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両立支援等助成金とは?育児・介護・不妊治療と仕事の両立を支援する6コースを解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 5 日前
  • 読了時間: 12分

こんばんは!代表の安田です。


従業員が仕事と育児、介護、不妊治療、女性の健康課題を両立できる職場づくりは、中小企業にとって重要な経営課題です。


人手不足が続く中で、従業員がライフイベントを理由に退職してしまうことは、企業にとって大きな損失です。一方で、育児休業や介護休業、短時間勤務、テレワーク、フレックスタイム制度などを整備するには、社内規程の見直しや業務体制の整備が必要になります。


そのような中小企業の取組を支援する制度が「両立支援等助成金」です。

両立支援等助成金は、仕事と育児・介護等を両立できる職場環境づくりに取り組む中小企業事業主を支援する助成金です。男性の育児休業取得、介護離職の防止、育児休業からの職場復帰、育休中の業務代替、柔軟な働き方制度の導入、不妊治療や女性の健康課題への対応など、複数のコースが用意されています。


本日は、両立支援等助成金の概要、6つのコース、支給額、申請時の注意点、税務上の取扱いについて、公認会計士・税理士の視点からわかりやすく解説します。


両立支援等助成金とは?

両立支援等助成金とは

両立支援等助成金とは、中小企業が従業員の仕事と家庭の両立を支援するための制度整備や運用を行なった場合に支給される助成金です。


対象となる取組は、主に次のようなものです。


・男性労働者の育児休業取得を促進する取組・介護休業や介護両立支援制度の利用を支援する取組・育児休業の取得と職場復帰を円滑にする取組・育児休業取得者や短時間勤務者の業務を代替する労働者への手当支給・育児期の柔軟な働き方制度の導入・不妊治療や女性の健康課題と仕事の両立支援制度の導入


助成金の目的は、単に制度を作ることではありません。従業員が実際に制度を利用し、離職せずに働き続けられる職場環境を整備することにあります。


そのため、就業規則に制度を記載するだけでなく、社内周知、対象労働者との面談、支援プランの作成、業務体制の整備、制度利用実績の管理などが重要になります。


対象となる事業主

両立支援等助成金の対象となるのは、原則として中小企業事業主です。

中小企業に該当するかどうかは、産業別に「資本金または出資額」と「常時雇用する労働者数」で判定します。主な基準は次のとおりです。

  • 小売業、飲食業を含む:資本金等5,000万円以下または常時雇用する労働者数50人以下

  • サービス業:資本金等5,000万円以下または常時雇用する労働者数100人以下

  • 卸売業:資本金等1億円以下または常時雇用する労働者数100人以下

  • その他の業種:資本金等3億円以下または常時雇用する労働者数300人以下


ただし、育休中等業務代替支援コースのうち手当支給等に該当する場合は、常時雇用する労働者数について、産業を問わず300人以下とされています。


助成金を検討する際は、自社が中小企業の範囲に該当するかを最初に確認しましょう。


両立支援等助成金の6つのコース

両立支援等助成金には、2026年度時点で主に次の6つのコースがあります。

  • 出生時両立支援コース

  • 介護離職防止支援コース

  • 育児休業等支援コース

  • 育休中等業務代替支援コース

  • 柔軟な働き方選択制度等支援コース

  • 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース


それぞれ対象となる場面が異なるため、自社の課題や従業員の状況に合わせて活用するコースを検討する必要があります。


出生時両立支援コース

出生時両立支援コースは、「子育てパパ支援助成金」とも呼ばれるコースです。

男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境を整備し、実際に男性労働者が育児休業を取得した場合などに活用できます。


このコースには、主に次の2つの種別があります。

  • 第1種:男性労働者の育児休業取得

  • 第2種:男性労働者の育児休業取得率の上昇等


第1種では、育児・介護休業法等に定める雇用環境整備措置を複数実施し、育児休業取得者の業務代替者の業務見直しに関する規定等を策定したうえで、男性労働者が子の出生後8週間以内に一定日数以上の育児休業を開始することが必要です。


支給額は、1人目が20万円、2人目・3人目が10万円とされています。

第2種では、男性労働者の育児休業取得率が前々事業年度と比較して30%以上上昇し、かつ50%以上となる場合などに、60万円が支給される場合があります。


男性育休の取得促進は、採用力や企業イメージの向上にもつながります。中小企業では、男性社員が育児休業を取得する際に業務の穴が生じやすいため、事前に業務分担や代替体制を整えておくことが重要です。


