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一般消費者にもインボイスを渡す必要はある?レシート・領収書の登録番号と簡易インボイスを税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 2 日前
  • 読了時間: 16分

こんにちは!代表の安田です。


令和5年10月1日からインボイス制度が始まり、適格請求書発行事業者、いわゆるインボイス登録事業者は、取引先から求められた場合にインボイスを交付する義務を負うことになりました。

小売店、飲食店、美容室、クリニック、整体院、学習塾、ECサイト、各種サービス業など、一般消費者向けの取引が多い事業者では、次のような疑問が出てきます。

・一般消費者にも必ずインボイスを交付しなければならないのか
・レシートや領収書に登録番号を書かなくてもよいのか
・「商品代金10,000円、消費税額1,000円」と表示してよいのか
・事業者から求められた場合だけインボイス対応すればよいのか
・簡易インボイスを渡している場合、別の領収書にも税率や消費税額を書く必要があるのか

結論からいうと、インボイス登録事業者であっても、一般消費者に対してインボイスを交付する義務はありません。


インボイスの交付義務が生じるのは、原則として、取引の相手方である課税事業者からインボイスの交付を求められた場合です。


したがって、取引相手が一般消費者であれば、登録番号を記載しない領収書やレシートを交付しても問題ありません。


一方で、消費者向け取引が中心の店舗でも、実際には課税事業者が経費として利用することがあります。その場合、相手方からインボイスの交付を求められれば、原則としてインボイスまたは簡易インボイスを交付する必要があります。


本日は、一般消費者向け取引におけるインボイス交付義務、登録番号なしのレシート・領収書の取扱い、適格簡易請求書を交付できる事業、複数書類でインボイス要件を満たす場合の実務上の注意点を解説します。


インボイス制度とは

インボイス制度とは、正式には「適格請求書等保存方式」といいます。

消費税の仕入税額控除を受けるために、買手側が原則として帳簿とインボイス等を保存する制度です。


国税庁は、インボイスについて、売手が買手に対して正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段であり、一定の事項が記載された請求書や納品書その他これらに類するものと説明しています。


インボイスを交付できるのは、税務署長の登録を受けた適格請求書発行事業者だけです。

登録を受けた事業者は、取引相手である課税事業者から求められた場合、原則としてインボイスを交付し、その写しを保存する義務があります。


ただし、インボイス制度は、買手側の仕入税額控除のための制度です。一般消費者は消費税の申告を行なわず、仕入税額控除も行ないません。そのため、一般消費者に対してまで、常にインボイスを交付する義務があるわけではありません。


インボイスの交付義務は「課税事業者から求められたとき」

適格請求書発行事業者のインボイス交付義務は、国内で課税資産の譲渡等を行なった場合に、相手方である課税事業者から求められたときに発生します。


国税庁Q&Aでも、適格請求書発行事業者には、国内で課税資産の譲渡等を行なった場合、相手方、つまり課税事業者に限られますが、その求めに応じて適格請求書を交付する義務が課されるとされています。


ここで重要なのは、「相手方が課税事業者に限られる」という点です。

一般消費者は消費税の課税事業者ではありません。


したがって、純粋な一般消費者との取引については、インボイス交付義務は課されません。

対消費者取引については適格請求書の交付義務は課されていないため、登録番号の記載がない領収書を交付しても問題ないと整理されています。


一般消費者に渡すレシート・領収書に登録番号は不要

一般消費者との取引では、インボイスを交付する義務がありません。

そのため、適格請求書発行事業者であっても、一般消費者へ渡すレシートや領収書に登録番号を記載しない運用も可能です。

たとえば、一般消費者に商品を税込11,000円で販売した場合に、次のような領収書を交付するケースです。

商品代金 10,000円
消費税額  1,000円
合計額  11,000円

この領収書に登録番号が記載されていなくても、相手が一般消費者であれば、インボイス交付義務違反の問題は生じません。


ただし、登録番号がない領収書は、買手側にとってインボイスにはなりません。

そのため、実際の利用者が事業者であり、経費精算や仕入税額控除のためにインボイスを求める場合には、別途インボイスまたは簡易インボイスの交付対応が必要になります。


総額表示との関係

一般消費者向け取引では、消費税法上、総額表示が求められています。

総額表示とは、消費者に対して商品の価格やサービス料金を表示する場合に、消費税等を含めた支払総額が分かるように表示することをいいます。


たとえば、税込11,000円の商品について、店頭やチラシ、Webサイトで消費者向けに価格表示をする場合には、消費者が最終的に支払う税込価格が分かるように表示する必要があります。


