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ASBJが「法人税等会計基準」改正案公表

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 15 分前
  • 読了時間: 6分

おはようございます!代表の安田です。


企業会計基準委員会(ASBJ)は2026年1月9日、企業会計基準公開草案第94号「法人税等に関する会計基準(案)」等を公表しました。


今回の改正案は、いわゆる「法人税等会計基準」の考え方を整理し直し、

  • どの税金が法人税等会計基準の適用対象なのか

  • それ以外の税金は、損益計算書のどこに表示すべきか

を原則ベースで定め直すものです。


住民税均等割や外国源泉税の表示区分を見直す内容も含まれており、決算書の表示・勘定科目の見直しが必要になる可能性があります。


本日は、改正案のポイントと実務への影響を、公認会計士の立場から整理します。


1. 改正案のねらい:「税金の種類」ではなく「性格」で区分

現行の法人税等会計基準は、

  • 法人税

  • 住民税

  • 事業税

といった個別の税目ごとに会計処理を定めるスタイルを取っています。

しかし近年は、

  • 新たな税目の創設

  • 既存税制の見直しや付加税の導入

など、制度変更のたびに会計基準の解釈が問題になるケースが増えました。

そこで改正案では、「法人税等会計基準の適用対象となる税金」を原則で定義し、それ以外の税金についても会計処理・表示を体系的に整理する」

という考え方に転換しています。


2. キー概念:「課税対象利益を基礎とする税金」

改正案では、まず税金を次の2つに大別します。

  1. 課税対象利益を基礎とする税金

  2. 上記に該当しない税金


2-1. 「課税対象利益を基礎とする税金」とは

定義は次のとおりです。


”その期の「課税対象利益」をベースに、課税当局のルールに従って計算される税金およびその付加税”


具体例としては、

  • 法人税

  • 住民税の法人税割

  • 事業税の所得割

などが挙げられています。

これら「課税対象利益ベースの税金」については、従来どおり法人税等会計基準の対象とし、繰延税金資産・負債の会計処理やP/Lでの表示方法も、基本的に現行を踏襲する方針です。

損益計算書では、

  • 税引前当期純利益(または損失)の直後に

  • 「法人税等」などの科目名でまとめて表示

するという現在の形式が維持されます。


3. 「課税対象利益を基礎としない税金」の取扱いと表示

一方、「課税対象利益を基礎とする税金」に該当しない税金として、改正案では次のような項目を例示しています。

  1. 住民税均等割、事業税の付加価値割・資本割

  2. 受取利息・受取配当金等に対する源泉所得税等

  3. 親会社・国内子会社が、外国法令に基づき納付する税金のうち、課税対象利益ベースではないもの

会計処理そのものは大きくは変わりませんが、損益計算書上の「表示区分」が見直される点が実務上のポイントです。


<3-1. 住民税均等割・事業税付加価値割・資本割>

これらは、従来「法人税、住民税及び事業税」に含めて表示しているケースが一般的でしたが、改正案では次のように変更されます。

  • 売上原価

  • 販売費及び一般管理費

  • 営業外費用

のうち、実態に応じた適切な区分に表示することが求められます。

→ つまり、「法人税等」ラインから切り離し、事業活動に伴うコストの一部として表示する方向に整理されます。


<3-2. 利息・配当に対する源泉所得税等>

受取利息や受取配当金に対して課される源泉所得税等の表示も整理されます。

ポイントは、

  • 外国税額控除等の「税額控除」の対象となる部分

  • 税額控除の対象とならない部分

を区分することです。


表形式で整理すると、概ね次のイメージです。

区分

税額控除を選択

P/Lでの表示例

税額控除の対象となる税額

する

「法人税等」などの科目に含めて表示

同上

しない

売上原価/販管費/営業外費用のうち適切な区分に表示

税額控除の対象とならない税額

原則として売上原価/販管費/営業外費用のうち適切な区分に表示

(例外)外国子会社配当の一部

「法人税等」などの科目に含めて表示

最後の行は、外国子会社配当益金不算入制度の適用を受ける配当に係る一部の外国源泉所得税で、 例外的に「法人税等」に含めて表示する取扱いが提案されています。


<3-3. 外国で納付するその他の税金>

親会社や国内子会社が海外で納付する税金のうち、「課税対象利益ベースでないもの」についても、原則は上記②と同様の考え方で表示します。


4. 適用時期と経過措置

改正案では、最終基準公表からおおむね1年経過後の期首から適用する方向が示されています。

  • 適用開始:最終基準公表後1年程度経過した日の属する年の4月1日以後開始する事業年度(連結会計年度)の期首

  • 早期適用:可能

  • 経過措置:初年度の比較情報について、住民税均等割の新しい表示区分への組替えは必須としない

→ つまり、初年度は当期のみ新基準で表示し、前期比較は従来表示のままでもよいという扱いです。


5. 実務への影響と、今から準備しておきたいこと

今回の改正案は、税効果会計の計算方法そのものよりも、「どの税金を法人税等として扱うか」「どの費用区分で表示するか」という表示・区分の整理が中心です。

とはいえ、実務では次の点で影響が出ると考えられます。


(1)科目区分・勘定コードの見直し

  • 「法人税等」勘定の内訳から、住民税均等割や事業税付加価値割・資本割を切り出す必要

  • 源泉所得税・外国税について、

    • 税額控除対象かどうか

    • 税額控除を選択するかどうかに応じて勘定区分を変える必要

→ ERP・会計システムの勘定科目、補助科目の設計見直しが想定されます。


(2)税務部門と経理部門の連携強化

  • 外国税額控除の適用判断

  • 源泉所得税の内訳管理(控除対象/非対象の区分)

  • 海外子会社配当にかかる外国源泉税の取扱い

など、税務判断に基づいてP/L表示区分が変わる項目が増えるため、決算プロセスの中で、税務・経理間の情報連携フローを整理しておく必要があります。


(3)開示影響の社内説明

  • 「法人税等」の金額が減少し、販管費等が増加する

  • 実効税率の見え方が変わる可能性

など、数値の見え方の変化について、経営層や監査役会への説明が求められる場面も想定されます。


6. まとめ:今後の法人税等会計は「性格別の整理」がキーワード

ASBJの改正案は、

  • 「課税対象利益を基礎とする税金」かどうかで大きく二分し、

  • それぞれの取扱いと損益計算書上の表示を体系的に整理する

という点で、今後の法人税等会計のベースとなる重要な動きです。


実務的には、

  • 住民税均等割・事業税付加価値割・資本割の表示区分変更

  • 源泉所得税・外国税の区分管理

  • 勘定科目体系・決算プロセスの見直し

といった対応が求められることになります。


当事務所では、

  • 改正案を踏まえた決算書表示・勘定科目の見直し

  • 外国税額控除や源泉税の区分管理方法の整理

  • 監査法人とのコミュニケーションに向けた論点整理

等についてのご相談も承っております。


自社決算への具体的な影響が気になる場合は、お早めにご相談ください。



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