top of page

グループ間取引の書類保存特例とローカルファイルの関係とは?令和8年度改正の実務対応を解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 13 時間前
  • 読了時間: 6分

おはようございます!代表の安田です。


令和8年度税制改正では、企業グループ内で行なう一定の取引について、新たな書類保存ルールが設けられる予定です。親子会社間や関連会社間で、無形資産の譲渡・貸付けや技術指導などの役務提供を行っている企業にとっては、契約書や社内資料の整備がこれまで以上に重要になります。


今回の改正で注目されているのが、企業グループ間の取引に係る書類保存の特例です。この特例では、契約書などの取引関連書類に、対価の額を算定するために必要な事項の記載や記録がない場合、その内容を明らかにする補完書類等を取得または作成し、保存することが求められます。補完書類等の保存がない場合には、青色申告の承認取消事由等に該当し得るとされており、軽く見てよい制度ではありません。


一方で、国際税務に対応している企業では、すでに移転価格税制のローカルファイルを作成・保存しているケースもあります。そこで実務上気になるのが、「ローカルファイルがあるなら、今回の新特例でも別途書類を作る必要があるのか」という点です。


新しい書類保存特例とは何か

今回の特例は、内国法人が関連者との間で行なう一定の特定取引を対象とする予定です。


対象となるのは、関連者から受けた工業所有権等の譲渡・貸付けや、技術指導など一定の役務提供です。こうした取引について、契約書などに対価算定の根拠が十分に記載されていなければ、別途補完書類等でその根拠を明らかにしておく必要があります。


ここでいう関連者は、単なる資本関係だけではなく、持株関係や実質的支配関係、それらが連鎖する関係にある者を含む予定です。たとえば、海外親会社と日本子会社との間でライセンス料や技術支援料の授受がある場合、日本子会社側はその対価の算定根拠を説明できる状態にしておく必要があります。


ローカルファイルがあれば補完書類は不要なのか

結論からいうと、ローカルファイルを作成・保存している場合には、原則として別途補完書類等を取得・保存する必要はないと考えられます。


その理由は、ローカルファイルに記載される内容が、基本的にこの新特例で求められる「対価の額を算定するために必要な事項」を網羅していると考えられるためです。


つまり、すでに移転価格税制対応としてローカルファイルを適切に整備している企業であれば、同じ内容を改めて補完書類として作り直す必要は通常ない、という整理です。この点は、国際取引のある企業にとって実務負担の見通しを立てるうえで重要です。


ローカルファイルと新特例の違い

もっとも、両者は似ているようで、制度趣旨も要求水準も同じではありません。資料では、ローカルファイルには、国外関連取引の内容を記載した書類と、独立企業間価格を算定するための書類が含まれるとされています。一方、新特例で求められるのは、そこまで詳細な価格検証資料ではなく、あくまで対価の額を算定するために必要な事項です。


具体的には、ローカルファイルでは、法人や国外関連者が果たす機能、負担するリスク、比較対象取引の選定など、かなり詳細な情報の整理が必要になります。これに対し、新特例における取引関連書類や補完書類等では、単価や役務提供の期間など、金額計算のベースとなる事項を明らかにしておけば足りるとされています。つまり、ローカルファイルと同レベルの詳細な記載までは求められないということです。


どんな会社が特に注意すべきか

この改正で特に注意したいのは、グループ会社間で役務提供や無形資産取引を行っているが、移転価格税制のローカルファイルまでは作成していない会社です。そうした会社では、契約書や請求書だけでは対価の算定根拠が読み取れないケースも多く、令和8年4月以後は、必要に応じて補完書類等を整備しなければならなくなります。


たとえば、次のようなケースは見直し対象になりやすいでしょう。

  • 親会社から受ける技術支援料の計算根拠が曖昧

  • グループ内ライセンス料の単価設定が契約書に十分書かれていない

  • 毎月一定額の請求をしているが、役務提供期間や内容が不明確

  • 海外親会社との取引はあるが、ローカルファイル作成義務までは生じていない

このような場合、少なくとも何に対して、どの期間分を、どの単価や計算方法で請求しているのかを説明できる状態にしておく必要があります。


保存期限や提出のタイミングの違いも要確認

ローカルファイルの作成・取得期限は法人税の確定申告書の提出期限であるのに対し、新特例における補完書類等は事業年度終了日の翌日から2か月以内とされています。

また、保存期間はいずれも7年間ですが、提出や提示のタイミング、未保存の場合の効果には違いがあります。

特に新特例では、補完書類等が保存されていない場合、青色申告の承認取消しにつながり得るとされている点が重く、単なる形式要件とは言い切れません。


実務で今のうちにしておきたいこと

令和8年4月1日以後に適用予定である以上、今のうちから準備を進めておくのが安全であり、特定取引の洗い出しなど早期の対応が求められます。


実務上は、少なくとも次のような流れで点検すると対応しやすくなります。


まず、グループ内の特定取引を洗い出すことです。

次に、契約書・請求書・別紙単価表・社内計算資料を確認し、対価算定に必要な事項が残っているかを点検します。そのうえで、国外関連取引があり、すでにローカルファイルを整備している取引については、その資料で新特例の要件を実質的に満たせるかを確認するとよいでしょう。


税理士として顧問先に案内したいポイント

このテーマは、移転価格税制の対象企業だけの話と誤解されやすいのですが、実際には国内外を問わずグループ間取引がある法人に関係してきます。そのため、顧問先への案内としては、次の点を簡潔に伝えると実務的です。

  • 令和8年4月からグループ間取引の書類保存ルールが強化されること

  • 契約書等に算定根拠が書かれていなければ補完書類が必要になること

  • すでにローカルファイルがあれば通常は別途補完書類は不要と考えられること

  • ただし、新特例ではローカルファイルほど詳細な分析までは求められないこと

こうした整理ができていると、必要以上に過大な文書化をせずに済みますし、逆に必要な取引を見落とすリスクも減らせます。


まとめ

令和8年度税制改正で創設予定の企業グループ間の取引に係る書類保存特例では、関連者との一定の特定取引について、対価の額を算定するために必要な事項を取引関連書類または補完書類等で保存することが求められます。


これに対し、移転価格税制のローカルファイルを作成・保存している場合には、その内容が基本的に必要事項を網羅していると考えられるため、別途補完書類等を取得・保存する必要は通常ないとされています。


一方で、新特例で求められるのは、単価や役務提供期間など対価算定に必要な事項であり、ローカルファイルのような機能・リスク分析や比較対象取引の選定といった詳細な事項までは要求されない見込みです。 


グループ間取引のある法人は、今回の改正を機に、対象取引の洗い出しと契約書等の記載内容の確認を進めておくことが大切です。ローカルファイルを作成している企業はその活用可能性を確認し、未作成の企業は補完書類の整備体制を早めに検討しておくとよいでしょう。


神戸の税理士事務所ロゴ

コメント


bottom of page