令和8年度改正で強化される「特定税額控除の不適用措置」とは?
- 安田 亮
- 8 時間前
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おはようございます!代表の安田です。
令和8年度税制改正大綱では、いわゆる「特定税額控除規定の不適用措置」(措法42の13⑤)が強化される見込みです。狙いは、賃上げや国内投資に消極的な大企業に対し、研究開発税制等の一部税額控除を適用させない(ムチ税制)こと。
適用は令和8年4月1日以後開始事業年度から予定されています。
本日は、制度の全体像と、実務で見落としやすいポイントを税理士の視点で整理します。
1. そもそも「不適用措置」とは?(対象は資本金1億円超の大企業)
この制度は、資本金1億円超の大企業が、
賃上げに消極的(継続雇用者給与等支給額要件)
設備投資に消極的(国内設備投資額要件)
などの不適用要件を満たした場合に、一定の優遇税制の税額控除が使えなくなる仕組みです。令和8年度改正では、適用期限の延長や対象税制の追加に加え、要件がより厳しくなります。
2. 改正のポイント①:適用期限を2年延長(~令和11年3月31日)
改正大綱では、不適用措置の適用期限を2年延長し、令和11年3月31日までとする方針が示されています。
3. 改正のポイント②:賃上げ要件が「より厳格」に(1%未満→1%/2%未満へ)
不適用要件のうち、賃上げに関する継続雇用者給与等支給額要件が見直され、より積極的な賃上げが求められる形になります。
前期所得が黒字の法人について、法人規模区分に応じて、対前年度比増加割合が
2%未満(一定規模の大企業)
1%未満(それ以外)
で不適用要件に該当と整理されています(※改正前はさらに緩い取扱い)。
4. 改正のポイント③:研究開発税制以外は「賃上げ×投資」の両方が求められる(判定が厳格化)
ここが今回の核心です。現行では、研究開発税制・地域未来投資促進税制・CN投資促進税制は、いずれも不適用要件①②③を全部満たす場合にだけ税額控除が不適用となる整理でした。
しかし改正後、地域未来投資促進税制・CN投資促進税制については、
①所得金額要件 + ②賃上げ要件 を満たす場合または
①所得金額要件 + ③国内設備投資額要件 を満たす場合
に不適用となる方向です。
つまり、当期所得が前期より増えている大企業では、
賃上げが弱い
または
設備投資が弱いの
どちらか一方でも該当すると、税額控除が使えなくなる可能性が出てきます。
実務感覚としては、「賃上げか投資のどちらか頑張ればOK」から、「両方頑張らないと税額控除を取りにくい」へシフトするイメージです。
5. 大胆な設備投資促進税制はさらに厳しい:税額控除だけでなく「即時償却」も不可に
令和8年度改正で創設予定の特定生産性向上設備等投資促進税制(大胆な設備投資促進税制)では、不適用措置(措法42の13⑤)ではなく、税制の条文内に同趣旨の不適用要件が置かれる方向とされています。
そして重要なのが、不適用となった場合、他税制と異なり、税額控除だけでなく即時償却も使えなくなる点です。
また、同税制は中小企業等も使える制度ですが、不適用要件が課されるのは大企業のみとされています。
6. 実務対応チェックリスト:大企業は「給与等支給額」と「国内設備投資額」の見える化が必須
改正後は、税額控除を狙う企業ほど、次の社内整備が重要になります。
当期所得>前期所得の見込み(所得金額要件)
継続雇用者給与等支給額の対前年度比(賃上げ要件)
国内設備投資額と当期減価償却費総額の関係(投資要件)
特に「大胆な設備投資促進税制」を検討する大企業は、賃上げ促進税制が廃止予定でも、継続雇用者給与等支給額の計算が引き続き必要になる点に注意が必要です。
まとめ:令和8年4月開始事業年度からムチ税制が一段強くなる
令和8年度改正では、特定税額控除規定の不適用措置が強化され、特に研究開発税制以外(地域未来投資促進税制・CN投資促進税制等)は、賃上げか設備投資のどちらかが消極的でも税額控除が使えない方向へ見直されます。
さらに、大胆な設備投資促進税制では不適用となると即時償却も不可という、より強いペナルティ設計です。
当事務所では、
該当判定(所得・賃上げ・国内投資の見込み判定)
税額控除・即時償却の適用可否の事前シミュレーション
賃上げ・設備投資の計画策定と証憑整備(調査対応含む)
まで一体でサポートしています。
大企業グループで税額控除を活用している場合は、令和8年4月前に一度、制度影響の棚卸しをおすすめします。




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