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資本的支出と修繕費の違いとは? 法人税で損金算入できる判断基準を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 5月18日
  • 読了時間: 9分

こんにちは!代表の安田です。


会社が建物、機械装置、車両、ソフトウェアなどを使用していると、定期的な修理や部品交換、改良工事が必要になります。


このとき、経理処理でよく問題になるのが、その支出を修繕費として一括で損金算入できるのか、それとも資本的支出として固定資産に計上し、減価償却する必要があるのかという点です。


実務では、次のような相談をよく受けます。

  • 建物の外壁塗装は修繕費でよいのか

  • 機械の部品交換は資本的支出になるのか

  • ソフトウェアのプログラム修正費用は一括で経費にできるのか

  • LEDランプへの交換費用は修繕費になるのか」「60万円未満なら修繕費にできると聞いたが本当か


資本的支出と修繕費の判断を誤ると、法人税の所得計算に大きく影響します。修繕費であれば支出した事業年度に損金算入できますが、資本的支出であれば固定資産として計上し、耐用年数にわたって減価償却することになります。


今回は、法人税実務で重要な資本的支出と修繕費の判断基準について、税理士の視点からわかりやすく解説します。


1.資本的支出とは

税務上の資本的支出とは、法人が所有する固定資産について修理、改良その他の支出をした場合に、その支出のうち、固定資産の価値や使用可能期間を高める部分をいいます。


資本的支出について、名称を問わず、固定資産について支出する金額のうち、次の金額に該当するものと整理されています。


1つ目:固定資産の使用可能期間を延長させる部分に対応する金額

2つ目:固定資産の価額を増加させる部分に対応する金額


両方に該当する場合には、いずれか多い金額が資本的支出になります。

つまり、単なる原状回復ではなく、資産の寿命を延ばしたり、性能や価値を高めたりする支出は、資本的支出として扱われます。


2.修繕費とは

修繕費とは、固定資産の通常の維持管理や、壊れた部分を元の状態に戻すための費用です。


たとえば、建物の破損部分を直す、機械の消耗部品を交換する、設備を通常使用できる状態に戻すといった支出は、原則として修繕費に該当します。


修繕費に該当すれば、支出した事業年度に損金算入できます。一方、資本的支出に該当すると、その支出額を新たな固定資産の取得価額として処理し、減価償却により費用化します。


3.資本的支出になる金額の計算例

事務所に200万円の修繕費を支出した結果、残存使用可能期間が10年から15年に延び、時価が400万円から460万円に上がった例を考えてみましょう。


この場合、使用可能期間を延長させる部分に対応する金額と、価額を増加させる部分に対応する金額を計算し、そのいずれか多い金額が資本的支出になります。

資料の計算例では、価額を増加させる部分に対応する金額が60万円となり、これが資本的支出の金額とされています。そして、支出総額200万円から資本的支出60万円を除いた140万円が修繕費になります。


このように、1つの工事や修理の中に、資本的支出部分と修繕費部分が混在することがあります。


4.実務では形式基準が重要

理論上は、使用可能期間の延長や価額増加を厳密に判断する必要があります。


しかし、実務上は、修理や改良の支出について、どこまでが資本的支出で、どこまでが修繕費なのかを正確に区分することが難しいケースが多くあります。


そのため、法人税の取扱いとして、資本的支出と修繕費を区分するための一定の形式基準が設けられていると説明されています。


資本的支出と修繕費の判定フローがあり、災害復旧、原状回復、20万円未満、3年以内周期、60万円未満、取得価額10%以下などの基準に沿って判定する流れが整理されています。


5.おおむね3年以内周期の修理は修繕費

生産用機械について、生産能力を維持するために3年おきに修理を行なっている場合、その修理費用は修繕費として処理できるとされています。


これは、一の計画に基づき同一の固定資産について行なう修理・改良等が、おおむね3年以内の周期で行なわれることが、過去の実績などから明らかな場合に認められる取扱いです。


つまり、定期的なメンテナンスとして行なわれる修理であり、資産の価値を新たに高めるものではなく、通常の維持管理に近いものと考えられます。


6.ソフトウェアの修正費用は内容で判断する

ソフトウェアの修正費用も、資本的支出と修繕費の判断でよく問題になります。


消費税率引上げや軽減税率制度への対応のために、POSレジシステム、受発注システム、経理システムのプログラム修正を外部委託した事例を考えてみましょう。


この事例では、プログラム修正が、消費税法改正への対応に限定されており、新たな機能の追加や機能向上には該当しないことから、修繕費として損金算入できるとされています。


一方で、プログラムの修正が新機能の追加、処理能力の向上、利便性の大幅な向上などに該当する場合は、資本的支出になる可能性があります。


7.60万円未満なら修繕費にできる形式基準

固定資産の修理や改良にかかった費用の中に、資本的支出か修繕費か明らかでない金額がある場合、一定の形式基準があります。


その金額が60万円未満である場合、またはその固定資産の前期末取得価額のおおむね10%相当額以下である場合には、修繕費として損金経理できるとされています。


たとえば、印刷業用機械の部品交換費用が50万円で、前期末取得価額が400万円であるケースでは、50万円は取得価額400万円の10%である40万円を超えています。


しかし、60万円未満であるため、全額を修繕費として処理できるとされています。


この基準は実務上よく使われますが、あくまで「資本的支出か修繕費か明らかでない金額」がある場合の取扱いである点に注意が必要です。


8.前期末取得価額とは帳簿価額ではない

60万円未満または取得価額10%以下の形式基準を使う場合、前期末取得価額の考え方にも注意が必要です。

前期末における取得価額とは、当初の取得価額に前期までの資本的支出を加算し、除却部分があればそれを控除した金額であり、企業会計上の帳簿価額ではないと説明されています。


