後期高齢者医療に金融所得を反映へ|確定申告との関係と2029年開始案を解説
おはようございます!代表の安田です。
上場株式の配当などを確定申告すると、税金だけでなく、後期高齢者医療の保険料や医療機関の窓口負担に影響する場合があります。こうした申告の有無による負担の違いを見直すため、金融所得を把握する仕組みが改正されました。
制度改正の法律は公布されていますが、金融機関によるオンライン提出の開始と保険料等への初回反映は別の時点です。令和8年10月に示されたスケジュール案を踏まえ、本人やご家族が確認したい点を整理します。
金融所得の申告が医療保険の負担に影響する理由
後期高齢者医療制度は、原則として75歳以上の人などが加入する医療保険制度です。窓口負担は所得等に応じて1割・2割・3割に区分され、保険料も所得等を基に計算されます。具体的な負担の判定には世帯の状況なども関係します。
金融所得とは、株式の配当や譲渡益など、金融商品への投資から生じる所得です。預金残高や保有株式の時価といった資産額とは区別して考えます。今回の仕組みは、法定調書などに記載された所得情報を負担の判定に反映するものです。
現行では、申告された上場株式の配当等は市町村が所得情報を把握できます。一方、源泉徴収により課税が終了し、申告されなかった一定の金融所得は把握されないため、同程度の所得でも医療保険の負担が異なる場合があります。
公布済みの改正法と、今後の実施日程を分けて理解する
令和8年6月5日に公布された健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)には、金融所得を保険料や窓口負担割合の判定に公平に反映する仕組みが盛り込まれています。金融機関等が税務署に提出する一定の法定調書について、後期高齢者医療広域連合にもオンラインで報告する仕組みです。
法定調書は、配当などの支払内容を法律に基づき報告する書類です。
後期高齢者医療広域連合は、都道府県ごとに制度の運営を担う組織で、こうした情報を利用して申告の有無による差を是正します。
2029年1月の提出開始と8月の初回反映が案として示された
令和8年10月16日の医療保険部会では、次のスケジュール案が示されました。以下の日程は、同部会資料の案として読んでください。
時期 | 資料で示された内容 |
|---|---|
2026年6月5日 | 改正法の公布 |
2029年1月(案) | 金融機関等によるオンライン提出義務化の施行 |
2029年8月(案) | 2028年分の年単位の金融所得を記載した調書を初回反映 |
2030年8月以降(案) | 対象となるすべての法定調書の金融所得を反映 |
初回は、令和11年1月末に提出される、令和10年分の年単位の金融所得を記載した法定調書を使う想定です。令和12年8月以降は、配当等の支払調書を含む対象のすべての調書へ反映を広げる案です。
このように、金融所得が生じる年、金融機関が報告する年、負担へ反映する時期にはずれがあります。「2029年開始」とだけ覚えると、どの年の所得が対象になるのかを取り違えやすいため、年ごとの整理が必要です。
確定申告の判断は税額と社会保険の両方で行なう
改正後の仕組みは、対象となる金融所得を、確定申告をしたかどうかにかかわらず反映する方向です。ただし、これによってすべての人に確定申告が新たに義務付けられると理解するのは適切ではありません。所得税の申告が必要かどうかは、口座区分や取引内容などから別に判断します。
現在の申告を検討する場面でも、所得税の還付額だけを見て決めず、住民税、保険料、窓口負担割合への影響を合わせて確認することが大切です。特定口座の損益や配当などの資料をそろえ、どの所得を申告するかを税理士と整理しましょう。
実務上は、本人だけでなく家族が申告を支援する場合もあります。「税金が戻るから」と申告内容を決める前に、現在の保険料通知や負担区分と、申告によって変わる所得情報を確認することをおすすめします。実際の負担への影響は、加入する広域連合や市町村の窓口にも確認してください。
今から保管しておきたい資料
制度実施までの準備として、次の資料をまとめておくと相談しやすくなります。これは日常の管理のための提案であり、新たな届出義務を示すものではありません。
金融機関ごとの口座区分と年間取引報告書
配当等の支払通知書と確定申告書の控え
後期高齢者医療の保険料額・負担区分が分かる通知
年金や事業所得など、金融所得以外の所得が分かる資料
公表されたスケジュール案に沿って準備は進められますが、実施前には政令・省令や広域連合の案内を確認しましょう。現時点の案を根拠に、将来の負担額が確定したものとして資金計画を組むことは避けたいところです。
まとめ
後期高齢者医療では、確定申告の有無にかかわらず一定の金融所得を負担へ反映する仕組みが設けられました。2029年1月のオンライン提出開始、同年8月の初回反映は、令和8年10月時点のスケジュール案です。申告の判断は税額と医療保険の影響を合わせて行い、今後の正式な実施日程を確認してください。
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【この記事の執筆者】
安田 亮(公認会計士・税理士)
安田亮公認会計士・税理士事務所 代表
京都大学経済学部在学中に公認会計士試験に合格。有限責任 あずさ監査法人、株式会社神戸製鋼所での実務経験を経て、2018年に神戸市で独立。
現在は、中小企業から上場企業に対する税務顧問、決算支援、税効果会計、連結決算、新リース会計基準への対応、組織再編、補助金・助成金に関する支援などを行なっています。また、金融機関や大手企業が運営する税務・会計・経営分野のWebメディアにおいて、記事の執筆・監修にも携わっています。
事務所ブログでは、税制改正や会計基準、経営実務に関する情報を、専門用語をできるだけかみ砕き、経営者や経理担当者の方に役立つ形で解説しています。




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