女性管理職比率の公表義務が拡大|「管理職」の定義(課長級)の数え方と有報開示の注意点
- 安田 亮
- 12 時間前
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おはようございます!代表の安田です。
2025年6月の女性活躍推進法の改正により、2026年4月以後、一定規模以上の企業では「男女の賃金差異」に加えて、女性管理職比率の情報公表が義務化されます。対象は、常時雇用する労働者(常用労働者)が101人以上の企業です。
女性管理職比率の公表で実務上つまずきやすいのが、「管理職」の定義です。定義自体は改正前後で変わらないものの、厚労省のQ&Aが改訂され、判断の仕方(形式要件+実態要件)の説明が拡充されています。さらに、有価証券報告書(有報)でも開示する場合、定義どおりに算定していないと指摘を受け得るため、経理・開示担当者も無関係ではありません。
本記事では、公表義務のスケジュールと「管理職」の数え方、開示対応のポイントを、公認会計士の視点で整理します。
1. 何が変わる?公表義務の対象が拡大(101人以上が対象)
改正により、常用労働者数が101人以上の企業は、
女性管理職比率
男女の賃金差異
の情報公表が求められる整理です。
公表タイミング(3月決算企業のイメージ)
改正法の施行後に最初に終了する事業年度の実績を、次の事業年度開始後おおむね3か月以内に公表する必要がある、とされています。3月決算企業であれば、2027年3月期の情報を概ね2027年6月までに公表することになります。
2. 有価証券報告書(有報)での開示はいつから影響する?
有報における男女の賃金差異・女性管理職比率の開示は、女性活躍推進法に基づき公表する場合に開示する整理だとされています。
そのため、2026年3月期の有報は改正前と同様の扱いで、
男女の賃金差異:301人以上の企業に開示義務
女性管理職比率:公表を選択した企業のみ開示義務
となる点が示されています。
3. 最重要:女性管理職比率の「管理職」定義(課長級+課長級より上位)
女性管理職比率の算定で用いる「管理職」は、
課長級
課長級より上位の役職(役員を除く)
の合計とされています。
課長級の判定は「形式→実態」の順で判断
課長級は、次のいずれかに該当する者とされています。
① 形式要件(いわゆる課長)
通常「課長」と呼ばれ、かつ
組織が2係以上、または
構成員が10人以上(課長含む)
の組織の長である者。
② 実態要件(呼称に関係なく課長級相当)
課長ではなくても、職務内容・責任の程度が課長級に相当する者(ただし最下位職階ではない)。つまり、まず①で判断し、該当しない場合に②で判断する、という流れです。
なお、一般的に「課長代理」「課長補佐」は課長級に該当しないとされています。
4. Q&A改訂で説明が拡充されたポイント(実務で迷う2ケース)
今回、定義そのものは変わっていませんが、2月に改訂されたQ&Aで説明が拡充されています。実務で迷いやすいのは、次の2パターンです。
ケース①:中小企業で部下10人未満の課長は対象?
結論として、部下が10人未満でも、組織が2係以上なら課長級に該当し得ます。また、形式要件に該当しなくても、②の実態要件に該当すれば課長級になり得る、という整理です。
ケース②:専門職で部下はいないが、課長級と同じ給与等級の場合
②の実態要件に該当するかを、実態に即して事業主が判断して差し支えない、とされています。
5. 開示実務の落とし穴:有報レビューで「定義どおりに算定していない」と指摘例
資料では、金融庁の有価証券報告書レビューで、女性管理職比率を女性活躍推進法の「管理職」の定義に従って算定・開示していない旨の指摘があるため留意したい、とされています。これは実務上かなり重要で、よくある誤りは次のようなものです。
役職名(呼称)だけで機械的に集計してしまう
「課長代理」「課長補佐」などを含めてしまう
専門職・職能資格制度の“等級”だけで判断してしまい、職務内容・責任の程度の裏取りがない
有報で開示する企業はもちろん、法令に基づく公表(人的資本情報の公表)でも、社内の算定ルールを早めに固めておくことが重要です。
6. 企業が今から準備すべきチェックリスト
常用労働者数が101人以上か(公表義務の対象判定)
管理職(課長級+上位職)の定義を、社内規程・職務記述・等級制度と突合して整理
課長級の判定を「形式→実態」で判定できるように、必要なデータ(組織図、係の構成、人数、職務権限)を整備
有報開示を行う場合、開示数値の算定根拠(ロジックと証跡)を残す
人事部門だけに任せず、開示・法務・総務も含めたレビュー体制を作る
まとめ:公表義務拡大に備え、「管理職(課長級)」の定義を早めに社内統一する
2026年4月から、女性活躍推進法の改正により、101人以上の企業で女性管理職比率と男女の賃金差異の公表義務が拡大します。女性管理職比率の算定では、管理職(課長級)の判断を「形式要件→実態要件」で行う点が重要で、Q&A改訂により実務の判断ポイントも補強されています。有報開示も視野に入る企業は、金融庁レビューで指摘されないよう、定義どおりの算定と証跡整備を進めることが有効です。




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