対消費者取引では総額表示の義務付けがあり、その表示内容に沿って「商品代金10,000円、消費税額1,000円」の合計額である11,000円の領収書を交付することには問題ないと説明されています。


つまり、一般消費者向けの領収書で登録番号を記載しない場合でも、税込総額が分かるようにしておくことは重要です。


なお、領収書上で「税抜価格」「消費税額」「税込合計額」を分けて表示すること自体は可能です。問題になるのは、一般消費者に対する価格表示で税込総額が分かりにくい表示をすることです。


消費者向け事業でも事業者が利用することがある

一般消費者向けの店舗やサービスであっても、実際には課税事業者が利用することがあります。

たとえば、次のようなケースです。

・会社員が出張中に飲食店を利用する
・個人事業主が文房具店で備品を購入する
・法人が従業員用の弁当を購入する
・会社が接待で飲食店を利用する
・事業者が美容室や写真館を業務目的で利用する
・法人がセミナーやイベントに参加する

このような場合、店舗側は「うちは一般消費者向けだからインボイスは不要」と考えていても、相手方が課税事業者であれば、インボイスの交付を求められることがあります。


国税庁Q&Aでも、サービスの対象を消費者に限定している場合、実際に事業者による利用がなければインボイスを交付する必要はない一方、実際にそのサービスを利用した課税事業者から交付を求められた場合には、利用規約等にかかわらず交付義務が生じるとされています。


したがって、消費者向け事業であっても、課税事業者が利用する可能性がある場合には、インボイス対応のレシートや領収書を発行できる体制を整えておくと安心です。


適格簡易請求書を交付できる事業

小売業や飲食店業など、不特定多数の者に対して販売やサービス提供を行う事業では、通常のインボイスに代えて、記載事項を簡略化した「適格簡易請求書」を交付できます。

国税庁Q&Aでは、適格簡易請求書を交付できる事業として、次のような事業が挙げられています。

・小売業
・飲食店業
・写真業
・旅行業
・タクシー業
・駐車場業のうち不特定かつ多数の者に対するもの
・その他これらに準ずる事業で、不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行なう事業

小売店や飲食店では、取引のたびに相手方の名称を確認して通常のインボイスを作成することは現実的ではありません。そのため、レシートや領収書を適格簡易請求書として交付できるよう、必要な記載事項を満たすレジシステムや領収書様式を整備することが実務上重要です。


適格簡易請求書の記載事項

適格簡易請求書は、通常のインボイスより記載事項が簡略化されています。

主な記載事項は次のとおりです。

・適格請求書発行事業者の氏名または名称
・登録番号
・取引年月日
・取引内容
・軽減税率の対象品目である場合はその旨
・税率ごとに区分して合計した対価の額
・税率ごとに区分した消費税額等または適用税率

通常のインボイスでは、書類の交付を受ける事業者の氏名または名称の記載が必要です。

しかし、適格簡易請求書では、相手方の氏名または名称の記載は不要です。


国税庁の資料でも、小売業、飲食店業、タクシー業等については、通常のインボイスに代えて簡易インボイスを交付できること、簡易インボイスでは「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」が記載事項から外れることが示されています。


そのため、飲食店や小売店のレシートに、購入者名を記載しなくても、必要事項を満たしていれば適格簡易請求書として有効です。


簡易インボイスを交付していれば、別の領収書に税率等を書かなくてもよい場合がある

実務では、取引先に対して、請求書、納品書、レシート、領収書など複数の書類を交付することがあります。

このとき、すべての書類に登録番号、適用税率、消費税額等を記載する必要があるのでしょうか。


結論として、法定の記載事項を満たすインボイスまたは適格簡易請求書をすでに交付しているのであれば、同じ取引について交付する別の領収書等にまで、同じ記載事項をすべて記載する必要はありません。


適格簡易請求書を交付している場合には、適格請求書の交付義務を満たしており、取引相手はその書類に基づいて仕入税額控除の計算を行うため、同じ相手方に法定の記載事項を満たす書類を複数交付する必要はなく、それ以外の領収書等に消費税額や税率等の表示がなくても問題ないと整理されています。


たとえば、レジで適格簡易請求書の要件を満たすレシートを交付し、その後、別途「領収書」を発行する場合があります。


この場合、レシートが簡易インボイスとして機能しているのであれば、別途発行する領収書は支払事実を示す補助書類として位置付けられ、必ずしもインボイスの記載事項をすべて満たす必要はありません。


