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キャリアアップ助成金とは?正社員化・賃上げ・社会保険適用への活用ポイントを解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 2 日前
  • 読了時間: 10分

こんばんは!代表の安田です。


パート、アルバイト、契約社員、派遣社員など、いわゆる非正規雇用の労働者を雇用している事業主にとって、正社員化や処遇改善は重要な経営課題です。


一方で、正社員転換や賃上げ、賞与・退職金制度の導入、社会保険の適用拡大には、人件費や制度整備の負担も伴います。


そのような取組を支援する制度が「キャリアアップ助成金」です。

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者などの企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善に取り組む事業主に対して支給される助成金です。


本日は、キャリアアップ助成金の概要、主なコース、助成額、申請の流れ、注意点について、公認会計士・税理士の視点からわかりやすく解説します。


キャリアアップ助成金とは

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善に取り組む事業主を支援する助成金です。


対象となる労働者は、主に次のような方です。

  • 有期雇用労働者

  • 短時間労働者

  • 派遣労働者

  • 無期雇用労働者のうち一定の要件を満たす方

  • 障害のある有期雇用労働者等


制度の目的は、単に助成金を支給することではありません。非正規雇用労働者の待遇改善、雇用の安定、人材定着、賃上げを促進することにあります。


そのため、助成金を受けるには、就業規則や賃金規定の整備、キャリアアップ計画の作成、賃金台帳・出勤簿などの証拠書類の保存が重要になります。


主なコース

キャリアアップ助成金は、大きく分けると「正社員化支援」と「処遇改善支援」に分かれます。令和8年度時点の主なコースは、次のとおりです。


  • 正社員化コース

正社員化コースは、有期雇用労働者等を正社員に転換した場合に活用できるコースです。

たとえば、契約社員やパートタイマーとして雇用していた労働者を、就業規則等に基づいて正社員へ転換するケースが該当します。

中小企業の場合、一定の要件を満たす有期雇用労働者を正社員化すると、1人あたり最大80万円の助成を受けられる場合があります。無期雇用労働者を正社員化する場合は、助成額が異なります。


また、正社員転換制度を新たに規定した場合や、多様な正社員制度を新たに設けて転換した場合には、加算の対象となることがあります。


ただし、正社員化コースでは、単に雇用契約書の名称を変えるだけでは不十分です。

就業規則等に正社員転換制度が明記されていること、転換前後で雇用区分や労働条件が明確に異なること、正社員転換後6か月分の賃金を支払っていること、転換前6か月と比較して賃金が一定以上増額していることなどが重要です。


  • 障害者正社員化コース

障害者正社員化コースは、障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換した場合に活用できるコースです。


障害者雇用の安定や職場定着を目的とした制度であり、対象労働者の障害区分や転換内容に応じて助成額が異なります。


通常の正社員化コースとは要件や助成額が異なるため、対象者がいる場合は、別途要件を確認する必要があります。


  • 賃金規定等改定コース

賃金規定等改定コースは、有期雇用労働者等の基本給に関する賃金規定等を改定し、一定割合以上増額した場合に活用できるコースです。


令和7年度資料では、基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定を適用した場合に助成対象となるとされています。


助成額は、賃金の増額率に応じて異なります。たとえば、3%以上4%未満、4%以上5%未満、5%以上6%未満、6%以上といった区分により、1人あたりの助成額が変わります。


このコースは、パートや契約社員の基本給を引き上げたい場合に検討しやすい制度です。

ただし、賃金規定等の整備、改定前後の賃金額、対象者の範囲、実際の支給実績を明確にしておく必要があります。


  • 賃金規定等共通化コース

賃金規定等共通化コースは、有期雇用労働者等と正規雇用労働者との共通の賃金規定等を新たに規定し、適用した場合に活用できるコースです。


たとえば、パート・契約社員と正社員で別々だった賃金制度について、職務内容や能力等に応じた共通の賃金テーブルを導入するようなケースが考えられます。


このコースは、同一労働同一賃金への対応や、非正規雇用労働者の待遇改善を進めたい企業に向いています。中小企業の場合、1事業所あたり60万円が助成される場合があります。


