相続税の計算に使われる「平均余命」
- 安田 亮
- 8月16日
- 読了時間: 2分
おはようございます!代表の安田です。
2025年度税制改正により、相続税法に関する重要なルールが見直されました。その中でも注目したいのが、物納制度における物納許可限度額の算定に関して、「平均余命」の計算方法が明確化された点です。この記事では、2種類の生命表の違いと、相続税との関係についてわかりやすくご紹介します。
「生命表」ってなに?
生命表とは、「ある年齢の人があとどれくらい生きられるか(=平均余命)」や「死亡率」などを統計的に示したものです。日本では厚生労働省が次の2種類の生命表を作成・公表しています。
完全生命表:5年ごとの国勢調査データをもとに作成される、いわば確定版の生命表です。より正確なデータに基づいており、各種法律や制度における根拠資料とされることが多いです。
簡易生命表:毎年作成されるもので、速報性を重視した“概算版”のような位置づけです。推計人口や月次データを基にしています。
例えば、80歳男性の平均余命は次のように差があります(令和7年7月17日時点):
生命表の種類 | 平均余命 |
完全生命表 | 9.34年 |
簡易生命表 | 8.98年 |
このように、同じ年齢でも使用する生命表によって評価が変わるため、制度上の取扱いには注意が必要です。
相続税ではどちらを使う?
2025年度の税制改正では、物納制度の見直しにより、納付猶予の年数(延納年数)の上限が、申請者の平均余命までと定められました。この「平均余命」は、完全生命表に基づくものを使用することとされています。
また、以下のようなケースでも、完全生命表が参照されます。
終身定期金に関する権利の評価(相続税法第24条)
物納許可限度額の算定(相令17)
つまり、相続税においては、簡易な推計値ではなく、より信頼性の高い「完全生命表」が基本になるということです。
今後の注意点と実務対応
生命表の更新は、完全生命表が5年ごと、簡易生命表が毎年行われます。最新の完全生命表は令和4年に発表された「第23回生命表」で、次回は令和9年(2027年)3月ごろの公表予定とされています。
税務上の評価や申告においては、どの生命表に基づくデータを使うかによって税額や納付可能期間が変わってくることもあるため、実務では必ず最新版を確認するようにしましょう。
まとめ
相続税の一部算定では「完全生命表」に基づく平均余命を使用。
簡易生命表との違いに注意し、評価計算や申告書作成時には情報源の確認が必須。
今後も法改正や統計の更新に注意して、適切な税務対応を行ないましょう。
