FAXは電子取引に該当する? 電子帳簿保存法における保存方法を税理士が解説
- 安田 亮
- 2 日前
- 読了時間: 6分
おはようございます!代表の安田です。
電子帳簿保存法への対応が本格化してから、企業の経理現場では「この取引は電子取引に当たるのか」という確認が以前にも増して重要になっています。
特に、いまでも実務で使われることの多いFAXについては、判断に迷う会社が少なくありません。
たとえば、次のような疑問がよくあります。
FAXで届いた請求書は電子取引なのか
紙で出力して保存していれば問題ないのか
複合機のFAX機能を使っている場合はどうなるのか
ペーパーレスFAXは電子保存が必要なのか
このテーマは、見た目が同じFAXでも、機器の機能と実際の運用方法によって結論が変わるため、誤解が起こりやすい分野です。添付資料でも、電子取引制度とFAXの関係がコンパクトに整理されています。
今回は、FAXは電子取引に該当するのかという論点について、電子帳簿保存法の実務を踏まえて、税理士の視点からわかりやすく解説します。
1.まず確認したい「電子取引」の基本
改正後の電子取引制度では、電子取引を行なった場合、原則として電子データでの保存が義務付けられるとされています。令和4年1月から始まった制度改正では、従来のような書面出力保存による代替措置が廃止されたことが大きなポイントでした。
そのため、請求書や領収書、注文書などの授受方法が「電子取引」に該当するかどうかは、保存方法を決めるうえで非常に重要になります。
2.FAXは一律に電子取引になるわけではない
FAXは電話回線や機器を使うため、なんとなく「電子的なやり取りだから電子取引では」と思われがちです。
実際、電子取引は「取引情報の授受を電磁的方法により行う取引」と定義されているため、FAXによるやり取りも電子取引に該当しそうに見えると説明しています。
しかし、結論はそこまで単純ではありません。FAXが電子取引に該当するかどうかは、FAXの機能や使用状況によって異なると整理されています。
3.一般的なFAXは「書面取引」
電子帳簿保存法取扱通達7-8《ファクシミリの取扱いについて》を踏まえ、一般的なFAXについては「書面による取引があったものとして取り扱う」と示しています。
ここでいう一般的なFAXとは、書類などの原稿を読み取って相手の機器に送信し、受信側で印刷されるタイプのFAXです。
この場合は、送信者側も受信者側も、書面によって確認・保存することを前提としているため、電子取引ではなく書面取引として扱われます。
4.一般的なFAXなら紙保存で対応できる
一般的なFAXが書面取引に当たるということは、保存方法も電子データ保存ではなく、受信した書面を各税法の規定に従って保存すれば足りるということです。
つまり、昔ながらのFAX専用機や、送ったら相手先で紙に印字されることを前提とした運用であれば、電子帳簿保存法の電子取引保存ルールまで持ち込まなくてもよい、という整理です。
5.複合機のFAX機能は注意が必要
一方で、電子データの取出し・保存もできる複合機等のファクシミリ機能を用いる場合は、扱いが異なると説明しています。いわゆるペーパーレスFAXや、複合機内で受信データを保存できるタイプがこれに当たります。
この場合、同じ「FAX」であっても、電子データをどのように扱っているかによって、電子取引になるかどうかが変わってきます。
6.電子データ保存を前提にしているなら「電子取引」
電磁的記録としてデータの取出し・保存を前提とし、そのファクシミリ機能を用いて電子データの保存を行う場合は「電子取引」に該当すると明記しています。
つまり、FAX受信データを複合機やサーバー、共有フォルダなどに保存し、その電子データをもとに確認・管理しているのであれば、それは単なる紙のFAXではなく、電子取引として扱う必要があるということです。
この場合は、電子帳簿保存法のルールに従い、検索要件などの電子取引制度の要件を満たした形で保存しなければなりません。
7.同じ複合機でも紙運用なら電子取引ではない
ここが特に実務で大切なポイントです。電子データの取出し・保存ができる機能を持った複合機等であっても、電子データでの保存を行なわず、書面による出力を行っていることを通常としている場合には、「電子取引」に該当しないと整理しています。
つまり、機械の性能だけで自動的に電子取引になるわけではありません。大切なのは、実際にどう使っているかです。
同じ複合機でも、
受信データを保存して管理している → 電子取引
受信後すぐ紙に出して書面で管理している → 書面取引
という違いが生じ得るわけです。
8.判断の分かれ目は「使用状況」
FAXの税務対応で最も重要なのは、機器の名称ではなく使用状況です。FAXが電子取引に当たるかどうかは、その機能や使用状況によって異なるとされています。
そのため、経理担当者としては、「うちは複合機だから自動的に電子取引」あるいは「FAXだから全部紙保存でよい」と決めつけるのではなく、実際の業務フローを確認する必要があります。
9.会社が確認しておきたい実務ポイント
FAX対応で判断を誤らないためには、少なくとも次の点を確認しておくと安心です。
受信したFAXを紙で確認・保存しているのか
複合機やサーバー上に電子データとして保存しているのか
その電子データを日常的な確認・管理の基礎にしているのか
紙保存が通常運用なのか、それとも電子保存が通常運用なのか
電子保存している場合、検索要件など電帳法の要件を満たしているか
制度対応では、実態と保存ルールが一致していることがとても重要です。
10.実務でよくある誤解
このテーマでは、次のような誤解が起こりやすいです。
① FAXは全部電子取引
これは誤りです。添付資料では、一般的なFAXは書面取引として扱うとされています。
② 複合機のFAX機能なら全部書面取引
これも誤りです。電子データの取出し・保存を前提にしている場合は電子取引になります。
③ 複合機に保存機能があるだけで必ず電子取引
これも正確ではありません。保存機能があっても、通常は紙出力して書面保存しているなら電子取引には該当しないとされています。
まとめ
FAXによる取引情報のやり取りが電子取引に該当するかどうかは、FAXの機能や使用状況によって異なります。
一般的なFAXのように、送信・受信後に書面で確認・保存する前提のものは「書面取引」として扱うと示されています。
一方で、電子データの取出し・保存ができる複合機等のファクシミリ機能を用い、実際に電子データの保存を行なう場合には「電子取引」に該当します。その場合は、検索要件など電子帳簿保存法上の要件を満たして保存する必要があります。
ただし、同じ複合機であっても、通常は紙出力して書面で保存している場合には電子取引には該当しないという整理です。
FAXは古い手段に見えても、電子帳簿保存法では意外と判断が分かれる論点です。
だからこそ、「FAXかどうか」ではなく、「どのように受信し、どのように保存しているか」まで確認して運用を決めることが大切です。




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