  • 賞与・退職金制度導入コース

賞与・退職金制度導入コースは、有期雇用労働者等を対象に、賞与または退職金制度を新たに導入し、実際に支給または積立てを行った場合に活用できるコースです。


これまで正社員には賞与や退職金制度がある一方で、パート・契約社員には制度がなかったという企業では、処遇改善の一環として検討できます。


中小企業の場合、1事業所あたり40万円が助成される場合があります。賞与制度と退職金制度を同時に導入した場合には、加算の対象となることがあります。


  • 短時間労働者労働時間延長支援コース

令和8年度では、年収の壁への対応として、短時間労働者労働時間延長支援コースが設けられています。


このコースは、有期雇用労働者等が新たに社会保険の適用対象となる際に、労働時間の延長等により労働者の収入を増加させる取組を行った事業主を支援するものです。


従来は、社会保険適用時処遇改善コースが設けられていましたが、令和8年度の最新情報では、短時間労働者労働時間延長支援コースが新設されています。


社会保険の適用拡大により、従業員が手取り減少を懸念して労働時間を抑える、いわゆる「年収の壁」の問題が生じることがあります。このコースは、そのような場面で、労働時間の延長や収入増加を後押しする制度といえます。


申請前にキャリアアップ計画の提出が必要

キャリアアップ助成金で非常に重要なのが、「キャリアアップ計画」の提出です。


キャリアアップ助成金を活用するには、各コースの取組を実施する前日までに、キャリアアップ計画を作成し、管轄の都道府県労働局等に提出する必要があります。


ここを間違えると、たとえ実際に正社員化や賃上げを行なっていても、助成金の対象外となる可能性があります。


たとえば、契約社員を正社員に転換した後で、「助成金が使えるらしい」と気づいてキャリアアップ計画を提出しても、原則として間に合いません。


助成金は、事後的に思いついて申請できるものではなく、事前に計画を提出し、その計画に沿って取組を実施する必要があります。


申請の大まかな流れ

キャリアアップ助成金の一般的な流れは、次のとおりです。

  1. 自社で活用できるコースを確認する

  2. 就業規則や賃金規定を確認する

  3. キャリアアップ計画を作成する

  4. 取組実施日の前日までにキャリアアップ計画を提出する

  5. 就業規則等を改定する

  6. 正社員転換、賃金改定、制度導入等を実施する

  7. 取組後6か月分の賃金を支払う

  8. 支給申請書と添付書類を提出する

  9. 労働局で審査が行われる

  10. 支給決定後、助成金が入金される


支給申請の期限にも注意が必要です。

原則として、取組後6か月分の賃金を支払った日の翌日から起算して2か月以内に支給申請を行う必要があります。


この期限を過ぎると、要件を満たしていても申請できなくなる可能性があります。


必要となる主な書類

キャリアアップ助成金の申請では、多くの書類が必要になります。

主な書類としては、次のようなものがあります。

  • キャリアアップ計画書

  • 支給申請書

  • 事業所確認票

  • 就業規則または労働協約

  • 賃金規定

  • 雇用契約書または労働条件通知書

  • 出勤簿またはタイムカード

  • 賃金台帳

  • 賃金支払いを確認できる資料

  • 登記事項証明書や会社案内等

  • 対象労働者の雇用保険被保険者資格に関する資料

  • 各コースごとに求められる添付書類


特に、就業規則、雇用契約書、出勤簿、賃金台帳の整合性は重要です。

助成金申請では、実際に制度が導入され、対象労働者に適用され、賃金が支払われていることを資料で確認されます。


書類上の整合性が取れていないと、審査で確認事項が増えたり、不支給となったりする可能性があります。


解雇等による離職者がいる場合は要注意

キャリアアップ助成金では、一定の解雇等がある場合、支給対象外となることがあります。

特に注意すべきなのが、雇用保険の離職区分「1A」または「3A」に該当する離職者です。