つまり、減価償却後の帳簿価額を基準に10%を計算するわけではありません。

この点は、実務で誤りやすいポイントです。


9.区分が難しい場合の30%基準

修理や改良にかかった費用の中に、資本的支出部分と修繕費部分が混在し、それぞれの区分が明らかでない場合には、簡便的な取扱いがあります。


継続して、支出額の30%相当額と、対象固定資産の前期末取得価額の10%相当額のいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とする処理が認められるとされています。


たとえば、機械装置の部品交換費用が200万円、前期末取得価額が1,000万円の場合、支出額の30%は60万円、取得価額の10%は100万円です。この場合、少ない方の60万円を修繕費、残り140万円を資本的支出とすることができます。


この取扱いは継続適用が前提になるため、都合のよい年度だけ使うような処理は避けるべきと言えます。


10.蛍光灯をLEDランプに替えた場合

近年よくある相談が、蛍光灯をLEDランプに取り替えた場合の処理です。


事務室の蛍光灯30本を蛍光灯型LEDランプへ取り替え、既存の照明設備自体には工事を行なっていないケースが紹介されています。この場合、取替費用総額24万円について、税務上の資本的支出には該当せず、修繕費として処理できるとされています。


理由として、蛍光灯型LEDランプは照明設備が効用を発揮するための部品であり、その部品の性能が高まっただけで、建物附属設備としての価値や耐久性が高まったとまではいえないと説明されています。


ただし、照明設備全体を新たに工事する場合などは、別途判断が必要です。


11.耐用年数を経過した資産でも修繕費になる場合がある

耐用年数を経過した固定資産について修理を行なう場合、すべて資本的支出になるのではないかと心配されることがあります。


法定耐用年数を経過した自社ビルについて、外壁の原状回復のための塗装工事を行なった場合、その費用は修繕費として処理できるとされています。

耐用年数を経過しているからといって、修理・改良費用が直ちに資本的支出になるわけではありません。通常の資本的支出と修繕費の判断基準に従って判定します。


12.災害復旧と拡張工事が混在する場合

災害で損壊した固定資産について復旧工事を行なう場合も、資本的支出と修繕費の区分が問題になります。


被災した外壁について、原状回復費用や被災前の効用を維持するために支出した金額で修繕費として経理したものは、修繕費に該当するとされています。


一方で、原状回復とあわせて外壁の拡張工事を行なった場合、その拡張工事に要する部分は原則として資本的支出です。


ただし、原状回復費用と拡張工事費用を合理的に区分することが困難な場合には、支出額の30%相当額を修繕費、残額を資本的支出とする処理も認められるとされています。


13.実務でよくある誤解

① 修理という名前ならすべて修繕費になる

これは誤りです。名称が修理費や補修費であっても、固定資産の使用可能期間を延長させたり、価額を増加させたりする部分は資本的支出になります。


② 耐用年数を過ぎた資産への支出はすべて資本的支出

これも誤りです。耐用年数を経過した資産への支出でも、原状回復のための外壁塗装工事などは修繕費として処理できる場合があります。


③ LEDランプへの交換は必ず資本的支出

これも一概にはいえません。既存の照明設備をそのまま使用し、蛍光灯型LEDランプという部品を交換するだけであれば、修繕費として処理できるとされています。


④ 60万円未満ならどんな支出でも修繕費

これは危険です。60万円未満基準は、資本的支出か修繕費か明らかでない金額についての形式基準です。明らかに新たな資産を取得した場合や、明らかに価値を高める改良の場合まで、当然に修繕費になるわけではありません。


14.会社が確認しておきたい実務ポイント

固定資産の修理・改良費用を処理する際は、次の点を確認しましょう。

  • 支出の目的は原状回復か、性能向上か

  • 使用可能期間を延長しているか

  • 固定資産の価額を増加させているか

  • おおむね3年以内周期の修理か

  • 支出額が20万円未満または60万円未満か

  • 固定資産の前期末取得価額の10%以下か

  • 資本的支出と修繕費が混在していないか

  • 区分困難な場合に30%基準を継続適用しているか

  • 請求書、見積書、工事内容、作業指図書を保存しているか

  • ソフトウェア修正の場合、新機能追加か現状維持かを確認しているか


まとめ

固定資産の修理・改良費用は、法人税上、修繕費として一括損金算入できる場合と、資本的支出として固定資産に計上し、減価償却する必要がある場合があります。


資本的支出とは、固定資産の使用可能期間を延長させる部分、または価額を増加させる部分に対応する金額をいいます。一方、通常の維持管理や原状回復のための支出は、修繕費として処理できる可能性があります。


実務では、判断が難しいケースも多いため、おおむね3年以内周期の修理、60万円未満、前期末取得価額10%以下、区分困難な場合の30%基準などの形式基準が重要になります。

また、ソフトウェアの法改正対応、蛍光灯型LEDランプへの取替、耐用年数経過後の外壁塗装、災害復旧工事など、具体的な内容によって判断が分かれます。


資本的支出と修繕費の判断では、金額だけでなく、支出の目的、工事内容、資産価値の増加、使用可能期間の延長、原状回復かどうかを確認することが大切です。税務調査で説明できるよう、見積書、請求書、作業内容、写真、社内稟議書などを保存し、処理根拠を明確にしておきましょう。


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