e-Taxで医療費控除を受ける場合、医療費通知の添付は不要?入力項目と保存義務を税理士が解説
- 安田 亮
- 14 時間前
- 読了時間: 12分
こんにちは!代表の安田です。
医療費控除を受けるために確定申告をする方は多いですが、以前は医療費の領収書を集め、集計し、申告書に添付または提示する必要がありました。
現在は手続きが見直され、医療費控除を受ける場合には、原則として「医療費控除の明細書」を作成して確定申告書に添付します。医療費の領収書は、申告時に提出するのではなく、自宅等で5年間保存する取扱いです。
さらに、e-Taxで申告する場合には、医療保険者等が発行する「医療費通知」に記載された内容を入力して送信することで、医療費通知そのものの添付を省略できます。
本日は、e-Taxで医療費控除を受ける場合の医療費通知の取扱い、添付省略の要件、入力する項目、5年間の保存義務、マイナポータル連携を利用する場合の注意点について解説します。
医療費控除とは
医療費控除とは、その年中に、自分や生計を一にする配偶者・親族のために支払った医療費が一定額を超える場合に、所得控除を受けられる制度です。
国税庁は、医療費控除を受けるためには「医療費控除の明細書」を所得税の確定申告書に添付する必要があり、医療費の領収書は自宅で5年間保管する必要があると案内しています。
医療費控除は、会社の年末調整では受けられません。
会社員の方でも、医療費控除を受けるには、原則として所得税の確定申告が必要です。
医療費通知とは
医療費通知とは、健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険などの医療保険者が発行する「医療費のお知らせ」などの書類です。
医療費通知を医療費控除に利用するには、一定の記載事項を満たしている必要があり、次の6項目が記載されていることが要件とされています。
1. 被保険者等の氏名
2. 療養を受けた年月
3. 療養を受けた者
4. 療養を受けた病院等の名称
5. 被保険者等が支払った医療費の額
6. 保険者等の名称国税庁の確定申告書等作成コーナーでも、これら6項目の記載がある医療費通知を確定申告書に添付する場合には、医療費控除の明細書の入力を簡略化でき、医療費通知に記載されている分の医療費の領収書等の保存も不要になると案内されています。
ただし、6項目のいずれかが欠けている場合には、医療費控除を受ける際の添付書類として使用できません。この場合は、領収書等をもとに入力し、その領収書等を5年間保存する必要があります。
医療費控除の手続きは平成29年分から変わっている
医療費控除の手続きは、平成29年分の確定申告から大きく変わりました。
それ以前は、医療費の領収書を確定申告書に添付または提示する取扱いでした。
しかし、平成29年分以後は、原則として次のいずれかの方法になっています。
1. 医療費の領収書に基づいて「医療費控除の明細書」を作成して添付する
2. 医療費通知を添付し、医療費控除の明細書の記載を簡略化するこの見直しにより、領収書そのものは申告書に添付しなくてよくなりました。
ただし、領収書をもとに明細書を作成した場合には、その領収書を5年間保存する必要があります。
一方、医療費通知を添付して明細書を簡略化した場合には、その医療費通知に記載された医療費については、領収書の保存も不要になります。
e-Taxなら医療費通知そのものの添付を省略できる
今回のポイントは、e-Taxで医療費控除を申告する場合の医療費通知の添付省略です。
令和3年分の確定申告から、e-Tax申告で医療費控除を適用する場合、医療費通知に記載された医療費の額等を医療費控除の明細書に入力すれば、医療費通知自体の添付が不要になっています。
国税庁の確定申告書等作成コーナーでも、令和3年分以後の確定申告書をe-Taxで送信する場合には、医療費通知に記載されている事項を「医療費通知に記載された医療費の入力」画面で入力して送信することにより、医療費通知の添付に代えることができると案内されています。
つまり、紙の医療費通知を税務署へ郵送したり、申告書に添付したりする必要はありません。e-Taxで必要事項を入力して送信すれば、医療費通知の添付に代えることができます。
添付省略しても医療費通知は5年間保存が必要
ここで注意したいのが、医療費通知の保存義務です。
e-Taxで医療費通知の添付を省略できるといっても、医療費通知を捨ててよいわけではありません。e-Tax申告の場合に限り、医療費通知の記載事項を入力して送信すれば、医療費通知自体の添付は不要になる一方、医療費通知は5年間の保存が必要と説明されています。
国税庁の確定申告書等作成コーナーでも、確定申告期限の翌日から5年を経過する日までの間、入力内容の確認のために税務署から医療費通知の提示または提出を求められる場合があるため、自宅等で保管するよう案内されています。
したがって、e-Taxで医療費通知を添付省略した場合の実務は、次のようになります。
申告時:医療費通知の内容を入力してe-Tax送信する
申告後:医療費通知は自宅等で5年間保存する
