下請法違反の「賃上げ促進税制」への影響
- 安田 亮
- 2 日前
- 読了時間: 3分
おはようございます!代表の安田です。
今回は、「下請法違反による賃上げ税制不適用リスク」について、実務的な観点から分かりやすく解説します。
1.賃上げ促進税制とは
賃上げ促進税制は、賃金の引上げや人材投資を行う企業に対して法人税の税額控除を認める制度です。令和7年度以降、「マルチステークホルダー方針の公表」が新たな適用要件となり、一定規模以上の企業は「パートナーシップ構築宣言」をポータルサイトに公表することが義務付けられています。
この宣言には、
従業員の賃上げ
取引先との公正な取引
地域・社会への配慮など、企業の共存共栄に向けた方針を明示することが求められます。
2.下請法違反で「税制適用除外」に
問題となるのは、このパートナーシップ構築宣言が「下請法違反」などを理由に掲載取りやめとなった場合です。
経済産業省の要請により掲載が停止されると、税制適用に必要な受理通知書が交付されず、当該事業年度での賃上げ税制適用ができなくなる仕組みです。
たとえば、以下のような行為が該当します。
下請代金の減額(下請法第4条第1項第3号)
返品の強要(同第4条第1項第4号)
不当な経済上の利益の提供要請(同第4条第2項第3号)
これらは「優越的地位の濫用」とみなされる行為であり、特に上場企業での違反が増加傾向にあります。
3.最近の違反状況
パートナーシップ構築宣言のポータルサイトでは、掲載停止企業の情報が公表されています。2025年10月1日時点の統計では、以下のような傾向が見られます。
年度 | 掲載取りやめ件数(うち上場企業) | 主な違反内容 |
2025年度 | 6件(うち5件) | 下請代金の減額、返品、不当な経済上の利益供与 |
2024年度 | 7件(全件) | 買いたたき、下請代金の減額、不当利益要請 |
2023年度 | 3件(うち2件) | 下請代金の減額 |
とくに、上場企業による下請法違反が多数を占めている点は注目すべきです。
4.実務上の留意点
このような背景を踏まえ、企業の税務・経理担当者は以下の点に注意が必要です。
取引条件の定期的な見直し下請代金や返品対応などが、下請法に抵触していないか確認しましょう
経営層へのコンプライアンス教育税制適用の可否に直結するため、経営者の理解と現場への周知が不可欠です
税務と法務の連携税務優遇を受けるには、単なる届出や申請だけでなく「取引の適正性」という法務的視点が求められます
5.まとめ
賃上げ促進税制の適用は、単に賃上げ率や投資額だけでなく、企業の取引の健全性そのものが問われる時代に入りました。とくに下請法や独占禁止法に抵触する行為があれば、税制の恩恵を受けられなくなるだけでなく、企業イメージにも大きな影響を及ぼします。
当事務所では、
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