のれん非償却の選択制導入の議論
- 安田 亮
- 11 分前
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おはようございます!代表の安田です。
2025年5月30日、経済同友会とスタートアップ関連13団体、企業経営者有志138名が連名で、のれんの会計処理見直しに関する要望書を財務会計基準機構(FASF)に提出しました。要望の中心は、「のれんの非償却を選択制として認めること」と、「のれん償却費の会計処理区分の見直し」です。
■ 提案の背景:M&Aと成長企業支援の観点から
本提案は、スタートアップや成長企業によるM&Aを促進する観点からまとめられたものです。現行の日本基準では、のれんは一定期間(例:20年以内)で定期償却され、営業費用として損益計算書に反映されます。
しかし、国際会計基準(IFRS)では、のれんは非償却で、毎期減損テストにより評価される仕組みとなっており、日本の定期償却制度は、次のような課題を抱えています:
国際比較が難しい(IFRSとの整合性に欠ける)
営業利益が過小評価されやすくなる
M&Aの積極性を損なう要因となる
キャッシュ・フローに影響しない費用であっても、PL上は営業費用に計上される
■ 要望の内容:2つの改革ポイント
経済同友会らがFASFに提出したテーマ提案は、次の2点に集約されます:
① のれんの非償却を導入(選択制)→ のれんの定期償却制度に加え、非償却を選択できる制度とするよう要望。2027年度までの制度化を見据えています。
② のれん償却費の会計上の区分見直し→ 現在は営業費用として計上されているが、営業外費用や特別損失としての分類変更を提案。こちらは2026年度に結論を得ることを要望。
このうち②は、特に営業利益ベースでの評価が主流である日本の資本市場において、個人投資家への誤認防止の観点でも重要視されています。
■ 制度導入の流れ:FASF・ASBJのプロセス
提出されたテーマは、FASFが開催する企業会計基準諮問会議(年3回:3月、7月、11月)で新規テーマとして採択されるかどうかがまず審議されます。
採択されれば、企業会計基準委員会(ASBJ)が新たな会計基準の開発を行い、公開草案(ED)を経て正式な基準となる見通しです。なお、必ずしもすべての提案が審議・採択されるとは限らず、優先順位等をもとに取捨選択がなされます。
■ 今後の注目点:制度の行方と実務影響
のれん会計の見直しが実現すれば、M&A戦略を積極的に展開している企業やスタートアップにとっては追い風になる可能性があります。一方で、会計処理の選択肢が増えることにより、会計方針の選定や開示義務、監査対応など実務的な対応が複雑化する懸念もあります。
企業側としては、
M&Aを計画・実行する際のPL影響の予測
EBITDAなど非GAAP指標の補足開示の検討
開示方針の文書化と監査法人とのすり合わせ
といった対応が求められることになるでしょう。

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