top of page

令和7年度税制改正で「中小企業経営強化税制」が拡充

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 2 日前
  • 読了時間: 7分

おはようございます!代表の安田です。


令和7年度税制改正では、中小企業経営強化税制が大きく見直され、新たに「E類型(経営規模の拡大を行う投資計画)」が創設されました。


背景には、

  • 円安・物価高、人件費・金利の上昇によるコスト増

  • 慢性的な人手不足

  • 売上規模ごとに存在する「成長の壁」

など、厳しさを増す中小企業の経営環境があります。


政府はそのなかでも、売上高100億円超の「100億企業」クラスの中小企業が、地域経済を牽引し得る存在として注目しており、この層を各地域で増やしていくことを狙いとしています。

今回の改正は、まさにこの「100億企業予備軍」を後押しする設計になっています。


中小企業経営強化税制の基本構造(おさらい)

中小企業経営強化税制は、中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定を受けた中小企業者等が、計画に沿って一定の設備投資を行なった場合に、

  • 特別償却(即時償却を含む)

  • 取得価額の一定割合の税額控除

のいずれかを選択適用できる制度です。


主なポイントは以下のとおりです。

  • 対象:中小企業者等が認定経営力向上計画に基づき、令和9年3月31日までに一定設備を新規取得し指定事業に供した場合

  • 税額控除限度:

    • 中小企業経営強化税制+中小企業投資促進税制の合計で、その事業年度の法人税・所得税額の20%まで

    • 控除しきれない分は翌期に繰越可能

  • 特別償却限度まで償却しなかった場合の「償却不足額」も翌期に繰越可能

  • 工業会証明書や経済産業大臣の確認書等は、設備取得“前”に申請・取得が必須


類型としてはもともと、A類型(生産性向上設備)/B類型(収益力強化設備)/C類型(デジタル化設備)/D類型(経営資源集約化設備)の4つがありましたが、今回の改正でC類型は廃止され、A・B類型の要件見直しと、新しいE類型が加わりました。


新設「E類型」:売上100億円を目指すための投資減税

1. 対象となる事業者

E類型は、経営規模の拡大を図り、売上高100億円超を目指す中小企業向けの類型です。

投資計画の確認申請ができるのは、以下の条件をすべて満たす法人に限られます。


  • 直前事業年度(基準事業年度)の売上高が 10億円超90億円未満であること

  • 売上高100億円超を目指すに足る

    • 事業基盤(市場規模・顧客・優位性・売上成長・営業利益の黒字など)

    • 財務基盤(自己資本比率30%以上、またはEBITDA有利子負債倍率10倍以内のいずれか)

    • 組織基盤(債権債務・在庫・予算・資金・数値管理体制、部門別管理など)

      を備えていること

※個人事業主はE類型の対象外とされています。


2. 対象設備と税制優遇の内容

対象となる設備は、施行規則で限定列挙されており、

  • 機械・装置

  • 工具・器具備品

  • 建物・建物附属設備

  • ソフトウェア

のうち、

  • 「年平均の投資利益率が7%以上見込まれること」

  • 「経営力向上および経営規模の拡大に資すること」

を満たし、投資計画に明示されたものに限られます。


建物等については、生産性向上に資する設備導入に伴う新増設に限定され、着工は投資計画の確認申請後でなければなりません。


税制上の優遇は、E類型では概ね次のような取扱いが予定されています。

  • 法人税について

    • 機械等:即時償却 または 取得価額の10%(一定の場合7%)の税額控除

    • 建物・附属設備:特別償却15%(一定の場合25%)または取得価額の1%(一定の場合2%)の税額控除

(具体的な率の適用条件は個別検討が必要です)


3. 投資利益率とロードマップ

E類型では、設備投資が一定の収益性を伴った成長投資であることを示すため、投資利益率(ROI)の計算式が定められています(B類型と同様)。設備取得年度の翌年度以降、最長の耐用年数までの平均営業利益増加額などを用いて算定する形で、長期投資でも実態に即した評価ができるよう見直されています。