税務署から求められた場合:医療費通知を提示または提出する添付不要と保存不要は別物です。ここはとても大事です。
e-Taxで入力するのは主に3項目
医療費通知には、被保険者氏名、療養年月、病院名、医療費の額など、複数の項目が記載されています。では、e-Taxで医療費通知の添付を省略する場合、医療費通知に記載された情報をすべて入力しなければならないのでしょうか。
実際のe-Tax申告では、医療費通知の記載事項すべてを入力するのではなく、簡略化された明細書の入力事項と同様に、次の3項目を入力すればよいと説明されています。
1. 医療費通知に記載された医療費の合計額
2. 1のうち、その年中に実際に支払った医療費の合計額
3. 2のうち、生命保険や社会保険などで補填される金額法令上、医療費通知の添付省略のために入力・送信が必要な事項について具体的な定めはないものの、納税者の利便性と入力の簡素化を図るため、運用上、所得控除の計算に必要となる上記3項目のみ入力を求めているとされています。
つまり、医療費通知に記載された病院ごとの明細を一つずつ入力する必要はありません。
医療費通知に記載された分については、合計額ベースで入力できるため、医療費控除の申告作業を大きく簡略化できます。
「通知に記載された医療費の合計額」と「実際に支払った額」は違うことがある
e-Taxで入力する項目の中で注意したいのが、次の2つの違いです。
・医療費通知に記載された医療費の合計額
・その年中に実際に支払った医療費の合計額医療費通知に記載されている医療費は、医療保険者が把握した情報に基づいています。
そのため、実際にその年中に支払った金額と、通知に記載されている金額が一致しないことがあります。たとえば、次のようなケースです。
・12月診療分が翌年の医療費通知に記載される
・医療費通知に未反映の医療費がある
・自由診療や一部の薬局支払いが通知に載っていない
・家族分の通知が別々に届く
・保険金や高額療養費で補填された金額がある医療費控除は、その年中に実際に支払った医療費を基礎に計算します。
医療費通知を使う場合でも、その年中に実際に支払った医療費の額を確認する必要があります。
医療費通知に載っていない医療費は領収書をもとに入力する
医療費通知は便利ですが、1年分すべての医療費が必ず記載されているとは限りません。
国税庁の確定申告書等作成コーナーでも、医療費通知に記載されている医療費の内容は年の途中までの場合があり、1年分の記載がないこともあるため、記載されていない分の医療費は領収書等をもとに入力するよう案内されています。
たとえば、医療費通知が1月から10月診療分までしか載っていない場合、11月・12月に支払った医療費は、領収書をもとに別途入力します。
この場合、医療費通知に記載された分と、領収書をもとに入力した分が重複しないよう注意しましょう。
実務上は、次のように分けて整理するとよいです。
医療費通知に記載された医療費 → 医療費通知の入力欄に合計額を入力
医療費通知に記載されていない医療費 → 領収書をもとに医療費控除の明細書へ入力
領収書入力分 → 領収書を5年間保存医療費通知を使った分は領収書の保存が不要
医療費通知を医療費控除に利用する大きなメリットの一つが、領収書の保存負担が軽くなる点です。
国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、6項目の記載がある医療費通知を確定申告書に添付する場合、医療費通知に記載されている分の医療費の領収書等の保存は不要とされています。
医療費通知と簡略化した明細書を添付する場合、医療費通知に記載された医療費については領収書の保存も不要になると説明されています。
ただし、e-Taxで医療費通知の添付を省略した場合には、医療費通知そのものは5年間保存が必要です。整理すると、次のとおりです。
医療費通知に記載された医療費 → 領収書の保存は不要 → ただし、医療費通知は保存が必要
医療費通知に記載されていない医療費 → 領収書をもとに入力 → 領収書を5年間保存ここを混同しないようにしましょう。
マイナポータル連携なら自動入力もできる
現在は、マイナポータル連携を利用することで、医療費通知情報を取得し、確定申告書等作成コーナーに自動入力することもできます。
国税庁は、マイナポータル連携を利用すると、医療費控除に使用できる医療費通知情報をマイナポータル経由で取得し、所得税の確定申告書を作成する際に該当項目へ自動入力できると案内しています。
さらに、事前にマイナポータルで代理人設定を行なうことで、申告に含めることが可能な家族の医療費通知情報もマイナポータル連携で取得できます。ただし、代理人設定には申告者本人と家族のマイナンバーカードが必要です。
医療費が多い方や、家族分をまとめて申告する方にとっては、マイナポータル連携を使うとかなり便利です。
ただし、マイナポータル連携で取得できる情報にも反映時期があります。年末近くの医療費や、通知に反映されない医療費がないかは確認しておきましょう。
紙で申告する場合は医療費通知の添付が必要
