長期未払法人税等と時価開示の取扱い
- 安田 亮
- 3 日前
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おはようございます!代表の安田です。
本日は、長期未払法人税等と時価開示に関して、実務上の留意点を整理してご紹介します。
1.背景:グローバル・ミニマム課税と新たな会計処理
2024年度以降、日本でも グローバル・ミニマム課税制度(GloBEルール) が導入され、企業の税金計上における会計処理や注記が変化しつつあります。これを受けて、企業会計基準委員会(ASBJ)は実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」を公表しました。
この報告の開発過程では、「未払法人税等を時価開示の対象に含めるべきか否か」について意見が分かれていました。
2.時価開示をめぐる実務のばらつき
従来、未払法人税等を「金融負債」として時価開示に含めるかどうかについては、企業間で対応が分かれていました。
一部の企業は「金融商品時価開示適用指針」に基づき、金融負債の一部として開示
他方では「短期間で決済されるため、帳簿価額が時価に近似する」として開示を省略する実務も見られました
ASBJは今回の検討において、「本件はプロジェクトの範囲外」として、特段の見直しは行なわないとの立場を明確にしました。
3.「長期未払法人税等」の登場と注記の現状
グローバル・ミニマム課税に関する新しい取扱いでは、支払期限が貸借対照表日の翌日から起算して1年を超える未払法人税等については、固定負債区分に「長期未払法人税等」として表示することとされました。
実際の2025年3月期の有価証券報告書では、次のような事例が確認されています。
新東工業株式会社(東証プライム):重要性が乏しいため注記を省略
タムラ製作所(東証プライム):同様に重要性を理由に注記省略
このように、多くの企業では金額的重要性が低いため、注記省略の判断が一般的です。
4.実務上の留意点
(1)「重要性の判断」がカギ
時価開示の要否は、金額的な重要性と企業の開示方針に依存します。会計監査人との協議を通じて、合理的な基準を設けておくことが望ましいでしょう。
(2)グローバル・ミニマム課税対応の一環として整理
ミニマム課税による負担額は、通常の法人税等と異なる性質を有するため、税効果会計や開示区分との整合を図る必要があります。
(3)開示省略の際の記載
「重要性が乏しいため注記を省略している」旨を明示しておくことで、投資家への説明責任を果たしつつ、開示負担を軽減できます。
5.まとめ
長期未払法人税等の時価開示については、統一的なルールが設けられていない現状があります。今後、グローバル・ミニマム課税制度の本格運用に伴い、企業ごとの開示方針や実務対応に一層の透明性が求められるでしょう。


