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マイカー通勤手当の非課税限度額が11年ぶりに引き上げ

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 4 時間前
  • 読了時間: 3分

おはようございます!代表の安田です。


令和7年4月1日以後分にさかのぼって適用、年末調整で精算が必要なケースも

2025年11月19日、通勤手当の非課税限度額を引き上げる改正所得税法施行令が公布され、翌20日に施行されました。マイカー通勤手当の見直しは実に11年ぶりです。

今回の改正は、「令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当」にさかのぼって適用されるため、同日以後に支給し、改正前限度額に基づき課税されていた部分は年末調整で精算が必要 となります。

企業の人事・経理担当者にとって重要な改正ですので、以下にポイントを整理します。


1.マイカー通勤手当の非課税限度額が距離区分ごとに引き上げ

今回改正されたのは、マイカーなど自動車等による通勤手当の「距離区分ごとの限度額」です。距離区分(2km以上10km未満など)は従来通りで、10km以上の区分が引き上げ対象となります。

【主な改正内容】(一部抜粋)

片道距離

改正前

改正後(令和7年4月〜)

10〜15km

7,100円

7,300円(+200円)

15〜25km

12,900円

13,500円(+600円)

25〜35km

18,700円

19,700円(+1,000円)

35〜45km

24,400円

25,900円(+1,500円)

45〜55km

28,000円

32,300円(+4,300円)

55km以上

31,600円

38,700円(+7,100円)

※ 交通機関や定期券利用者の「1か月15万円」の非課税枠は今回変更なし。


2.「令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当」から適用

今回の改正は、通常の「支給日ベース」ではなく、“支払われるべき”日が令和7年4月1日以後という点が重要です。

国税庁Q&Aでは、具体的に以下が整理されています。

● 改正後の限度額が適用されない例

  • 令和7年3月10日に4月分を前倒し支給した場合

  • 令和7年4月10日に3月分を後払いした場合(← 支払われるべき日が4月1日以前のため)

● 改正後の限度額が適用される例

  • 未払いであった4月分を4月10日に支払った場合

  • 支給日が4月2日など4月1日以後に定められている場合


給与規程の改訂で遡及適用する場合の扱いにも注意が必要です。


3. 4月以後の課税済み通勤手当は年末調整で精算

改正によって新たに非課税となった金額がある場合、年末調整で課税分を控除して精算します。

【実務イメージ】

例:片道50kmの従業員に毎月3万円支給していた場合

  • 改正前:非課税 28,000円 → 超過 2,000円が課税

  • 改正後:非課税 32,300円 → 全額非課税

→ 4月〜10月に課税していた 2,000円×7か月=14,000円 を「非課税となる通勤手当」として源泉徴収簿から控除し、年末調整で還付します。

(源泉徴収票の支払金額欄も修正が必要です)


4.追加支給・中途入社・中途退職者の対応に注意

● 追加支給する場合

改正後の限度額以内であれば、追加支給分も含めて全額非課税となり、年末調整による精算は不要

● 中途退職者

退職後に課税→非課税となる金額が生じた場合、源泉徴収票の再交付が必要(摘要に「再交付」と記載)。

● 中途入社者

前職で課税扱いだった通勤手当がある場合、前職の源泉徴収票を再交付してもらう必要があります。(年末調整で合算処理)


5.来年(令和8年)も追加改正の可能性あり

今回の改正は「公務員の通勤手当引上げ」に伴うものですが、人事院勧告では令和8年4月から:

  • 65〜100kmの新しい距離区分の創設(上限66,400円)

  • 駐車場代5,000円を上限とする通勤手当の新設

などが示されており、令和8年の所得税法施行令でも追加改正となる可能性が高い とされています。


税理士からのコメント

今回の改正は、企業の給与計算システム・年末調整業務に直接影響します。

特に注意したいのは:

  • 「支払日」ではなく「支払われるべき日」で判定する点

  • 過去課税分の精算が必要となる点

  • 中途退職・入社者への源泉徴収票再交付の必要性

  • 来年さらに大幅な改正が見込まれる点

通勤手当は従業員全員に関わるため、給与規程の改訂・従業員への通知・システム設定変更の早期対応が求められます。

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