離職区分1Aは、解雇等による離職を指します。


離職区分3Aは、退職勧奨のほか、事業縮小、賃金の大幅低下などによる正当理由のある自己都合離職等を指します。


たとえば、正社員化コースでは、一定期間において、このような離職理由による離職者の割合が一定基準を超えている場合、その他の要件を満たしていても助成金の対象外となる可能性があります。


そのため、キャリアアップ助成金を検討する際は、対象労働者の条件だけでなく、会社全体の離職状況や解雇・退職勧奨の有無も確認する必要があります。


就業規則・賃金規定の整備が重要

キャリアアップ助成金では、就業規則や賃金規定の整備が非常に重要です。


たとえば、正社員化コースでは、正社員転換制度が就業規則等に規定されていることが必要です。


また、賃金規定等改定コースや賃金規定等共通化コースでは、賃金規定の内容が助成金の要件に合っているかが確認されます。


口頭で「正社員にします」「賃金を上げます」と伝えるだけでは足りません。

制度として就業規則等に明記され、実際にその制度に基づいて運用されている必要があります。


特に、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成・届出義務があります。助成金申請のためだけでなく、労務管理全体の観点からも、就業規則や賃金規定を整備しておくことが大切です。


税務上の取扱い

キャリアアップ助成金を受け取った場合、法人であれば原則として収益に計上され、法人税の課税対象となります。


個人事業主の場合も、原則として事業所得の収入金額に含まれます。

助成金は「非課税の収入」と誤解されることがありますが、通常は課税対象となる点に注意が必要です。


また、キャリアアップ助成金は、設備投資に対する補助金ではなく、雇用・処遇改善に関する助成金です。そのため、固定資産取得補助金のような圧縮記帳の対象になる場面は通常想定しにくいと考えられます。


入金時期と対象となる取組の実施時期がずれることもあるため、決算期をまたぐ場合には、収益計上時期について会計処理を確認しておく必要があります。


キャリアアップ助成金が向いている事業主

キャリアアップ助成金は、次のような事業主に向いています。

  • 契約社員やパートを正社員化したい

  • 非正規雇用労働者の賃金を引き上げたい

  • パートや契約社員にも賞与・退職金制度を導入したい

  • 同一労働同一賃金への対応を進めたい

  • 短時間労働者の社会保険適用を進めたい

  • 人材定着や採用力向上のために処遇改善を行ないたい

  • 就業規則や賃金規定を整備したい


一方で、助成金を受けることだけを目的に制度を導入するのはおすすめできません。

正社員化や賃上げは、長期的な人件費の増加につながります。助成金は一時的な支援であり、継続的な人件費を賄い続けるものではありません。


そのため、会社の収益力、人員計画、給与水準、労務管理体制を踏まえて、無理のない制度設計を行うことが重要です。


まとめ

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を支援する助成金です。


正社員化コース、障害者正社員化コース、賃金規定等改定コース、賃金規定等共通化コース、賞与・退職金制度導入コース、短時間労働者労働時間延長支援コースなど、複数のコースが用意されています。


ただし、助成金を受けるためには、事前にキャリアアップ計画を提出し、就業規則や賃金規定を整備し、取組後6か月分の賃金支払い後に期限内に支給申請を行う必要があります。

また、解雇等による離職者が一定数以上いる場合には、助成金の対象外となる可能性があります。


キャリアアップ助成金は、人材定着、採用力向上、賃上げ、社会保険適用への対応に役立つ制度ですが、要件確認と書類整備が非常に重要です。


活用を検討する場合は、取組を実施する前に、制度内容、就業規則、賃金規定、対象労働者、申請期限を確認しておくことをおすすめします。




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