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金利上昇と減損リスク

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 4 日前
  • 読了時間: 2分

おはようございます!代表の安田です。


2025年1月、日本銀行は政策金利の追加利上げを決定し、長らく続いたゼロ金利政策に終止符が打たれました。「金利のある世界」が再び現実となる中で、企業経営・財務においては資金調達コストの増加に留まらず、会計実務にも重要な影響が生じています。

特に注目されるのが、資産の減損リスクの高まりです。

今回は、金利上昇が減損会計に与える影響と実務上の留意点について解説します。


■減損テストにおける「割引率」の役割

国際会計基準(IAS第36号)においては、減損の認識が必要か否かを判断するため、回収可能価額を算定し、それが帳簿価額を下回る場合に減損損失を計上します。

回収可能価額は以下のいずれか高い金額となります:

  • 公正価値(処分コスト控除後)

  • 使用価値(将来キャッシュ・フローの現在価値)

このうち使用価値の算定では、将来キャッシュ・フローを割引率(通常はWACC)により現在価値へと割り引きます。


■金利上昇は「WACC」を押し上げる

WACC(加重平均資本コスト)は、資本コストと負債コストを加重平均して求める指標であり、その構成要素にはリスクフリーレート(日本国債利回り等)が含まれます。

そのため、金利が上昇するとWACCも上昇し、結果として以下のような影響が生じます:

  1. 割引率が上がる

  2. 使用価値(現在価値)が低下

  3. 帳簿価額との乖離が拡大

  4. 減損損失計上リスクが上昇


■実務上の対応ポイント

会計士の間では、「評価額が変わるため、減損の判断はより慎重になる必要がある」との声も多く聞かれています。実務対応としては以下が重要です:

  • リスクフリーレートや市場データを最新情報で反映すること

  • 使用するWACCの前提条件(資本構成、ベータ値、リスクプレミアム等)を明確化

  • 減損テストの期中予備検討を行い、決算直前の慌ただしさを避ける

  • 減損に関する開示方針や会計方針の再点検も推奨


【まとめ】

金利上昇は、企業の財務構造のみならず、会計上の見積りや判断に直結するリスク要因です。特に、資産の評価に影響を与えるWACCの変動は、減損会計において見過ごせないポイントとなります。



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