事業報告と有報との一体開示の検討
- 安田 亮
- 3 日前
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おはようございます!代表の安田です。
日本経済団体連合会(経団連)は、2025年5月13日、政府・与党に対して上場企業の開示規制緩和に関する提言を公表しました。特に注目すべきは、「有価証券報告書(有報)」の位置づけ明確化と、それに伴う「会社法上の事業報告等の開示免除」の要請です。
■ 現状:有報と事業報告は別モノ扱い
現在の開示制度では、
金融商品取引法に基づく「有報」
会社法に基づく「事業報告・計算書類等」
が別個の書類として作成・提出されており、記載内容が重複することが多く、企業側の負担や投資家の混乱を招く要因ともなっていました。
■ 経団連が提言する主な改革案(抜粋)
今回、経団連が求めた提言内容のポイントは以下のとおりです
有報の位置づけを会社法上も明確化 → 「有報が会社法上の報告書類と同等」と整理すれば、重複排除が可能に。
有報提出会社に対する事業報告等の開示免除 → 有報提出企業に対し、会社法上の「事業報告」や「附属明細書」の作成・交付を不要とする。
書面交付の完全電子化、単体決算の開示廃止 → 電子開示を原則化し、紙ベースの配布義務を撤廃。
総会開催日の後ろ倒し環境の整備 → サステナビリティ情報等の拡充に対応するため、決算後開示に余裕を。
株主提案権の要件引き上げ → 提案乱立防止のため、議決権1%以上などの要件見直しを提言。
総会開催の免除(一定条件下) → 賛否が事前に明らかな場合、開催自体を不要とする制度設計も提案。
■ 背景:法務省・金融庁も制度見直し中
この経団連提言は、現在進行中の以下の制度改正議論とリンクしています:
金融庁:連絡協議会にて「総会前の有報開示」に向けた環境整備中
法務省:法制審において会社法改正を審議中(開示・総会関連含む)
また、2025年6月に公表予定の「骨太の方針」「新しい資本主義のグランドデザイン」にこれらの改革方針が盛り込まれる見込みです。
■ 実務影響:会計監査人や税理士にも関係あり
今後、有報と会社法上の事業報告が一体化されることで、
決算書類の作成手続きの簡素化
株主総会資料の見直し
電子交付対応の迅速化
など、実務上の効率化が進むことが期待されます。税務顧問や開示支援に携わる税理士・公認会計士にとっても見過ごせない動向です。
■ まとめ:開示制度は重複排除へ進化中
経団連の提言は、「形式主義からの脱却」と「開示の本質重視」を促す大きな一歩です。
上場企業はもちろん、IPO準備企業もこの動きを注視する必要があります。

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