東証が「IR体制の整備」を義務化
- 安田 亮
- 3 時間前
- 読了時間: 3分
おはようございます!代表の安田です。
東京証券取引所は2025年7月、すべての上場企業に対しIR(投資家向け広報)体制の整備を義務化しました。これにより、上場企業はコーポレート・ガバナンス報告書に「IR部署(担当者)の設置状況」を明記し、さらに補足欄に自社のIR体制の詳細を記載することが求められます。
この要請に違反した場合は、東証の「実効性確保措置」(改善要請や公表措置等)の対象となる可能性があります。単なる形式的な部署設置にとどまらず、実質的に機能するIR体制の構築が求められる点がポイントです。
1.背景にある「投資家の声」
東証が公表した「IR体制・IR活動に関する投資者の声」(2025年7月)によると、多くの投資家が現状の企業IR活動に対して次のような不満を示しています。
管理部門や広報部門がIRを兼務しており、面談調整が難しい
経営陣とIR担当者の説明内容に食い違いがある
IR説明会のオンライン配信や質疑応答の公開を求める声が多い
こうした課題を踏まえ、東証は企業に対して「体制整備だけでなく、投資家対応の質の向上」を求めています。
2.投資家から評価されるIR体制の特徴
同資料では、投資家から高く評価された企業の事例も紹介されています。そこから見える「評価されるIR体制」の共通点は次のとおりです。
① 経営戦略・ビジョンを中長期的視点で発信している
② トップマネジメント自らが投資家と対話している
③ 投資家の意見・要望を経営課題としてフィードバックしている
④ 説明資料・Q&Aの透明性を高めている(IR会見の動画・議事録公開など)
単なる情報提供にとどまらず、「投資家との対話を経営の一部に組み込む姿勢」が求められています。
3.実務担当者が取るべき対応ポイント
IR体制の整備にあたっては、経理・財務部門や経営企画部門が中心となって動くケースが多く見られます。今後の実務対応のポイントを以下に整理します。
4.「形式的IR」から「経営に活かすIR」へ
IR体制の整備は、単なるガバナンス対応ではなく、企業価値を高めるための投資家対話の仕組みと捉えるべきです。東証は「投資家との建設的対話を通じて、企業価値を持続的に高めること」を上場企業の責務と位置付けています。
今後は、以下のような「実質的IR」への転換が企業評価のカギになります。
経営計画・サステナビリティ戦略を自らの言葉で語る
投資家からの意見を経営判断に反映させる
IR情報を会計・非財務情報を一体化して開示する(統合報告書の活用など)
5.公認会計士からのコメント
上場企業にとってIR活動は、もはや「広報業務の一環」ではありません。投資家・アナリストとの対話を通じて、企業の信頼性と資本コストの低減につながる重要な経営戦略の一部です。
会計・税務の視点からも、
開示資料の整合性(有価証券報告書・統合報告書・決算短信)
非財務情報(サステナビリティ・人的資本情報)との連携
といった観点で、経理部門とIR部門の連携強化が不可欠です。
形式的な「部署設置」にとどまらず、「経営と投資家をつなぐIR」体制の実効性をどう確保するかが今後の課題といえるでしょう。


