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新リース会計基準のリース期間はどう決める?資産除去債務・経済的耐用年数との整合性も解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 3 日前
  • 読了時間: 11分

更新日:7 時間前

おはようございます!代表の安田です。


2027年4月から、新リース会計基準の適用が始まります。


新リース会計基準では、借手側の多くのリースについて、使用権資産とリース負債を貸借対照表に計上することになります。そのため、これまでオフバランスで処理していた契約についても、リースに該当するかどうかを判定し、リース期間やリース料総額を見積もる必要があります。


特に実務で悩みやすいのが、不動産賃貸借契約にリースが含まれるか、また契約期間より長いリース期間を見積もる必要があるかという点です。さらに、監査法人から「資産除去債務の期間とリース期間を整合させるべきではないか」と指摘されるケースもあり、経理担当者にとって判断に迷いやすい論点になっています。


本日は、公認会計士の視点から、新リース会計基準におけるリースの識別、リース期間の見積り、資産除去債務や経済的耐用年数との関係、実務対応のポイントを整理します。


新リース会計基準のリース期間はどう決める?

新リース会計基準における「リース」の定義

新リース会計基準では、リースは「原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約または契約の一部分」と定義されています。


ポイントは、契約書の名称が「リース契約」かどうかではなく、実質的に特定された資産を使用する権利が移転しているかどうかです。


そのため、従来の会計基準ではリースとして扱っていなかった契約でも、新基準ではリースを含む契約に該当する可能性があります。たとえば、次のような契約は確認が必要です。

  • 事務所・店舗・倉庫の賃貸借契約

  • 工場・物流施設の賃貸借契約

  • 車両・機械装置の利用契約

  • サーバー・通信設備の利用契約

  • 専用設備や専用ラインを利用する業務委託契約

  • 複合契約の中に特定資産の使用が含まれる契約


新リース会計基準への対応では、まず自社の契約を網羅的に洗い出し、リースを含む契約かどうかを判定する必要があります。


リースの識別で見るべきポイント

「リースの識別」のフローチャートでは、リースを含むかどうかを判断する際には、大きく次の観点が重要になります。


(1)資産が特定されているか

まず、契約で使用する資産が特定されているかを確認します。

契約書に特定の物件、設備、車両、機械などが明記されている場合には、資産が特定されている可能性があります。

一方、サプライヤー側が実質的に資産を入れ替える権利を持ち、顧客が特定の資産を使っているとはいえない場合には、リースを含まない可能性があります。


(2)顧客が経済的利益のほとんどすべてを得ているか

次に、顧客がその資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受しているかを確認します。

たとえば、特定の資産を顧客が独占的に利用している場合には、この要件を満たす可能性があります。


(3)資産の使用を支配する権利があるか

さらに、顧客が資産の使用方法を指図する権利を持っているかも重要です。

使用する期間、場所、目的、稼働方法などについて、顧客が実質的に決定できる場合には、資産の使用を支配していると判断される可能性があります。

一方、サプライヤー側が使用方法を実質的に決定している場合には、リースではなくサービス契約と判断されることもあります。


不動産賃貸借契約はすべてリースになるのか

新リース会計基準の対応で、多くの企業が気にするのが不動産賃貸借契約です。


事務所、店舗、倉庫、工場などの賃貸借契約は、特定された資産を一定期間使用する契約であるため、リースを含むと判断されるケースが多いと考えられます。ただし、貸手側に資産の入れ替え権利がある場合など、契約内容によってはリースを含まないと判断される可能性もあります。


実務上は、「不動産賃貸借契約だから必ずリース」と機械的に判断するのではなく、契約ごとに次の点を確認することが重要です。

  • 使用する不動産が具体的に特定されているか

  • 貸手が実質的な入替権を持っているか

  • 借手が使用から生じる経済的利益を得ているか

  • 借手が使用方法を支配しているか

  • 契約の一部にリース要素とサービス要素が混在していないか


契約書の文言だけでなく、実際の運用実態も踏まえて判断する必要があります。


リース期間はどう決めるのか

新リース会計基準では、リース期間について、契約上の解約不能期間に、延長オプションや解約オプションの対象期間を加味して決定します。


ここで重要なのが、オプションを行使すること、または行使しないことが合理的に確実かどうかです。


たとえば、契約上は5年契約であっても、借手が延長オプションを行使することが合理的に確実であれば、リース期間は5年より長くなる可能性があります。


逆に、契約上は長期契約であっても、解約オプションを行使しないことが合理的に確実かどうかによって、リース期間の見積りが変わる場合があります。


リース期間は、使用権資産とリース負債の金額に直結します。リース期間を長く見積もれば、一般にオンバランスされる資産・負債の金額も大きくなります。そのため、判断根拠を丁寧に整理する必要があります。