介護離職防止支援コース

介護離職防止支援コースは、従業員が家族の介護を理由に退職してしまうことを防ぐための制度です。


介護休業の取得、介護両立支援制度の利用、介護休業中や介護短時間勤務中の業務代替支援などが対象となります。主な種別は次の3つです。

  • 介護休業

  • 介護両立支援制度

  • 業務代替支援


介護休業では、介護休業の取得・職場復帰支援に関する方針を社内周知し、対象労働者と面談したうえで、介護休業の取得と職場復帰を円滑にするためのプランを作成・実施する必要があります。そのうえで、対象労働者が連続5日以上の介護休業を取得し、職場復帰後も支給申請日まで継続雇用されていることが求められます。


介護両立支援制度では、所定外労働の制限、時差出勤、深夜業の制限、短時間勤務、在宅勤務、フレックスタイム、法を上回る介護休暇、介護サービス費用補助などの制度を対象労働者が一定基準以上利用する必要があります。


支給額は、介護休業が40万円、介護両立支援制度は制度の導入数や利用状況に応じて20万円または25万円とされています。


親の介護を理由に退職する従業員は、今後さらに増える可能性があります。介護離職防止の制度を整えることは、経験豊富な人材の流出防止にもつながります。


育児休業等支援コース

育児休業等支援コースは、労働者が育児休業を円滑に取得し、職場復帰できるよう支援する中小企業向けのコースです。主な種別は次の2つです。

  • 育休取得時

  • 職場復帰時


育休取得時では、育児休業の取得・職場復帰支援に関する方針を社内周知し、対象労働者と面談したうえで、育児休業の取得と職場復帰を円滑にするためのプランを作成・実施します。


また、対象労働者の育児休業開始前までに業務の引継ぎを行い、対象労働者が連続3か月以上の育児休業を取得する必要があります。


職場復帰時では、育児休業中に職務や業務に関する情報・資料を提供し、育児休業終了前に上司または人事労務担当者が面談を実施して、その結果を記録します。そのうえで、対象労働者を原則として原職等に復帰させ、申請日まで6か月以上継続雇用していることが求められます。


支給額は、育休取得時が30万円、職場復帰時が30万円とされています。

このコースでは、単に育児休業を取得させるだけでなく、復帰まで見据えた支援プランを作ることが重要です。


育休中等業務代替支援コース

育休中等業務代替支援コースは、育児休業取得者や短時間勤務者の業務を代替する労働者に手当を支給した場合や、代替要員を新規雇用または派遣受入した場合に活用できるコースです。主な種別は次の3つです。

  • 手当支給等、育児休業

  • 手当支給等、短時間勤務

  • 新規雇用、育児休業


育児休業中の業務代替では、育児休業取得者の業務を代替する労働者に対して手当を支給する場合、支給した手当額に応じて助成金額が変動します。


手当支給等、育児休業の場合は、業務体制整備費と業務代替手当を合わせて最大140万円が支給される場合があります。


手当支給等、短時間勤務の場合は、業務体制整備費と業務代替手当を合わせて最大128万円が支給される場合があります。


新規雇用、育児休業の場合は、代替期間に応じて、最短9万円から最長67.5万円まで支給される場合があります。


中小企業では、1人の育児休業が現場に与える影響が大きいことがあります。このコースは、育休取得者本人だけでなく、業務を引き受ける周囲の従業員への配慮にもつながる制度です。


柔軟な働き方選択制度等支援コース

柔軟な働き方選択制度等支援コースは、育児期の労働者が柔軟な働き方を選べるよう、複数の制度を導入し、実際に対象労働者が利用した場合に活用できるコースです。


このコースは、令和7年10月施行の育児・介護休業法改正との関係で特に注意が必要です。

令和7年9月までは、柔軟な働き方選択制度等を2つ以上導入することが求められていました。一方、令和7年10月以降は、3つ以上の制度を導入することが求められています。

対象となる制度としては、次のようなものがあります。

  • フレックスタイム制度

  • 時差出勤制度

  • テレワーク等

  • 短時間勤務制度

  • 保育サービスの手配や費用補助制度

  • 養育両立支援休暇制度

  • 法を上回る子の看護等休暇制度


制度を導入したうえで、柔軟な働き方選択制度等の利用に関する方針を社内周知し、対象労働者と面談し、支援プランを作成・実施することが必要です。


さらに、制度利用開始から6か月間の間に、対象労働者が柔軟な働き方選択制度等を一定基準以上利用している必要があります。


支給額は、令和7年10月以降の制度では、制度を3つ導入して対象者が制度を利用した場合に20万円、制度を4つ以上導入して対象者が制度を利用した場合に25万円とされています。

また、法を上回る有給の子の看護等休暇制度を整備した場合、一定の要件を満たすことで30万円が支給される制度も設けられています。


不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース

不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースは、不妊治療、月経に起因する症状、更年期に起因する症状などと仕事を両立できる職場環境を整備するためのコースです。