また、E類型の投資計画期間は、

  • 売上高100億円を超えるまでの3年以上10年以内とされ、

  • その間の売上高増加のための取組・設備投資時期を示すロードマップの策定が必須です。


ここで重要なのが、M&Aによる売上積み上げは対象外とされている点です。

吸収合併や事業譲受による売上増はロードマップに記載できず、あくまで自社の設備投資と事業拡大で100億円を目指す計画であることが求められます。


4. 投資規模・賃上げ要件

投資計画には、次のような定量要件も課されています。

  • 経営力向上計画認定から2年以内に導入予定の設備取得価額の合計が

    • 1億円以上 または

    • 前事業年度売上高の5%以上のいずれか高い金額以上であること

  • 適用可能な総設備投資額の上限は 60億円


さらに、賃上げ要件も重視されています。

  • 対象期間中、従業員への給与総額は増加傾向であること

  • 特に建物・附属設備を新増設する事業年度には、直前年度比で給与総額2.5%以上または5%以上の増加が必要


賃上げ目標を達成したことを示す報告書を、事業年度終了後原則20日以内に経済産業局へ提出し、税務申告に添付する必要があります。


A類型:生産性向上設備の「指標」がより明確に

A類型は「生産性向上設備」に対する税制ですが、経営力向上の指標の定義が見直されました。

従来は「旧モデルと比較して年平均1%以上向上」とされていたものが、

  • 単位時間当たり生産量

  • 歩留まり率

  • 投入コスト削減率

のいずれかで評価する方式に変更されています。


ここでいう「投入コスト」とは、設備を使って商品を生産するときの資材の量や工数などの投入量を指し、製造者側の製作コスト(売る側の原価)ではない点に注意が必要です。


B類型:長期投資でも使いやすいROI計算へ

B類型は「収益力強化設備」に対する税制で、投資利益率の要件・計算式が改正されました。

  • 目標投資利益率が 5% → 7% に引き上げられた一方で、

  • 計算式が見直され、設備の耐用年数全体を踏まえた増益効果を評価できる仕組みとなりました。


従来は、投資年度の翌3年間だけを見ていたため、10年以上かけて回収する長期投資は、投資利益率が低く算出されがちでした。見直し後は、こうした長期投資についてもB類型が使いやすくなっています。


実務上のポイント:どの企業がE類型を検討すべきか

E類型は、

  • 売上10~90億円

  • 営業利益も黒字で、自己資本比率やEBITDAに一定の余裕

  • 既に成長トレンドにあり、「次のステージ」として100億円超を明確に目指したい

といった中堅・準大企業クラスの中小企業にマッチする制度です。


一方で、

  • 工業会証明書・投資計画・経営力向上計画・賃上げ報告書 等、多数の書類

  • 経済産業局・税務署・税理士・会計士など複数の関係者との調整

  • 3~10年スパンのロードマップ策定と進捗管理

が求められるため、「申請さえ出せば使える簡易な制度」とは言えません。


しかし、要件を満たせば、

  • 即時償却や高率の税額控除によるキャッシュ・フローの改善

  • 銀行・投資家に対する成長戦略と賃上げのコミットメントの見える化

につながり、100億企業を目指すうえで非常に強力なツールとなり得ます。


まとめ:成長投資と税制をセットで設計する時代へ

令和7年度改正による中小企業経営強化税制の拡充は、

  • 新しいE類型による「100億企業」創出支援

  • A・B類型の指標見直しによる実務へのフィット感向上

という2つの側面を持っています。


今後、中小企業が成長戦略を描く際には、

  1. 売上・利益・投資計画(ビジネス面)

  2. 賃上げ・人材投資(人材面)

  3. 減価償却・税額控除・資金繰り(税務・財務面)

を一体で設計することがますます重要になります。


当事務所では、

  • 中小企業経営強化税制(A・B・D・E類型)の適用可否の初期診断

  • 投資計画・経営力向上計画の税務面からのチェック

  • 即時償却・税額控除を織り込んだ中期シミュレーション

などについてもご相談を承っております。


「売上100億円を視野に入れた設備投資を検討したい」「うちの会社がE類型の対象になりそうか確認したい」といった場合は、ぜひ一度ご相談ください。



神戸の税理士事務所ロゴ

コメント


bottom of page