延長オプションの判断で重要なのは「経済的インセンティブ」

延長オプションを行使することが合理的に確実かどうかを判断する際には、経済的インセンティブを優先的に検討することが重要です。


過去の実績や経営計画などの「経営者の意図」を優先してしまうと、不適切にリース期間を延ばし、資産・負債の過大計上につながる可能性があると指摘されています。


つまり、「過去も更新してきたから今回も更新するだろう」「経営計画上は長く使う予定だから延長するだろう」というだけでは不十分です。

実務では、次のような経済的インセンティブを検討する必要があります。

  • 契約更新しない場合に多額の移転コストが発生するか

  • 借手が多額の内装工事や設備投資を行っているか

  • 代替物件を確保することが困難か

  • 物件の立地が事業継続上重要か

  • 契約条件が市場条件より有利か

  • 解約時に違約金や原状回復費用が発生するか

  • 店舗や工場など、事業運営に不可欠な拠点か

  • 借手仕様にカスタマイズされた資産か


経営者の意図や過去実績は参考情報にはなりますが、それだけでリース期間を延ばすのではなく、経済的インセンティブと客観的な証拠を踏まえて判断することが重要です。


資産除去債務の期間とリース期間は整合させる必要があるのか

実務でよく出る疑問が、リース期間と資産除去債務の期間を整合させる必要があるのかという点です。


たとえば、不動産賃貸借契約に原状回復義務があり、資産除去債務を計上している場合、監査法人から「資産除去債務の見積期間とリース期間が一致していないのはおかしいのではないか」と指摘されることがあります。


この点について、リース期間の見積りと資産除去債務の期間の取扱いは、会計基準上の考え方が異なるため、会計基準同士の整合性を過度に気にする必要はないとされています。


つまり、リース期間と資産除去債務の見積期間は、必ず一致させなければならないものではありません。


リース期間は、解約不能期間に延長オプション・解約オプションを加味し、オプション行使が合理的に確実かどうかで判断します。一方、資産除去債務は、将来の除去義務の履行時期や支出額を見積もるものであり、必ずしもリース会計上のリース期間と同じ考え方で決まるわけではありません。


ただし、両者の期間が大きく異なる場合には、監査上、説明が求められる可能性があります。そのため、以下のような整理をしておくとよいでしょう。

  • リース期間の判断根拠

  • 延長オプションを行使する経済的インセンティブの有無

  • 資産除去債務の履行時期の見積根拠

  • 原状回復義務の内容

  • 過去の退去実績・更新実績

  • 経営計画上の拠点利用方針

  • 両者が一致しない理由


重要なのは、形式的に一致させることではなく、それぞれの会計基準に基づいて合理的に判断し、その根拠を説明できるようにすることです。


経済的耐用年数をリース期間の判断で意識すべきか

もう一つの実務上の疑問が、リース期間を検討する際に、経済的耐用年数を考慮する必要があるかという点です。


この点についても、リース期間と経済的耐用年数は定義が異なるため、経済的耐用年数を意識する必要はないとされています。


リース期間は、借手がリース資産を使用する権利を有する期間を会計基準に基づいて見積もるものです。一方、経済的耐用年数は、その資産が経済的に使用可能と見込まれる期間です。


