資本金1億円以下でも外形標準課税の対象に
- 安田 亮
- 6月6日
- 読了時間: 3分
おはようございます!代表の安田です。
令和6年度税制改正により、従来は対象外であった資本金1億円以下の法人にも、一定の要件に該当すれば外形標準課税が適用されるようになりました。
今回は、2025年4月1日以降の事業年度から段階的に導入されるこの改正の概要と実務への影響について、ポイントをわかりやすく解説します。
■そもそも「外形標準課税」とは?
法人事業税の一種で、赤字企業であっても一定の税負担を求める制度です。
課税対象には「所得」だけでなく、「付加価値額」「資本額」「収入金額」が含まれる
もともとは資本金1億円超の法人が対象
この制度の背景には、「赤字でも行政サービスを受けているなら税負担すべき」という考えがあります。
■2025年度以降、どんな法人が新たに対象になるのか?
①減資による適用回避への対応(2025年4月~)
以下3つすべてを満たす法人は、資本金が1億円以下でも外形標準課税の対象になります:
前期が外形標準課税の対象法人(例:資本金1億円超)
今期の資本金が1億円以下
今期末の払込資本(資本金+資本剰余金)が10億円超
このように、無償減資などで資本金を形式的に1億円以下とした法人も対象となります。
②100%子法人等への適用拡大(2026年4月~)
親会社が「資本金+資本剰余金」=50億円超の法人(≒大企業)の場合、次の子会社・孫会社等が対象になります:
資本金が1億円以下
親法人との間に100%支配関係がある
払込資本が2億円超(配当等の調整後)
つまり、大企業グループのスキームによる適用回避を防ぐ措置です。
■適用により増税になる?それとも軽減?
外形標準課税の法人になると:
所得割が下がる(7.0% → 1.0%)
代わりに「付加価値割」「資本割」が加わる → 特に赤字法人は所得割がない分、資本割のみ課税されるため負担増に
さらに、付加価値額算定にかかる集計業務(給与、賃借料、利子等)も増加するため、事務負担にも注意が必要です。
■税効果会計への影響にも注意
対象法人になると、税効果会計の法定実効税率が変更されます。例えば東京都所在法人では
通常(外形対象外)→ 34.59%
外形対象法人 → 31.52%(防衛特別法人税含む)
繰延税金資産の算定に影響するため、早めの見直しが必要です。
■中間申告義務の判定基準も変更(2025年4月~)
これまでは「中間期末時点」で判定していましたが、改正後は前事業年度が外形標準課税の対象かどうかで判断されるようになります。申告漏れのないようご注意ください。
■まとめ:外形標準課税の範囲拡大は他人事ではない
今回の改正により、これまで対象外だった中堅企業やグループ内子会社も課税対象になる可能性が出てきました。対象となるかどうかは、「資本金+資本剰余金」の規模やグループ内支配関係などで判定されるため、形式的な減資や資本構成の見直しでは対応できません。
当事務所では、対象判定のシミュレーション、繰延税金資産への影響分析、税効果会計処理の見直し支援なども承っております。ぜひお気軽にご相談ください。

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