ファクタリングを利用した場合の税務処理|手数料・消費税・仕訳の注意点を税理士が解説
- 安田 亮
- 14 時間前
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おはようございます!代表の安田です。
ファクタリングを利用した場合の税務処理|手数料・消費税・仕訳の注意点を税理士が解説
資金繰りを改善する方法の一つとして、「ファクタリング」を利用する会社が増えています。
ファクタリングとは、会社が保有している売掛金などの債権を、ファクタリング会社に買い取ってもらうことで、入金期日前に現金化する仕組みです。
たとえば、取引先への売掛金の入金予定が2か月後であっても、ファクタリングを利用すれば、手数料を差し引いた金額を早期に受け取ることができます。資金繰りに悩む中小企業にとっては便利な資金調達手段ですが、税務処理では注意が必要です。
ファクタリングの手数料は支払手数料でよいのか
消費税は課税取引になるのか
売掛金を譲渡したときの仕訳はどうなるのか
借入金として処理するのか、売掛金の譲渡として処理するのか
このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本日は、ファクタリングを利用した場合の法人税・消費税の取扱い、会計処理、仕訳例、契約内容を確認する際の注意点について解説します。
ファクタリングとは
ファクタリングとは、会社が保有している売掛金などの金銭債権を、ファクタリング会社に売却して資金化する取引です。
通常、売掛金は取引先との契約により、請求後30日後や60日後など、一定期間を経て入金されます。しかし、仕入代金や人件費、家賃、外注費などの支払いが先に発生する場合、売掛金の入金を待っていると資金繰りが厳しくなることがあります。
そこで、ファクタリング会社に売掛金を買い取ってもらうことで、入金予定日よりも早く資金を得ることができます。
ファクタリングは、金融機関からの借入とは異なり、売掛金という債権を譲渡する取引です。この点が、税務処理を考えるうえで非常に重要です。
ファクタリングは借入ではなく金銭債権の譲渡
ファクタリングを利用すると、会社にお金が入ってくるため、一見すると「借入金」のように見えるかもしれません。
しかし、買取型ファクタリングは、会社が保有している売掛金をファクタリング会社に売却する取引です。税務上は、借入ではなく「金銭債権の譲渡」として取り扱います。
たとえば、100万円の売掛金をファクタリング会社に譲渡し、手数料10万円を差し引いた90万円が入金されるケースを考えてみます。
この場合、会社は100万円を借りたわけではありません。
会社が持っていた100万円の売掛金を、90万円で売却したと考えます。
そのため、売掛金100万円を消し込み、入金された90万円との差額10万円を、債権譲渡に伴う損失として処理します。
ファクタリング手数料は「譲渡損失」として処理
ファクタリングを利用すると、ファクタリング会社に対して手数料が発生します。
実務上は「ファクタリング手数料」と呼ばれることが多いため、会計処理でも「支払手数料」として処理したくなるかもしれません。
しかし、税務上は、ファクタリング会社に支払う手数料部分は、金銭債権の譲渡に伴う譲渡損失として処理するのが基本です。つまり、売掛金の額面金額と、ファクタリング会社から実際に受け取った金額との差額を、譲渡損失として損金算入します。
たとえば、売掛金100万円をファクタリングし、90万円が入金された場合には、差額10万円が譲渡損失です。
この10万円は、売掛債権を額面より低い金額で譲渡したことによる損失と考えます。
名称が「手数料」であっても、取引の実態が金銭債権の譲渡である以上、法人税上は譲渡損失として整理することになります。
仕訳例:売掛金100万円を90万円でファクタリングした場合
具体的な仕訳で確認してみましょう。
前提は次のとおりです。
売掛金:100万円
ファクタリング会社からの入金額:90万円
差額(いわゆる手数料部分):10万円
まず、売上発生時には通常どおり売掛金を計上します。
借方:売掛金 1,000,000 / 貸方:売上高 1,000,000円
その後、ファクタリング契約により売掛金を譲渡し、90万円が入金された場合は、次のように処理します。
借方:普通預金 900,000/ 貸方:売掛金 1,000,000
借方:譲渡損失 100,000/
この仕訳により、売掛金100万円が消滅し、実際に入金された90万円と、譲渡損失10万円が計上されます。