主な対象は次の3つです。

  • 不妊治療のための両立支援制度

  • 月経に起因する症状への対応のための支援制度

  • 更年期に起因する症状への対応のための支援制度


対象となる制度には、休暇制度、所定外労働制限制度、時差出勤制度、短時間勤務制度、フレックスタイム制度、在宅勤務等があります。


これらの制度について、利用手続きや賃金の取扱い等を就業規則等に規定し、労働者からの相談に対応する両立支援担当者を選任する必要があります。


そのうえで、対象労働者が各両立支援制度を合計5日または5回利用した場合、それぞれ30万円が支給される場合があります。


不妊治療や女性の健康課題は、従業員が会社に相談しにくいテーマでもあります。制度を整備するだけでなく、プライバシーに配慮した相談体制を作ることが重要です。


申請時に注意すべきポイント

両立支援等助成金を活用する際は、次の点に注意が必要です。


1. 就業規則等への規定が重要

助成金の多くは、就業規則や労使協定、社内規程に制度を明記することが前提になります。

実務上は、制度を実際に利用する前に、必要な規定を整備しておく必要があります。

後から規定を作成しても、助成金の要件を満たさない可能性があるため注意しましょう。


2. 社内周知と面談記録を残す

両立支援等助成金では、対象労働者との面談、支援プランの作成、制度利用に関する方針の社内周知などが重要です。

「制度はあるが、従業員が知らない」「面談をしたが記録がない」という状態では、申請時に説明が難しくなります。

周知資料、面談記録、支援プラン、メール、社内掲示などを保存しておきましょう。


3. 制度利用の実績を管理する

助成金は、制度を作っただけでは支給されません。

対象労働者が実際に育児休業、介護休業、短時間勤務、テレワーク、フレックスタイム、休暇制度などを一定基準以上利用していることが必要です。

勤怠記録、出勤簿、賃金台帳、休暇申請書、勤務実績表などを整備しておきましょう。


4. 他コースとの併給制限を確認する

同じ労働者、同じ育児休業、同じ取組について、複数の助成金を同時に申請できない場合があります。

たとえば、男性労働者の育児休業取得について、出生時両立支援コースと育児休業等支援コースの併給が制限される場合があります。

助成金を検討する際は、どのコースを選ぶのが最も適しているかを事前に確認することが大切です。


税務上の取扱い

両立支援等助成金を受け取った場合、法人であれば原則として収益に計上され、法人税の課税対象となります。


個人事業主の場合も、原則として事業所得の収入金額に含まれます。

助成金は「税金がかからない収入」と誤解されることがありますが、通常は課税対象です。

また、両立支援等助成金は、育児休業や介護休業、業務代替手当、制度整備などに関連する助成金です。設備投資補助金とは性質が異なるため、固定資産取得に係る圧縮記帳のような処理は通常想定しにくいと考えられます。


会計処理では、助成金の支給決定時期、入金時期、対象となる人件費や手当の発生時期がずれることがあります。決算期をまたぐ場合は、収益計上時期について顧問税理士に確認しておくと安心です。


両立支援等助成金が向いている事業主

両立支援等助成金は、次のような中小企業に向いています。

  • 男性育休の取得を進めたい

  • 育児休業や介護休業を取得しやすい職場にしたい

  • 育休取得者の業務を代替する従業員に手当を支給したい

  • 育児期の従業員に柔軟な働き方を提供したい

  • 介護離職を防ぎたい

  • 不妊治療や女性の健康課題と仕事の両立を支援したい

  • 採用力や従業員定着率を高めたい

  • 就業規則や社内制度を整備したい


一方で、助成金を受けることだけを目的に制度を作るのはおすすめできません。

育児・介護・不妊治療・女性の健康課題への対応は、従業員の働き方や職場文化に深く関わります。形式的に制度を作るだけでは、従業員の安心感や定着にはつながりません。

助成金は、あくまで働きやすい職場づくりを後押しする制度と考えることが大切です。


まとめ

両立支援等助成金は、仕事と育児・介護等を両立できる職場環境づくりに取り組む中小企業事業主を支援する助成金です。


主なコースには、出生時両立支援コース、介護離職防止支援コース、育児休業等支援コース、育休中等業務代替支援コース、柔軟な働き方選択制度等支援コース、不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースがあります。


特に、柔軟な働き方選択制度等支援コースは、令和7年10月以降の制度改正により、導入すべき制度数や対象制度に変更があるため注意が必要です。


助成金を活用するには、就業規則等の整備、社内周知、対象労働者との面談、支援プランの作成、制度利用実績の管理、支給申請書類の準備が重要です。


両立支援等助成金は、従業員の離職防止、採用力向上、職場環境改善に役立つ制度です。活用を検討する場合は、制度導入前に最新の支給要領や申請様式を確認し、早めに準備を進めることをおすすめします。

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