たとえば、建物の経済的耐用年数が30年であっても、借手が合理的に確実に使用すると判断できるリース期間が10年であれば、リース期間を30年にする必要はありません。


逆に、経済的耐用年数が長いことだけを理由に、リース期間を不必要に長く見積もると、使用権資産とリース負債を過大計上するリスクがあります。


リース管理台帳の整備が不可欠

新リース会計基準への対応では、リース管理台帳の整備が重要です。

リース期間の判断やリース負債の計算は、契約ごとに行なう必要があります。契約件数が多い会社では、Excelだけで管理するのが難しくなることもあります。

リース管理台帳には、少なくとも次のような項目を整理しておくとよいでしょう。

  • 契約名

  • 契約相手先

  • 対象資産

  • 契約開始日

  • 契約終了日

  • 解約不能期間

  • 延長オプションの有無

  • 解約オプションの有無

  • オプション行使が合理的に確実か

  • リース期間

  • リース料

  • 割引率

  • 使用権資産・リース負債の金額

  • 資産除去債務の有無

  • リース期間と資産除去債務期間が異なる場合の理由

  • 監査法人との協議状況


リース管理台帳を整備しておくことで、決算時の計算だけでなく、監査法人からの質問対応もスムーズになります。


監査法人との協議で準備すべき資料

新リース会計基準への対応では、監査法人との協議に時間がかかる可能性があります。

特に、リースの識別やリース期間の見積りは判断要素が多いため、監査法人から根拠資料を求められやすい領域です。

協議に備えて、次の資料を準備しておくとよいでしょう。

  • 契約書一覧

  • リース判定メモ

  • リース識別の判断フローチャート

  • リース期間の判断メモ

  • 延長オプション・解約オプションの一覧

  • 経済的インセンティブの分析資料

  • 過去の契約更新・解約実績

  • 物件・設備ごとの重要性分析

  • 資産除去債務の見積資料

  • 経営計画・店舗計画・拠点戦略との関係資料

  • 重要な判断についての社内承認資料


特に、リース期間を契約期間より長く見積もる場合には、経済的インセンティブに基づく客観的な説明が求められます。


実務でありがちな誤解

新リース会計基準への対応では、次のような誤解に注意が必要です。


  • 不動産賃貸借契約はすべて自動的にリースになる

不動産賃貸借契約はリースに該当するケースが多いものの、契約内容によってはリースを含まない可能性もあります。資産の特定や使用の支配を確認する必要があります。


  • 契約期間がそのままリース期間になる

リース期間は、契約上の解約不能期間だけでなく、延長オプションや解約オプションを加味して判断します。契約期間と必ず一致するわけではありません。


  • 過去に更新しているから、延長オプションは合理的に確実

過去実績は参考になりますが、それだけでは不十分です。経済的インセンティブを優先的に検討する必要があります。


  • 資産除去債務の期間とリース期間は必ず一致する

両者は会計基準上の考え方が異なるため、必ずしも一致させる必要はありません。ただし、異なる理由は説明できるようにしておくべきです。


  • 経済的耐用年数が長ければリース期間も長くなる

経済的耐用年数とリース期間は定義が異なります。経済的耐用年数だけを理由にリース期間を延ばす必要はありません。


実務チェックリスト

新リース会計基準への対応として、次の点を確認しておきましょう。

  • 契約書を網羅的に洗い出しているか

  • 不動産賃貸借契約をリース判定の対象に含めているか

  • 契約に特定された資産があるか確認しているか

  • 貸手の入替権が実質的かどうか検討しているか

  • 借手が資産の使用を支配しているか判断しているか

  • 延長オプション・解約オプションを一覧化しているか

  • オプション行使が合理的に確実かどうかを検討しているか

  • 経済的インセンティブを優先的に分析しているか

  • 経営者の意図だけでリース期間を延ばしていないか

  • 資産除去債務の期間とリース期間が異なる場合、その理由を説明できるか

  • 経済的耐用年数を理由にリース期間を過度に長くしていないか

  • リース管理台帳を整備しているか

  • 監査法人と早めに協議しているか


まとめ

新リース会計基準では、従来はリースとして扱っていなかった契約でも、特定された資産の使用を支配する権利が移転している場合には、リースを含む契約に該当する可能性があります。特に、不動産賃貸借契約は多くの企業に影響するため、契約書の洗い出しとリース識別が重要です。


また、リース期間は、契約上の解約不能期間に加え、延長オプションや解約オプションの対象期間を考慮して決定します。延長オプションを行使することが合理的に確実かどうかを判断する際には、過去実績や経営者の意図だけでなく、経済的インセンティブを優先的に検討する必要があります。


資産除去債務の期間や経済的耐用年数との関係については、それぞれの会計基準で期間に関する考え方が異なるため、必ずしもリース期間と整合させる必要はありません。ただし、期間が異なる場合には、監査法人に対して合理的に説明できるよう、判断根拠を文書化しておくことが重要です。


新リース会計基準への対応は、契約管理、会計処理、システム、監査対応が絡む大きなプロジェクトです。適用時期が迫る中、早めにリース管理台帳を整備し、監査法人との協議を進めることが大切です。


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