実務上は、勘定科目を「債権譲渡損」「売上債権譲渡損」「雑損失」などとしている会社もありますが、内容が分かるように補助科目や摘要で管理しておくとよいでしょう。
消費税は非課税取引
ファクタリングは、税務上、金銭債権の譲渡に該当します。
消費税では、金銭債権の譲渡は非課税取引とされています。
そのため、ファクタリングにより売掛金を譲渡した場合、その債権譲渡取引には消費税はかかりません。また、ファクタリング会社に支払う手数料部分についても、金銭債権の譲渡に伴う譲渡損失として整理されるため、課税仕入れとして消費税の仕入税額控除を行うものではありません。
ここは実務上かなり重要です。
「手数料」という名称だけを見ると、消費税の課税仕入れとして処理したくなることがあります。しかし、ファクタリングの本質は金銭債権の譲渡です。
したがって、会計ソフトへ入力する際には、消費税区分を課税仕入れにしないよう注意しましょう。
ファクタリングには三者間と二者間がある
ファクタリングには、大きく分けて「三者間ファクタリング」と「二者間ファクタリング」があります。
三者間ファクタリングとは、債権者、債務者、ファクタリング会社の三者が関与する方法です。たとえば、会社が取引先に対する売掛金をファクタリング会社へ譲渡し、そのことを取引先にも通知または承諾してもらう形です。売掛金の支払いは、取引先からファクタリング会社へ行われます。
一方、二者間ファクタリングは、債権者とファクタリング会社の二者間で契約を行う方法です。取引先に知られずに資金調達できる場合があるため、利用されることもありますが、三者間ファクタリングより手数料が高くなる傾向があります。
どちらの方式であっても、買取型ファクタリングであれば、税務上は基本的に金銭債権の譲渡として整理します。
ただし、契約内容によっては、単なる債権譲渡ではなく、実質的に金融取引や担保取引に近い性質を持つ場合もあります。契約書の内容を確認することが大切です。
金融資産の譲渡損益を認識するための要件
ファクタリングを金銭債権の譲渡として処理するには、金融資産の譲渡損益を認識できる状態である必要があります。
具体的には、譲受人であるファクタリング会社が、その売掛債権に係る権利を実質的な制約なしに行使できることが重要です。
たとえば、次のような内容を確認する必要があります。
譲渡人が契約を自由に取り消せないこと
譲渡した債権が、譲渡人の倒産リスクから切り離されていること
譲渡人や譲渡人の債権者が、譲渡済みの債権を取り戻せないこと
譲渡人が満期日前に債権を買い戻す権利や義務を実質的に有していないこと
通常のファクタリング契約では、これらの要件を満たすように設計されていることが多いと考えられます。
しかし、すべての契約が自動的に同じ取扱いになるわけではありません。
契約内容によっては、債権譲渡として処理してよいのか、借入や担保取引に近いものとして見るべきなのか、慎重な検討が必要になることがあります。
買戻し義務がある場合は注意
ファクタリング契約で特に確認したいのが、買戻し義務や償還請求権の有無です。
たとえば、譲渡した売掛金について、取引先が支払不能になった場合に、元の債権者である会社がファクタリング会社へ弁済しなければならない契約になっている場合があります。
このような契約では、売掛債権のリスクが本当にファクタリング会社へ移転しているのかが問題になります。もし、会社が実質的に売掛金の回収リスクを負い続けている場合には、債権譲渡として売掛金を消滅させる処理が適切かどうか、慎重に判断する必要があります。
一方、ノンリコース型と呼ばれるように、売掛先の倒産リスクをファクタリング会社が負う契約であれば、債権譲渡としての性格が強くなります。
ファクタリングを利用する際には、手数料率だけでなく、契約条項をしっかり確認することが重要です。
債権譲渡制限特約がある場合
売掛先との契約書に、債権譲渡を制限する条項が入っていることがあります。
以前は、譲渡制限特約がある債権については、債権譲渡の有効性が問題になりやすく、ファクタリングを利用した資金調達の妨げになることがありました。
しかし、民法改正により、譲渡制限特約が付されている債権であっても、債権譲渡は原則として有効とされています。そのため、ファクタリングを活用した資金調達は以前より行ないやすくなっています。
ただし、取引先との関係や契約実務上の問題がなくなるわけではありません。