e-Taxで申告する場合は、医療費通知の内容を入力して送信することで、医療費通知そのものの添付を省略できます。
一方、紙で確定申告書を提出する場合には、医療費通知を利用して明細書を簡略化するには、原則として医療費通知を添付する必要があります。
医療費通知の記載事項を入力して送信することにより添付不要となるのは、e-Tax申告の場合に限られると説明されています。紙申告の場合には、e-Taxのように「入力して送信する」ことができないため、医療費通知を利用するなら添付を忘れないようにしましょう。
医療費控除とセルフメディケーション税制は選択適用
医療費控除とよく比較される制度に、セルフメディケーション税制があります。
これは、一定のスイッチOTC医薬品を購入した場合に受けられる医療費控除の特例です。
国税庁は、セルフメディケーション税制を適用する場合には、通常の医療費控除の適用はできず、両者は選択適用であると案内しています。また、修正申告や更正の請求で選択を変更することはできません。
したがって、医療費控除を受けるか、セルフメディケーション税制を受けるかは、申告前に比較して判断する必要があります。
医療費通知を利用する場合は通常の医療費控除の話であり、セルフメディケーション税制とは別制度である点にも注意しましょう。
実務上のチェックポイント
e-Taxで医療費控除を受ける場合には、次の点を確認しましょう。
1. 医療費通知に6項目が記載されているか
被保険者等の氏名、療養年月、療養を受けた者、病院等の名称、支払医療費の額、保険者等の名称の6項目が必要です。
2. 医療費通知に1年分すべて載っているか
医療費通知は年の途中までしか記載されていないことがあります。載っていない分は領収書をもとに入力します。
3. 実際にその年中に支払った額を確認しているか
医療費控除は、その年中に実際に支払った医療費が対象です。通知額と実際支払額が異なる場合は確認が必要です。
4. 保険金等で補填される金額を入力しているか
生命保険金、高額療養費、出産育児一時金などで補填される金額は、医療費控除の計算上差し引きます。
5. 添付省略した医療費通知を保存しているか
e-Taxで添付省略した場合でも、医療費通知は5年間保存が必要です。
6. 医療費通知にない医療費の領収書を保存しているか
領収書をもとに入力した医療費については、その領収書を5年間保存します。
7. マイナポータル連携を使う場合、家族分の設定を確認しているか
家族分の医療費通知情報を取得するには、代理人設定が必要です。
よくある誤解
e-Taxなら医療費通知を保存しなくてよい
誤りです。e-Taxでは医療費通知の添付を省略できますが、入力内容の確認のため、医療費通知は5年間保存する必要があります。
医療費通知の全項目をe-Taxで入力しなければならない
実務上は、医療費通知に記載された医療費の合計額、そのうち実際に支払った額、そのうち保険金等で補填される金額の3項目を入力すればよいとされています。
医療費通知に載っていれば領収書も5年間保存が必要
医療費通知に記載された医療費については、領収書等の保存は不要です。ただし、e-Taxで医療費通知の添付を省略した場合には、医療費通知自体を保存する必要があります。
医療費通知に載っていない医療費は控除できない
医療費通知に記載されていない医療費でも、領収書等をもとに入力すれば控除対象にできる場合があります。この場合、領収書等を5年間保存します。
紙申告でも医療費通知の添付を省略できる
医療費通知の内容を入力して送信することで添付を省略できるのは、e-Tax申告の場合です。紙申告で医療費通知を利用する場合は、原則として医療費通知を添付します。
まとめ
医療費控除を受けるには、原則として「医療費控除の明細書」を確定申告書に添付する必要があります。医療費通知を利用する場合には、医療費通知に記載された医療費について明細書の記載を簡略化できます。医療費通知に記載された医療費については、医療費の領収書の保存も不要になります。
さらに、令和3年分以後の確定申告について、e-Taxで医療費控除を申告する場合には、医療費通知に記載された内容を入力して送信することで、医療費通知そのものの添付を省略できます。
ただし、添付省略した医療費通知は5年間保存が必要です。税務署から提示または提出を求められる場合があります。
実際のe-Tax申告では、医療費通知に記載されたすべての明細を入力するのではなく、主に「医療費通知に記載された医療費の合計額」「そのうちその年中に実際に支払った医療費の合計額」「そのうち保険金等で補填される金額」の3項目を入力します。
医療費通知に記載されていない医療費がある場合は、領収書等をもとに別途入力し、その領収書を5年間保存します。
医療費控除は、領収書や医療費通知の扱いを誤ると、申告後に確認が必要になることがあります。e-Tax、医療費通知、マイナポータル連携をうまく活用しつつ、保存すべき書類はきちんと残しておきましょう。




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