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「課税対象利益を基礎としない税金」の表示

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 3 時間前
  • 読了時間: 5分

おはようございます!代表の安田です。


企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した法人税等会計基準の改正案では、税金の性格に応じて、

  • 「課税対象利益を基礎とする税金」

  • 「課税対象利益を基礎としない税金」

に区分したうえで、それぞれの会計処理・表示方法を整理し直す方針が示されています。


この考え方は、損益計算書上の表示にもそのまま反映されることとなり、住民税の均等割や外国源泉税など、一部の税金については表示区分の変更が必要になります。


公認会計士の立場から、改正案が触れているポイントをかみ砕いてご説明します。


1. 「課税対象利益を基礎としない税金」とは何か

改正案では、まず法人税等会計基準の適用対象を整理するため、税金を次の二つに区分しています。

  • 課税対象利益を基礎とする税金

    • いわゆる法人税、地方法人税、法人事業税(所得割)など、「税務上の所得(課税所得)」をベースに計算される税金

  • 課税対象利益を基礎としない税金

    • 均等割のように「資本金や従業者数」を基準とする税金

    • 受取配当金や利息に対する外国源泉所得税など、「特定の取引金額」を基準に課される税金 など


このうち②に該当するものについては、これまで慣行的に「法人税、住民税及び事業税」に含めて表示してきた項目も、損益計算書上の区分を見直すことが検討されています。


2. 住民税「均等割」はP/Lのどこに表示すべきか

典型例が住民税の均等割です。

均等割は、課税標準が「利益」ではなく、主に資本金や従業員数で決まる税金であることから、ASBJの改正案では「課税対象利益を基礎としない税金」に該当すると整理されています。そのため、損益計算書上は、従来のように「法人税、住民税及び事業税」の一部として包括的に表示するのではなく、

  • 売上原価

  • 販売費及び一般管理費

  • 営業外費用

などのうち、実態に応じた区分で表示する方向が示されています。


例えば、

  • 製造部門の人員数を基準に負担させているのであれば「売上原価」

  • 本社管理部門に紐づく部分は「販売費及び一般管理費」

といったように、「どの活動に紐づくコストなのか」を勘案して表示区分を決めることが想定されます。


3. 外国子会社配当の外国源泉税は「連結」と「個別」で考え方が違う

次に論点となるのが、外国子会社からの配当金にかかる外国源泉所得税です。


<3-1. 連結財務諸表の観点>

外国子会社から受け取る配当金について、いわゆる外国子会社配当益金不算入制度の適用を受けるケースでは、連結財務諸表の観点から見ると、

  • 外国子会社が稼いだ利益

  • それを原資とする配当

  • その配当に対して課された外国源泉所得税

というつながりがあるため、グループ全体としては「連結上の利益に対する税金」と考えることができます。このため、改正案では課税対象利益を基礎とする税金に該当すると整理されています。


<3-2. 親会社個別財務諸表の観点>

一方、親会社の個別財務諸表から見ると、

  • 親会社が受け取る配当金

  • その配当金の額を基準に課される源泉所得税

という関係に過ぎず、親会社の「課税所得」に直接紐づくものではありません。

この観点に立つと、課税対象利益を基礎としない税金という整理になります。


4. 連結と個別で表示区分が違ってしまう問題と、その解決策

原則どおりに整理すると、

  • 連結財務諸表:→ 外国子会社配当の源泉税は「法人税等」の一部

  • 個別財務諸表:→ 同じ源泉税は「法人税等」からは切り離し、売上原価・販管費・営業外費用などに表示

という、連結と個別で表示区分が異なる状況が生じます。


しかし、実務上は、

  • 同じ税金について表示区分が異なると利用者に分かりにくい

  • グループ連結決算の際に、個別から連結への組替仕訳が増える

といった問題が予想されます。


このため改正案では、利用者の理解や実務負担を考慮し、連結財務諸表・個別財務諸表のいずれにおいても、当該外国源泉所得税は「法人税等」などの適切な科目に含めて表示することが提案されています。


つまり、「原則的な考え方」だけでなく、実務上の便宜と説明可能性を踏まえた例外的な扱いが認められる方向です。


5. 実務担当者が今から準備しておきたいこと

今回の改正案が最終化・適用されると想定した場合、企業としては次のような準備が必要になります。

(1)勘定科目・補助科目の整理

  • 住民税均等割

  • 事業税の一部(付加価値割・資本割等を採用している自治体の場合)

  • 外国源泉所得税

など、「法人税等」から切り出すべき税金について、勘定科目・補助科目レベルで区分できるようにしておく必要があります。


(2)部門別配賦の方針決定

均等割などを売上原価・販管費・営業外費用にどのような基準で配賦するか、社内ルールとして明文化しておくことが望まれます。

  • 人員数ベースでの配賦

  • 売上高・総資産などをベースにした配賦

など、自社の実態に応じて合理的な基準を検討してください。


(3)連結決算プロセスへの影響確認

外国源泉所得税の表示については、連結・個別で同一の区分とする提案がなされていますが、

  • 現行のシステム設定

  • 連結パッケージの様式

  • 連結仕訳の組替えロジック

などに影響が出ないか、監査法人やシステム担当と協議しながら早めに確認することをお勧めします。


6. まとめ:税効果会計「以外」の部分でも、税金の見せ方が変わる

ASBJの法人税等会計基準改正案では、税効果会計の技術的な部分だけでなく、

  • どの税金を「法人税等」として扱うのか

  • どの税金は、事業コストとしてP/Lに表示するのか

という損益計算書の見せ方そのものに踏み込んだ整理が進められています。

特に、

  • 住民税均等割などの「利益と無関係な税金」

  • 外国子会社配当の源泉税のように、「連結と個別で見え方が変わる税金」

については、会計方針・注記方針を含めた検討が必要です。


当事務所では、

  • ASBJ改正案を踏まえた勘定科目体系の見直し

  • 連結・個別財務諸表における税金の表示方針の整理

  • 監査法人とのコミュニケーションに向けた事前論点整理

などについて、ご相談を承っております。会計基準改正に伴う自社決算への影響が気になる場合は、お気軽にお問い合わせください。



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