ただし、買手側が領収書だけを保存し、簡易インボイスであるレシートを保存しない場合には、仕入税額控除の要件を満たさない可能性があります。

売手側としては、どの書類がインボイスまたは簡易インボイスに該当するのかを分かりやすくしておくことが大切です。


請求書と領収書を合わせてインボイス要件を満たすこともできる

インボイスは、必ず1枚の書類だけで全記載事項を満たさなければならないわけではありません。複数の書類の相互関係が明確であり、それらの書類全体でインボイスの記載事項を満たしていれば、インボイスとして扱うことができます。


たとえば、請求書に登録番号や取引内容、税率ごとの金額が記載されており、領収書に支払日や入金額が記載されている場合です。

この場合、請求書番号や取引日、金額などにより対応関係が明確であれば、複数の書類を合わせてインボイスの要件を満たすことがあります。

ただし、どの書類を保存すれば仕入税額控除の要件を満たせるのかが不明確だと、買手側で混乱が生じます。


店舗やサービス提供者は、次のような運用を整えておくとよいでしょう。

・レシートを簡易インボイスとして発行する
・領収書を発行する場合も登録番号を記載しておく
・領収書に「明細はレシート参照」などと記載する
・レシートと領収書の両方を保存するよう案内する
・電子レシートの場合はダウンロード方法を案内する

実務では、1枚のレシートや領収書で簡易インボイスの要件を満たす形にしておくのが、売手・買手双方にとって分かりやすい対応です。


登録番号なしの領収書を発行する運用の注意点

一般消費者向け取引では、登録番号なしの領収書を発行しても問題ありません。

ただし、店舗の運用として、常に登録番号なしの領収書しか発行できない状態にしていると、事業者からインボイスを求められたときに対応できなくなる可能性があります。

特に、次のような事業では注意が必要です。

・飲食店
・小売店
・ホテル、旅館
・タクシー、駐車場
・レンタカー
・写真館
・セミナー、イベント運営
・スクール、教室業
・クリニックや自由診療のサービス

これらの事業では、一般消費者だけでなく、法人や個人事業主が業務目的で利用することがあります。インボイス登録事業者であるにもかかわらず、課税事業者から求められたときにインボイスを発行できないと、取引先とのトラブルにつながる可能性があります。

そのため、レジシステムや領収書様式を整備し、必要に応じて登録番号付きの簡易インボイスを交付できる体制を作っておきましょう。


レジ・領収書システムで確認すべきこと

消費者向け取引が多い事業者は、レジや会計システムがインボイス制度に対応しているか確認しましょう。主なチェックポイントは次のとおりです。

・登録番号を表示できるか
・税率ごとの対価の額を表示できるか
・消費税額等または適用税率を表示できるか
・軽減税率対象品目を区分できるか
・返品や値引き時の処理に対応しているか
・電子レシートの場合、保存・再発行に対応できるか
・領収書とレシートの関係を明確にできるか

軽減税率対象の商品を扱う小売店や飲食店では、10%対象と8%対象の区分が必要です。

レシートに登録番号があっても、税率ごとの区分ができていなければ、簡易インボイスとして不十分になる可能性があります。


売手側の保存義務にも注意

適格請求書発行事業者は、交付したインボイスや適格簡易請求書の写しを保存する義務があります。紙で交付した場合には控えを保存し、電子データで提供した場合には電磁的記録を保存します。


小売店や飲食店では、日々大量のレシートを発行します。

すべての紙レシートの写しを1枚ずつ保存するのではなく、レジデータや日計表など、交付した簡易インボイスの写しとして認められる方法で保存することが実務上一般的です。

どのデータを保存しているか、保存期間はどうなっているか、電子帳簿保存法への対応はどうしているかを確認しておきましょう。


買手側への案内も大切

消費者向け店舗では、事業者のお客様から「インボイス対応の領収書をください」と言われることがあります。このとき、現場スタッフが制度を理解していないと、対応がばらつきます。たとえば、次のような社内ルールを作っておくとよいでしょう。

・通常レシートが簡易インボイスに該当する場合は、その旨を説明する
・登録番号入り領収書が必要な場合の発行方法を決める
・レシートと領収書を両方発行する場合、どちらを保存すべきか案内する
・宛名なしの簡易インボイスでもよいことをスタッフに共有する
・法人名の領収書を求められた場合の対応を決める