債権譲渡の通知や承諾が必要か、取引先との信頼関係に影響しないか、契約上の制限に違反しないかなどは、事前に確認する必要があります。
借入金として処理しないよう注意
ファクタリングを利用した場合、会社の預金口座に資金が入ってくるため、経理担当者が誤って借入金として処理してしまうことがあります。
しかし、買取型ファクタリングであれば、売掛金を譲渡して資金化する取引です。
借入金として処理するのではなく、売掛金を減少させ、差額を譲渡損失として処理するのが基本です。
借入金として処理してしまうと、貸借対照表に存在しない借入金が計上され、売掛金も残ったままになるなど、財務諸表の表示が誤る可能性があります。
また、消費税区分や法人税の損金処理にも影響するため、契約内容を確認したうえで正しい仕訳を行いましょう。
会計ソフト入力時の注意点
ファクタリングの処理では、会計ソフトへの入力にも注意が必要です。
実務上、次のような誤りが起きやすいです。
入金額を売上として二重計上してしまう
ファクタリング手数料を課税仕入れとして処理してしまう
売掛金を消し込まず、残高が残ってしまう
借入金として処理してしまう
譲渡損失の摘要や補助科目が不明確になる
売掛先ごとの債権管理と会計残高が一致しなくなる
ファクタリングを利用した場合は、売掛金の発生、債権譲渡契約、入金、差額の処理を一連の流れで確認することが大切です。
特に、複数の売掛金をまとめてファクタリングした場合には、どの売掛金が譲渡されたのか、どの取引先の債権なのか、一覧表で管理しておくとよいでしょう。
資金繰り改善効果とコストを比較する
ファクタリングは、売掛金を早期に現金化できるため、資金繰り改善に役立つ場合があります。
金融機関からの借入とは異なり、担保や保証の考え方が異なることもあり、スピーディーに資金調達できるケースもあります。
一方で、ファクタリングには手数料が発生します。
手数料率は、取引先の信用力、売掛金の金額、支払期日までの期間、三者間か二者間か、契約内容などによって変わります。
短期的な資金繰りには有効でも、頻繁に利用すると資金調達コストが大きくなり、利益を圧迫する可能性があります。税務処理だけでなく、経営判断としても、次の点を確認しましょう。
入金を早める必要性があるか
手数料率は妥当か
金融機関借入や手形割引など他の方法と比較したか
売掛先との関係に影響しないか
継続的に利用しても利益が確保できるか
資金繰り表に反映しているか
ファクタリングは便利な手段ですが、あくまで売掛金を前倒しで現金化する方法です。根本的な収益改善や資金繰り改善とあわせて検討することが重要です。
実務上のチェックポイント
ファクタリングを利用する場合には、次の点を確認しましょう。
買取型ファクタリングか、融資に近い契約か
譲渡する売掛金の内容が明確か
ファクタリング契約書を保存しているか
買戻し義務や償還請求権の有無を確認したか
譲渡制限特約や取引先への通知の要否を確認したか
売掛金を正しく消し込んでいるか
差額を譲渡損失として処理しているか
消費税区分を非課税取引として処理しているか
手数料部分を課税仕入れにしていないか
資金繰り表に入金額とコストを反映しているか
特に、会計ソフトの税区分と売掛金管理には注意が必要です。
ファクタリング手数料という名称だけで課税仕入れにしてしまうと、消費税申告に誤りが生じる可能性があります。
まとめ
ファクタリングは、売掛金を早期に現金化できる資金調達手段です。
買取型ファクタリングを利用した場合、税務上は借入ではなく、金銭債権の譲渡として取り扱います。
そのため、ファクタリング会社から入金を受けたときは、譲渡した売掛金を消し込み、売掛金の額面と入金額との差額を譲渡損失として処理します。
また、金銭債権の譲渡は消費税の非課税取引です。ファクタリング手数料という名称であっても、課税仕入れとして仕入税額控除するものではないため、消費税区分には注意が必要です。
一方で、契約内容によっては、売掛債権のリスクが本当に移転しているか、買戻し義務がないか、実質的に借入や担保取引に近いものではないかを確認する必要があります。
ファクタリングは資金繰り改善に役立つ一方、手数料負担も大きくなりやすい取引です。
利用する場合は、契約内容、会計処理、消費税区分、法人税上の損金処理を整理したうえで、資金繰り全体への影響も確認しましょう。
ファクタリングの税務処理や仕訳に不安がある場合は、早めに税理士へ相談することをおすすめします。
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