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オペレーティング・リースと短期前払費用

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 5 日前
  • 読了時間: 3分

おはようございます!代表の安田です。


令和7年度税制改正により、「法人税法第53条」が新たに整備されました。

この条文は、オペレーティング・リース取引(いわゆる賃貸借取引)に関して、支払うリース料のうち「債務が確定した部分」について、各事業年度に損金算入できることを定めたものです。


これにより、「リース料はいつ損金にできるのか?」という実務上の判断に新しいルールが明示された形です。ただし、この改正によって、これまで多くの企業で活用していた「短期前払費用の特例」との関係に疑問を持つ声が上がっています。


1.そもそも「短期前払費用の特例」とは?

企業会計上、前払費用は「将来の期間に対応する費用」として、支払時点では資産計上するのが原則です(費用収益対応の原則)。

しかし、支払日から1年以内に提供を受ける役務に対して支払う前払費用で、かつ継続的に同様の処理を行なう場合には、支払時点で損金算入してもよいというのが「短期前払費用の特例」(法基通2-2-14)です。


たとえば、3月決算の会社が4月から翌年3月までの1年分のリース料を3月末に支払うケースでは、この特例を適用して「支払日の属する事業年度」で損金算入することができます。


2.法人税法53条との関係はどうなる?

改正により法人税法53条が新設され、「債務が確定した部分を損金算入する」との規定が加わりました。これに対し、「それなら短期前払費用の特例はもう使えないのでは?」と考える方もいるかもしれません。

しかし、結論としては、改正後も、オペレーティング・リース取引に短期前払費用の特例を適用することは可能です。


なぜなら、短期前払費用の特例自体が「債務確定主義の例外」として法的に認められているため、法人税法53条が整備された後でも、特例の運用を制限する趣旨はないと考えられているからです。


3.実務上の適用イメージ

下の図では、法人税法53条と短期前払費用の関係が整理されています。図では、支払日から1年以内に役務提供が完了するリース料について、次のような取扱いが可能とされています。

区分

適用条文

損金算入時期

短期前払費用の特例

法基通2-2-14

支払日の属する事業年度

債務確定した部分の金額

法人税法53条

各事業年度(債務確定時)

つまり、年払いのリース料で毎年同様の契約・支払を継続している場合には、従前どおり支払日の属する年度で損金算入して構いません。改正により「短期前払費用の特例が使えなくなる」という誤解を避けることが重要です。


4.まとめ

ポイント

内容

改正の趣旨

オペレーティング・リース取引の損金算入時期を明確化(法人税法53条)

特例の扱い

短期前払費用の特例(法基通2-2-14)は引き続き適用可能

実務上の取扱い

支払日から1年以内のリース料は、従来どおり支払年度で損金算入可能

注意点

継続適用が条件。処理方針の一貫性を保つことが重要。


税理士からのコメント

オペレーティング・リースは、設備やシステム利用契約など、幅広い企業で使われています。令和7年度改正で「法人税法53条」が新設されたものの、短期前払費用の特例が否定されたわけではありません。実務上は、従来の処理を変更せず、支払日の属する年度で損金算入する方法を引き続き採用できます。


ただし、適用には「継続的な処理」が条件とされます。一度損金算入のタイミングを変えると、税務上の一貫性が失われる恐れもありますので、処理方針の明確化と社内ルール整備をおすすめします。



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