配当決議を取締役会で行なうための定款変更
- 安田 亮
- 3 時間前
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おはようございます!代表の安田です。
本日は配当の決議の手続きに関しての内容です。
1.配当決議は「株主総会決議」が原則
会社法では、原則として剰余金の配当は株主総会の決議によって行なうこととされています。(会社法454条第1項)
しかし、一定の要件を満たす会社では、定款の定めにより、「配当を取締役会の決議によって行なうことができる」とすることが可能です。
この定款変更を行なえば、決算確定後すぐに取締役会で配当を決定できるため、株主総会の準備期間を短縮し、決算発表から総会までのスケジュールを円滑化できます。
2.定款の書き方で「株主の印象」が変わる
実は、「取締役会決議による配当」を定める定款には、文言の違いによって株主の受け止め方が大きく変わる2つのパターンがあります。
パターン①:取締役会に限定する形
「剰余金の配当は、法令に別段の定めがある場合を除き、株主総会の決議によらず、取締役会の決議により定める。」
この文言の場合、配当をすべて取締役会決議に限定するため、株主は総会で配当を決定できなくなります。
そのため、「株主の発言権が奪われる」との懸念から、株主側の反対が強まるケースが多いとされています。
パターン②:取締役会または総会で決議できる形
「剰余金の配当は、取締役会の決議により定めることができる。」
こちらは、「取締役会でも総会でもどちらでも決議できる」という柔軟な定めです。
取締役会での配当決議を可能にしながら、株主総会での決議も残すことができるため、株主の理解を得やすく、定款変更が比較的スムーズに進む傾向があります。
3.電子提供制度との関係にも注意
配当決議の扱いは、近年導入された株主総会資料の電子提供制度(会社法325条の3)にも関係します。電子提供では、株主総会の3週間前までに事業報告等をネット上で掲載しなければなりません。
配当決議を株主総会で行なう場合は、その金額等を総会資料に反映させる必要があるため、電子提供開始時点(=3週間前)までに最終決定しておく必要があります。
一方、取締役会で配当決議を行なう方式にすれば、総会招集手続きへの影響を受けずに決算発表後に迅速な配当決定が可能となります。
4.実務での留意点
チェック項目 | 対応のポイント |
定款変更の目的 | 「迅速な配当決議」を目的とする場合、取締役会授権の文言を検討 |
文言の選択 | 「取締役会決議に限定」ではなく、「決議できる」形式の方が柔軟性あり |
株主対応 | 株主に十分な説明を行ない、ガバナンス低下の懸念を払拭する |
総会スケジュール | 電子提供制度との整合を図り、招集手続きに支障が出ないよう調整 |
上場会社の現状 | 約半数の上場企業は未導入。導入時には法務・IR部門で慎重な検討を |
5.公認会計士・税理士からのコメント
定款のわずかな文言の違いが、株主の信頼や総会運営の円滑さに大きく影響します。特に上場企業では、電子提供制度の導入により、配当決議のタイミングがガバナンス・開示双方に関係するようになりました。
したがって、
「配当決議をどこで行なうか」
「株主総会資料にどのタイミングで反映するか」
を踏まえ、法務・経理・IRが連携して定款の記載を検討することが重要です。


