【2026年3月期 有報】「重要な契約等」の開示に要注意|2024年改正開示府令の経過措置が終了、記載省略ができなくなるケースも
- 安田 亮
- 1 日前
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おはようございます!代表の安田です。
2024年4月1日施行の改正開示府令(いわゆる「24年度改正開示府令」)により、有価証券報告書(有報)の「重要な契約等」欄で求められる開示が拡充されました。3月末決算企業にとって、2026年3月期有報は適用2年目にあたり、適用1年目(2025年3月期有報)とは異なる実務対応が必要になる点に注意が必要です。
特に見落としやすいのが、施行日前に締結した契約について、一定の条件で記載省略を認めていた経過措置が、2025年3月期(期首が2025年3月末以前)の有報までしか認められない点です。つまり、2026年3月期有報では「昨年は省略できたから今年も省略できる」とは限りません。
本記事では、公認会計士の視点から、2026年3月期に特に注意したいポイントと、開示作成のチェックリストを整理します。
1. 何が変わった?「重要な契約等」で新たに求められる開示テーマ
改正により、「重要な契約等」では次の3類型の開示が新たに求められています。
企業・株主間のガバナンスに関する合意
企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意
ローン契約・社債に付される財務上の特約(コベナンツ等)
2. 2026年3月期の落とし穴:施行日前契約の「記載省略」経過措置が使えなくなる
24年度改正開示府令では、施行日前までに締結された契約について、一定の経過措置として「記載を省略する旨を開示」すれば、契約内容の記載を省略できる取り扱いが設けられていました。
しかし、この経過措置は、適用1年目(2025年3月末以前に開始する事業年度の有報)までしか認められていません。その結果、2025年3月期有報では、少なくとも約200社が記載を省略していたと報じられています。
2026年3月期有報では、同じ契約でも省略できない可能性があるため、改めて棚卸しが必要です。
3. 記載の中身で指摘されやすい点:意思決定プロセスとガバナンスへの影響
とくに「企業・株主間のガバナンスに関する合意」では、単に契約概要だけでなく、次の情報が求められる整理です。
契約の概要(どんな合意か)
合意の目的
提出会社での合意までの意思決定に至る過程
ガバナンスへの影響
そして、令和7年度の有報レビューでは、「意思決定に至る過程等の記載がない/不明瞭」と指摘されているとされています。つまり、2026年3月期は、経過措置の終了だけでなく、レビュー指摘を踏まえた書き方の質の改善も重要になります。
4. 実務での対応方針:契約棚卸し→経過措置判定→記載内容の深掘り
2026年3月期の実務対応としては、次の順に整理すると混乱が少なくなります。
(1)対象契約の棚卸し
株主との合意(ガバナンス条項、株式の処分制限、買増し条項等)
借入契約・社債の財務上の特約(財務制限条項、期限の利益喪失条項等)
(2)経過措置の適用可否を再確認
2025年3月期に「省略」とした契約が、2026年3月期も省略できるかを再判定
(3)意思決定プロセス・ガバナンス影響まで“説明可能”にする
取締役会・委員会・社内稟議のプロセス
交渉経緯の要点
ガバナンス上の意味合い(権限制約、情報提供義務、拒否権等)
5. すぐ使えるチェックリスト(2026年3月期 有報向け)
重要な契約等の対象(①〜③)に該当する契約がないか棚卸し
施行日前契約の「省略」経過措置が、2026年3月期では使えない可能性を前提に再検討
ガバナンス合意は、目的・意思決定プロセス・影響まで記載できる証跡を確保
財務上の特約は、条項内容だけでなく、抵触時の影響や管理体制(モニタリング)も整理
開示原稿のレビュー体制を強化(法務・経理・IR・監査役等の連携)
まとめ:2026年3月期は「経過措置終了」+「レビュー指摘対応」の二段階で準備を
2026年3月期有報では、24年度改正開示府令の適用2年目として、「重要な契約等」の開示において前年と同じ対応が通用しない可能性があります。とくに、施行日前契約の記載省略を認めた経過措置が2025年3月期までで終了するため、昨年省略した契約でも、今年は開示が必要になるケースが想定されます。
加えて、有報レビューで指摘されやすい「意思決定プロセスの不明瞭さ」にも注意し、契約棚卸しと記載品質の改善をセットで進めることが重要です。




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