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自・維連立政権が発足―税制への影響は?

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 6 時間前
  • 読了時間: 4分

おはようございます!代表の安田です。


2025年10月20日、自民党と日本維新の会は連立政権樹立に合意し、翌21日の臨時国会で高市早苗氏(自民党総裁)が第104代内閣総理大臣に選出されました。

これにより、公明党が連立から離脱し、新たな与党体制が発足しました。

両党の「連立政権合意書」では、所得税・消費税をはじめとする税制の見直しに関する重要な方針が盛り込まれており、今後の税制改正論議の行方が注目されています。


1.所得税:基礎控除の見直しと「給付付き税額控除」の導入へ

合意書の中で特に注目されるのが、所得税に関する次の2つの方針です。

(1)基礎控除の見直し

インフレが進む中、現行制度では「名目所得の上昇=税負担の増加」につながるケースも見られます。そのため、物価上昇に応じて基礎控除額などを見直す制度設計を、令和7年(2025年)年内を目途に取りまとめる方針が示されています。

→ インフレ連動型の基礎控除制度が実現すれば、今後の税負担の公平性が高まる可能性があります。


(2)給付付き税額控除の導入

低所得者や所得変動が大きい層への支援策として、給付と減税を組み合わせた「給付付き税額控除」の導入を検討することも明記されました。

この制度は、納税額が少ない世帯でも一定の「給付」を受けられる仕組みであり、欧米諸国で広く採用されています。

制度設計はこれからですが、所得再分配機能を強化する新しい税制の柱となる見通しです。


2.租税特別措置の見直しと「政府効率化局(仮称)」の設置

連立合意書では、政策効果の低い租税特別措置(特例税制)や高額補助金を総点検し、廃止・縮小を進める方針も打ち出されています。この業務を担うため、「政府効率化局(仮称)」の新設が検討されています。

企業にとっては、特定業種や地域に適用されてきた税制優遇措置が見直される可能性があるため、今後の動向を注視する必要があります。特に、研究開発税制や中小企業投資促進税制などの「実効性」や「費用対効果」が改めて問われる場面も想定されます。


3.消費税:飲食料品を一時的に「非課税」扱いとする構想も

さらに注目されるのが、「飲食料品を2年間に限り消費税の対象外とすることも視野に法制化を検討する」という内容です。これは、物価高騰が続く中で生活支援策の一環として検討されているものです。


現行の軽減税率(8%)制度とは異なり、期間限定で完全非課税とする可能性があるため、実現すれば事業者の経理処理やインボイス対応にも大きな影響を及ぼすでしょう。制度設計の詳細は未定ですが、導入の際はレジシステムや請求書発行業務などに変更が必要となる見込みです。


4.その他の経済・財政関連施策

合意書には、税制以外にも次のような施策が盛り込まれています。


  • ガソリン税の旧暫定税率を廃止し、令和7年臨時国会中に法案成立を目指す

  • 電気・ガス料金への補助など物価対策を早急に取りまとめ、補正予算で対応

  • 現金給付(子ども・非課税世帯への一律給付)は実施しない方針


これらの政策は、家計支援を直接的な給付ではなく、税制や価格補助を通じて行なう方向に舵を切ったものといえます。


5.まとめ:今後の実務に向けて押さえておきたいポイント

項目

内容

所得税

基礎控除のインフレ連動見直し、給付付き税額控除の導入

法人税

政策効果の低い租税特別措置の廃止へ

消費税

飲食料品を2年間非課税とする案を検討

行政機構

政府効率化局(仮称)を新設し制度運用を監視

施行時期

制度設計を令和7年内にまとめ、順次法制化を予定


税理士からのコメント

今回の連立合意書は、税制を「分配と公平」の視点から見直す方向性を明確にしています。特に、給付付き税額控除や基礎控除の見直しは、個人所得税の構造を大きく変える可能性があります。

企業・個人ともに、

  • 将来の税負担変化

  • 税制優遇の見直しリスク

を見据えた中期的な税務・資金計画が求められます。年末に向けて発表される税制改正大綱で、より具体的な制度設計が明らかになるでしょう。



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