4月から住所変更登記が義務化|法人・個人の不動産所有者が押さえたい実務ポイント
- 安田 亮
- 5月22日
- 読了時間: 6分
おはようございます!代表の安田です。
2026年4月1日から、不動産の住所等変更登記の義務化が始まりました。これまで、住所や氏名、法人名や本店所在地の変更があっても、不動産登記上の変更手続は後回しになりがちでした。しかし、今回の制度改正により、法人・個人を問わず、不動産の所有権登記名義人は、一定期間内に変更登記を申請する必要があります。
税理士実務では、法人の本店移転、代表者交代に伴う住所変更、相続後の不動産管理などの相談の中で、登記の問題が後回しになっているケースを見かけます。今回の義務化は、単なる法務手続の変更ではなく、不動産を持つ法人や個人に共通して関係する実務上の新ルールといえます。
本日は、住所等変更登記の義務化について、制度の概要、期限、過料の考え方、そして実務で知っておきたいスマート変更登記まで、わかりやすく整理します。
住所等変更登記の義務化とは?
今回の制度は、令和3年の不動産登記法改正により導入されたもので、所有者不明土地の増加に対応するための施策の一つです。所有者不明土地の全国的な増加に伴う周辺環境の悪化などの社会問題を解決するため、これまで任意だった住所等変更登記を義務化するものだと説明されています。
対象となるのは、不動産の所有権の登記名義人です。氏名や住所に変更があった個人だけでなく、名称や本店所在地に変更があった法人も対象になります。
いつから義務化されたのか
住所等変更登記の義務化は、2026年4月1日から施行されています。
このため、2026年4月以後に住所変更や本店移転があった場合はもちろん、実はそれ以前の変更についても注意が必要です。ここが実務上とても大切なポイントです。
変更登記はいつまでに必要か
氏名(法人は名称)や住所に変更があった場合、所有権の登記名義人は変更日から2年以内に変更登記の申請が義務付けられるとされています。
たとえば、法人が本店を移転した場合や、個人が転居した場合には、その変更から2年以内に不動産登記上の住所変更申請をする必要があります。税務署や市区町村への異動届を出して終わりではなく、不動産登記簿の情報も別途更新しなければならないという点に注意が必要です。
施行日前の変更も対象になる
今回の義務化で見落としやすいのが、2026年4月1日より前の変更です。
施行日前に住所等を変更していた場合でも、施行後に変更登記を済ませていなければ義務化の対象となり、2028年3月31日までに変更登記をする必要があるとされています。
つまり、「昔の本店移転だから今回の制度とは関係ない」とは言えません。これまで変更登記をしていなかった法人や個人は、過去分も含めて見直しが必要です。
義務違反には過料の可能性もある
住所等を変更したにもかかわらず、正当な理由なく変更登記の申請を怠ったときは、5万円以下の過料の対象になります。
ここでいう過料は、税務上の加算税とは異なり、行政上の制裁として科されるものです。不動産を複数保有している会社や、相続で不動産を承継した個人にとっては、今後見過ごせないリスクになり得ます。
ただし、いきなり過料になるわけではない
もっとも、登記官が義務違反の事実を把握したとしても、直ちに裁判所への過料通知を行なうわけではないとされています。
過料通知が行われるのは、登記官が相当の期間を定めて義務の履行を催告したにもかかわらず、正当な理由なく、その期間内に申請や申出がされない場合に限られるとのことです。
この点からすると、制度としては一定の猶予や是正機会が用意されているといえます。ただし、だからといって放置してよいわけではなく、催告を受ける前に自主的に対応しておくのが基本です。
「正当な理由」がある場合とは?
「正当な理由」がある場合には、義務違反に係る過料を科されないとされ、その判断に関する主な事情も紹介されています。
具体例として、次の5つが挙げられています。
検索用情報の申出または会社法人等番号の登記がされているが、登記官の職権による変更登記手続がまだ行われていない場合
行政区画の変更などにより住所に変更があった場合
義務を負う本人に重病等の事情がある場合
DV被害者等で避難を余儀なくされている場合
経済的困窮により登記費用を負担する能力がない場合
もっとも、これらに該当しない場合でも、個別事案の具体的事情に応じて判断されるとしています。つまり、形式的に5類型だけで決まるわけではありません。
スマート変更登記とは?
今回の義務化とあわせて知っておきたいのが、スマート変更登記です。
これは申請手続の簡素化・合理化を図るための仕組みで、所有者が簡易な手続をした後、登記官が取得した一定の情報に基づいて、職権で住所等の変更登記を行なう制度です。
そして、職権による変更登記が行なわれた時点で、登記申請義務は履行済みとなるため、義務違反を避ける一つの方法として活用が考えられるとされています。
今後は、従来のように毎回すべてを手作業で申請するだけでなく、こうした制度も視野に入れた対応が重要になりそうです。
法人が特に注意したいポイント
法人の場合、個人よりも住所等変更登記を見落としやすい場面があります。たとえば、次のようなケースです。
本店移転登記はしたが、不動産登記簿上の住所変更をしていない
商号変更後に、所有不動産の名義変更登記が漏れている
吸収合併や組織再編の後に、不動産登記の整理が不十分
複数拠点や複数不動産があり、管理台帳と登記簿の整合が取れていない
個人でも相続や転居後は要注意
個人でも、不動産を持っている以上、今回の義務化は無関係ではありません。
特に注意したいのは、相続で不動産を取得した後や、長年住所変更登記をしていないままのケースです。
自宅だけでなく、賃貸不動産、実家の土地、相続した遊休地などについても、登記名義人の住所が古いままになっていることがあります。施行前の変更も対象になるため、「昔の住所のまま放置していた」というケースこそ見直しが必要です。
実務で今すぐ確認したいこと
今回の制度変更を踏まえると、法人・個人ともに、まずは次の点を確認しておくと安心です。
所有している不動産の登記名義人情報
現在の住所・名称・本店所在地と、登記簿記載との不一致の有無
過去の転居、本店移転、商号変更等で、未反映のものがないか
2026年4月1日以前の変更が未登記のまま残っていないか
スマート変更登記の活用が可能かどうか
このあたりを早めに点検しておけば、将来の催告や過料リスクを抑えやすくなります。
まとめ
2026年4月1日から、住所等変更登記の義務化が始まりました。
不動産の所有権登記名義人は、氏名・名称や住所の変更日から2年以内に変更登記を申請する必要があります。また、施行日前の変更でも未登記であれば2028年3月31日までに対応が必要です。
正当な理由なく申請を怠った場合は5万円以下の過料の対象となりますが、登記官が直ちに過料通知を行なうのではなく、まず催告を経る運用が示されています。さらに、スマート変更登記を利用して職権で変更登記がされれば、申請義務は履行済みとなります。
不動産登記は、税務や会計のように毎年見直すものではないため、つい後回しになりがちです。しかし、今回の義務化により、「そのうちやる」では済まない手続になりました。
法人・個人を問わず、不動産を所有している方は、まず登記簿上の住所や名称が現在の情報と一致しているかを確認しておくことをおすすめします。




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