「継続企業」の判断が変わります
- 安田 亮
- 1 時間前
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おはようございます!代表の安田です。
日本公認会計士協会(JICPA)は、監査基準報告書570「継続企業」に関する改正案(公開草案)を公表しました。
今回の改正は、国際監査基準(ISA570)の改正を踏まえたもので、2027年4月1日以後開始事業年度の監査から適用予定、すなわち 2028年3月期決算企業の監査から本格適用されます。
継続企業は「監査人だけの論点」ではなく、経営者の評価プロセスや開示内容に大きく影響する改正です。本記事では、企業側が特に注意すべきポイントを解説します。
1.改正の背景:国際基準との整合
今回の改正は、国際監査・保証基準審議会(IAASB)が改正したISA570「Going Concern」への対応が背景となっています。
近年、
経済環境の不透明化
企業倒産リスクの高まり
利用者(投資家等)からの説明責任の強化
を受け、継続企業の前提に関する情報の透明性向上が国際的に求められていました。
2.改正ポイント①:継続企業の「評価開始日」が変更
● 現行
評価開始日:期末日の翌日
評価期間:そこから 少なくとも12か月
● 改正案
評価開始日:財務諸表の承認日の翌日
評価期間:そこから 少なくとも12か月
「財務諸表の承認日」とは、注記を含むすべての財務諸表が完成し、権限ある者がその責任を認めた日を指します。
これにより、評価対象期間が実質的に後ろ倒しとなり、経営者には より新しい情報を踏まえた継続企業評価 が求められます。
■ 3.改正ポイント②:評価が行われない場合、意見不表明も
改正案では、経営者が求められる評価期間(承認日翌日から12か月)を評価しない場合の対応が明確化されています。
監査人は、経営者や監査役等と協議
それでも評価が行われない場合→ 十分な監査証拠が得られないと判断→ 意見を表明しない(ディスクレーマー)可能性がある
これは企業にとって極めて重大な影響を持ちます。
→「評価が不十分」=監査意見に直結という点は、経営者が特に意識すべきポイントです。
4.改正ポイント③:監査報告書の記載が大幅に拡充
● 重要な不確実性が「ない」場合でも新たな記載欄を設置
改正案では、継続企業の前提に関する重要な不確実性がない場合でも、監査報告書に「継続企業の前提」欄を新設することが提案されています。
主な記載内容は次のとおりです。
経営者が継続企業を前提として財務諸表を作成することが適切と結論付けた旨
監査人が重要な不確実性を識別しなかった旨
監査人の結論は保証を与えるものではない旨
上場企業の場合、経営者の重要な判断内容や、それを監査人がどのように検討したかといった説明も追加されます。
5.改正ポイント④:経営者確認書の記載も拡充
経営者確認書についても、次のような内容の記載が新たに求められます。
継続企業の前提に関する評価が、経営者が認識している すべての事象・状況を反映していること
それらを 監査人に漏れなく開示したこと
→ 経営者の説明責任が、文書面でもより明確に問われる形となります。
公認会計士の視点:企業が今から準備すべきこと
今回の改正を踏まえ、企業側では次の対応が重要になります。
継続企業評価のスケジュール見直し(承認日基準)
資金繰り計画・事業計画の精度向上
重要な前提・判断の文書化
監査人との早期コミュニケーション
特に、評価期間が後ろ倒しになることで、「翌期の資金繰り」や「借入条件」まで含めた検討がより重要になります。
まとめ
JICPAの今回の改正案は、単なる監査基準の技術的修正ではなく、
経営者の評価責任の明確化
監査報告書の情報量増加
利用者(投資家等)への説明強化
という、企業経営全体に影響する内容です。
2028年3月期からの適用を見据え、「その時になって対応」ではなく、今から評価体制を整えておくことが重要といえます。




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