ではあまり問題にならない論点があります。特に重要なのが、「職務の執行の開始の日」をどう明らかにするかという点です。 


今回は、合同会社における事前確定届出給与の実務上の注意点について、税理士の視点から整理して解説します。


事前確定届出給与とは何か

事前確定届出給与とは、役員に対して支給する給与のうち、あらかじめ支給時期と支給額を定め、所定の届出を行うことで損金算入が認められる給与です。中小企業やオーナー会社では、役員賞与に近い性質の支給を適正に損金処理したい場面で検討されることが多い制度です。


ただし、この制度は自由に使えるわけではなく、届出時期や決定手続、対象者の地位や職務開始時期との関係など、細かい要件を外すと損金算入が認められない可能性があります。そのため、株式会社以上に機関設計が柔軟な合同会社では、会社法上の設計と税務上の要件のつながりを丁寧に確認する必要があります。


合同会社で特に問題になるのは「職務の執行の開始の日」

合同会社が業務執行社員へ支給する役員給与について、事前確定届出給与として損金算入するためには、「職務の執行の開始の日」を明らかにすることが求められています。


株式会社であれば、一般に定時株主総会の日が職務執行開始日と理解しやすい場面があります。しかし、合同会社では事情が異なります。なぜなら、社員総会の設置が義務ではないからです。一般的にも、ほとんどの合同会社では社員総会を設置していないと思われます。


つまり、合同会社では「いつからその職務を執行する立場にあるのか」を当然には確定しにくく、その点が事前確定届出給与の実務上の論点になります。


文書回答事例で示された認められる一例とは

資料では、東京国税局の文書回答事例で、事前確定届出給与の損金算入が認められるケースの一例として、次のような状況が紹介されています。

  • 社員総会が設置されている

  • 業務執行社員ごとの任期を定めている

  • 事業年度終了の日から3か月以内に定時社員総会を開催している

  • 定時社員総会で業務執行社員に支給する役員給与を決定している

  • 職務執行期間の開始の日を定時社員総会の開催日としている

ここで大事なのは、これが絶対的な要件として列挙されているというより、認められる状況の一例として示されている点です。資料中でも、そのように理解すべき趣旨が語られています。


社員総会がない合同会社はどう考えるべきか

実務上、多くの合同会社は社員総会を定款で設けていません。そのため、株式会社のように「定時株主総会の日」を基準に整理する発想をそのまま持ち込むと、税務上の説明が弱くなる可能性があります。


合同会社で事前確定届出給与を使うなら、まず定款を確認し、機関設計や意思決定の流れを把握することが出発点になるということです。単に税務届出の様式だけ確認すればよいのではなく、会社法上どのような体制で業務執行社員の職務開始が整理されているのかを見なければなりません。


任期の定めは必須なのか

「業務執行社員ごとの任期を定めている」点が文書回答事例の一要素として示されています。もっとも、任期の定め自体が必須とまでは読めないものの、職務執行開始日を明らかにするための補完材料として有効だと整理されています。


たしかに、任期の定めがあれば、どの時点で職務執行期間が切り替わるのかを説明しやすくなります。その意味で、任期は単なる登記事項や社内ルールではなく、税務上の届出給与の裏付け資料としても意味を持ち得ると考えられます。


任期を定めると変更登記が毎回必要になるのか

合同会社の実務でよく気になるのがこの点です。

文書回答事例の合同会社で業務執行社員の任期が10年とされていることを踏まえ、「任期を定めると10年後に役員変更登記が必要になるのか?」という疑問が浮かんできます。

これに対して、業務執行権の状況に変化がなければ変更登記は不要とされているようです。


これは実務上かなり重要です。任期を定めることに慎重になる理由の一つに登記負担がありますが、業務執行社員の任期満了後に同じ者が引き続き業務執行社員である場合でも、直ちに「重任」登記の発想にはならないと考えられています。


合同会社の業務執行権はどう考えるべきか

合同会社の社員は原則として全員が業務執行権を有する一方、定款等で特定の社員を業務執行社員と定めることができるとされています。たとえば、社員A・B・Cがいて、Aのみを業務執行社員かつ代表社員とする場合、Aに新たに権限を付与するというより、BとCの業務執行権が制限されていると捉えることになる、という整理です。


この整理に立つと、任期満了後に同じAが引き続き業務執行社員となる場合も、「新たに選任された」というより、他の社員の業務執行権制限が延長したと理解することになります。資料でも、そのため「重任」の登記はしないと捉えるようだとまとめられています。


実務上のポイントは「まず定款確認」

合同会社が事前確定届出給与を支給する場合には、定款を確認すべきと言えます。


実務では、税務相談を受けた際に、まず届出期限や金額設定に目が行きがちです。

しかし、合同会社の場合はその前提として、

  • 社員総会の定めがあるか

  • 業務執行社員がどのように定められているか

  • 任期の規定があるか

  • 職務執行開始日を客観的に説明できるか

を確認しないと、事前確定届出給与の損金算入を支える根拠が弱くなります。 


こんな合同会社は要注意

特に次のような合同会社では、慎重な確認が必要です。

  • 定款に社員総会の定めがない

  • 業務執行社員の任期を定めていない

  • 業務執行社員の就任や職務執行開始の時期が書面で明確でない

  • 株式会社と同じ感覚で役員給与の運用をしている

  • これまで事前確定届出給与を使ったことがない


このような会社では、税務届出以前に、会社法上の整理と社内文書の整備が必要になる場合があります。


まとめ

合同会社が業務執行社員に事前確定届出給与を支給する場合には、株式会社と同じ感覚で処理しないことが重要です。税務上は特に「職務の執行の開始の日」を明らかにすることがポイントであり、その確認には定款の内容、社員総会の有無、任期の定め、職務執行期間の区切りが関係します。


東京国税局の文書回答事例では、社員総会の設置や任期の定めなどを前提に、定時社員総会の日を職務執行開始日とする一例が示されています。


また、任期の定めは必須とまではいえないものの、職務執行開始日を説明する補完材料として有効と考えられます。さらに、業務執行権の状況に変化がなければ、任期満了後も直ちに変更登記が必要とはならないという整理も実務上参考になります。


合同会社で事前確定届出給与を検討する場合は、税務届出の前に、まず定款と機関設計を確認することが大切です。形式だけ整えて届出をしても、職務執行開始日の説明が不十分だと、思わぬリスクにつながる可能性があります。


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