課税売上も非課税売上も「ゼロ」の場合の仕入税額控除
- 安田 亮
- 5月1日
- 読了時間: 2分
おはようございます!代表の安田です。
新設法人や創業初年度の企業などでは、「売上がまだ一切発生していない」という状況が起こり得ます。こうしたケースでは、消費税の仕入税額控除をどのように処理すべきか、実務上の判断が求められます。
本記事では、「課税売上割合が0/0」となるケースにおける消費税の仕入税額控除の取扱いについて解説します。
■原則的な仕入税額控除の仕組み
消費税法上、課税仕入れ等に係る消費税額は、原則として全額控除が可能です。しかし、以下のいずれかに該当する場合は、仕入税額控除の対象額を合理的に算定する必要があります。
年間課税売上高が5億円超
課税売上割合が95%未満
この場合は、以下のいずれかの方法で仕入控除税額を算定します。
個別対応方式
一括比例配分方式
■「課税売上0、非課税売上10」の場合
このようなケースでは課税売上割合は
課税売上割合 = 0 / (0 + 10) = 0%
一括比例配分方式では:
仕入控除税額 = 課税仕入等の消費税額 × 0% = 0円
つまり、全く控除ができなくなってしまいます。
一方、個別対応方式であれば、以下の計算式により:
課税売上対応の消費税額 + (共通対応の消費税額 × 課税売上割合)
課税売上対応分が明確にある場合、その部分に限って控除が可能となります。
■ 「課税売上0、非課税売上0」の場合
つまり、売上自体が一切発生していないケースです。課税売上割合は:
課税売上割合 = 0 / (0 + 0) → 計算不能(0/0)
このような場合でも、以下のように処理されると考えられます。
一括比例配分方式では控除不可
個別対応方式であれば、課税売上対応分の控除は可能
課税売上割合が0/0で算定不能な場合であっても、制度趣旨からすれば、「95%未満のケース」として個別対応方式に準じて課税売上対応の仕入税額の控除が可能という解釈が実務上なされています。
【実務対応のポイント】
仕入内容ごとの区分管理が重要
課税売上対応/非課税売上対応/共通対応の区別を明確に
新設法人等で還付申告を予定している場合は、必ず個別対応方式を選択
一括比例配分方式では控除できない可能性が高い。
仕入税額控除の適否判断は、将来の課税売上との対応関係も踏まえて整理
【まとめ】
課税売上も非課税売上も発生していない期における消費税の仕入税額控除は、一見すると判断に迷う論点ですが、「個別対応方式を採用し、課税売上対応の仕入が明確に存在する」場合には控除が可能です。

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