現場での説明がスムーズになると、顧客対応の負担を減らせます。


実務で起こりやすい誤解

1. インボイス登録事業者は一般消費者にも必ずインボイスを渡す必要がある

一般消費者に対しては、インボイスの交付義務はありません。

ただし、実際に課税事業者が利用し、その課税事業者から求められた場合には交付義務が生じます。


2. 消費者向け店舗では登録番号を一切表示しなくてよい

一般消費者向けだけなら登録番号なしの領収書でも問題ありません。

しかし、事業者が利用する可能性がある店舗では、必要に応じて登録番号付きの簡易インボイスを発行できる体制が必要です。


3. 簡易インボイスには購入者名が必要である

適格簡易請求書では、書類の交付を受ける事業者の氏名または名称は記載事項ではありません。

小売店や飲食店のレシートに宛名がなくても、他の要件を満たしていれば簡易インボイスになります。


4. レシートが簡易インボイスなら、別の領収書も必ず同じ記載事項を満たす必要がある

同じ取引について、すでに法定要件を満たす簡易インボイスを交付している場合、別途交付する領収書まで同じ記載事項を満たす必要はありません。

ただし、買手側が保存すべき書類を誤らないように注意が必要です。


5. 税抜価格と消費税額を分けて表示してはいけない

一般消費者向け取引では総額表示が必要ですが、税込総額が分かる形であれば、税抜価格や消費税額をあわせて表示すること自体は可能です。


実務上のチェックリスト

一般消費者向け取引が多い事業者は、次の点を確認しましょう。


1. 自社が適格請求書発行事業者か確認する

インボイス登録をしているか、登録番号は何かを確認します。


2. 取引相手が一般消費者か課税事業者かを確認する

一般消費者には交付義務はありませんが、課税事業者から求められた場合は対応が必要です。


3. 簡易インボイスを交付できる事業か確認する

小売業、飲食店業、タクシー業など、適格簡易請求書を交付できる事業に該当するか確認します。


4. レシートや領収書の記載事項を確認する

登録番号、税率ごとの金額、消費税額等または適用税率、軽減税率対象品目の表示などを確認します。


5. 登録番号なしの消費者向け領収書と、インボイス対応領収書の運用を決める

顧客属性や求めに応じて、どの書類を発行するかを整理します。


6. 複数書類で要件を満たす場合は関係性を明確にする

請求書、レシート、領収書などを組み合わせる場合、対応関係が分かるようにします。


7. スタッフ向けマニュアルを整備する

「インボイス対応の領収書がほしい」と言われた場合の対応を統一します。


8. 交付した書類の写しを保存する

レジデータや電子データなど、簡易インボイスの写しとして必要なデータを保存します。


税務調査で確認されやすい資料

インボイス制度では、売手側・買手側の双方で書類の保存状況が確認されることがあります。一般消費者向け取引が多い事業者では、次の資料を整理しておくとよいでしょう。

・レシート、領収書のサンプル
・登録番号の表示設定
・レジシステムの設定資料
・税率ごとの売上集計表
・軽減税率対象品目の管理資料
・日計表、月次売上データ
・電子レシートの保存データ
・領収書の再発行ルール
・スタッフ向けインボイス対応マニュアル

特に、軽減税率対象の商品を扱う事業者は、税率ごとの区分が適切にできているか確認しておく必要があります。


まとめ

インボイス制度では、適格請求書発行事業者にインボイスの交付義務があります。

ただし、その義務が生じるのは、原則として、取引の相手方である課税事業者からインボイスの交付を求められた場合です。


一般消費者との取引については、インボイスの交付義務はありません。

そのため、適格請求書発行事業者であっても、一般消費者に交付する領収書やレシートに登録番号を記載しない運用は可能です。


また、税込11,000円の取引について、「商品代金10,000円、消費税額1,000円、合計11,000円」といった領収書を交付することも、税込総額が分かる形であれば問題ありません。


一方、一般消費者向けの事業であっても、課税事業者が業務目的で利用することがあります。


その場合、課税事業者からインボイスの交付を求められれば、原則としてインボイスまたは適格簡易請求書を交付する必要があります。


小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業など、不特定多数の者に販売やサービス提供を行う事業では、通常のインボイスに代えて適格簡易請求書を交付できます。

適格簡易請求書では、購入者名の記載は不要ですが、登録番号、取引内容、税率ごとの対価の額、消費税額等または適用税率などの記載が必要です。


すでに法定要件を満たす適格簡易請求書を交付している場合には、同じ取引について別途交付する領収書等に、消費税額や税率等を重ねて表示しなくても問題ないと考えられます。

ただし、買手側が仕入税額控除を受けるには、要件を満たす書類を保存する必要があります。


消費者向け取引が多い事業者ほど、現場での対応が重要です。

レシート・領収書の様式、登録番号の表示、簡易インボイスの発行方法、スタッフ向けの説明ルールを整備し、一般消費者向け取引と事業者向け取引の双方に対応できるようにしておきましょう。


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