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関連者間取引の書類保存と電子帳簿保存法|特定事項記載書類のスキャナ保存・電子保存を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 1 日前
  • 読了時間: 8分

こんにちは!代表の安田です。


令和8年度税制改正により、関連者間取引に係る書類の整理保存の特例が創設されました。この制度では、内国法人が関連者との間で一定の取引を行ない、その契約書等に対価の額を算定するために必要な事項の記載がない場合、その不足している事項、いわゆる特定事項を明らかにする書類を取得または作成し、保存することが求められます。


ここで実務上問題になるのが、その書類を紙で保存するのか、電子保存できるのかという点です。近年は電子帳簿保存法への対応が進み、契約書や請求書を紙ではなくデータで管理している会社も増えています。そのため、関連者間取引の書類保存特例についても、電帳法との関係を正しく押さえておく必要があります。


特定事項記載書類は、一定の要件を満たせばスキャナ保存やオリジナル電子データでの保存が可能です。ただし、スキャナ保存をする場合には、特定事項記載書類は電子帳簿保存法上の重要書類に該当するため、一般書類よりも厳格な要件を満たす必要があります。


今回は、関連者間取引の書類保存と電子帳簿保存法の関係について、実務で押さえたいポイントを整理します。


関連者間取引の書類保存特例とは?

まず、制度の前提を確認しておきましょう。関連者間取引に係る書類保存特例とは、内国法人が関連者との間で一定の取引を行なった場合に、契約書等に必要な事項が記載されていないとき、その不足部分を補う書類の保存を求める制度です。


令和8年4月1日以後に開始する事業年度に関連者との間で一定の取引を行ない、その取引に係る契約書等に対価の額を算定するために必要な事項がない場合には、特定事項を明らかにする特定事項記載書類を取得または作成し、保存する必要があります。


つまり、契約書が存在していても、対価の計算根拠や明細などが不十分であれば、別途補完資料が必要になる可能性があります。


電子帳簿保存法との関係が問題になる理由

この制度で保存が求められる特定事項記載書類は、必ずしも紙で保存しなければならないわけではありません。ただし、電子的に保存する場合には、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。


この点は、紙保存から電子保存へ移行している会社ほど重要です。「PDFで保存しているから大丈夫」と思っていても、電帳法上の保存要件を満たしていなければ、税務上問題になる可能性があります。


関連者から紙で取得した場合はスキャナ保存も可能

関連者から特定事項記載書類を紙で取得した場合、内国法人はその書類を紙のまま保存することができます。一方で、資料によると、紙保存に代えて、電子帳簿保存法に定めるスキャナ保存を行なうことも可能です。


ただし、スキャナ保存には一定の要件があります。たとえば、次のような要件が挙げられます。

  • 書類の受領後、または通常の業務処理期間を経過した後、速やかに入力すること

  • タイムスタンプの付与を行うこと

  • 帳簿との相互関連性を確保すること


これらは電子帳簿保存法上のスキャナ保存要件であり、単に紙をPDF化してフォルダに置いておけばよい、というものではありません。


特定事項記載書類は「重要書類」に該当する

今回の実務で特に重要なのが、特定事項記載書類の位置付けです。資料によると、スキャナ保存の対象となる国税関係書類のうち、契約書や領収書等のような重要書類以外の一般書類については、一部の要件が不要とされています。


しかし、特定事項記載書類は重要書類に該当するとされています。そのため、一般書類のような簡便な取扱いではなく、重要書類としてスキャナ保存の要件を満たす必要があります。

ここを誤ると、電子保存しているつもりでも、保存要件を満たしていないと判断されるおそれがあります。


自社で特定事項記載書類を作成した場合

特定事項記載書類は、関連者から取得するだけでなく、内国法人が自社で作成するケースもあります。たとえば、親会社からの経営指導料や技術支援料について、契約書には大枠しか書かれておらず、自社側で対価の計算方法や取引内容を補足する資料を作る場合などです。


内国法人が作成した特定事項記載書類については、次の方法で保存できます。

  • 紙で保存

  • スキャナ保存

  • パソコン等で作成したオリジナル電子データとして保存

つまり、最初からWord、Excel、PDFなどの電子データとして作成した場合には、一定の要件を満たすことで、そのオリジナル電子データを保存する方法も認められます。


オリジナル電子データ保存にも要件がある

自社で作成した書類をオリジナル電子データとして保存できると聞くと、かなり自由に保存できるように感じるかもしれません。しかし、資料では、この場合も電子計算機処理システムの概要書等の備付けなど、一定の要件を満たす必要があるとされています。


したがって、単にファイルサーバーに保存しているだけでは不十分なケースがあります。どのシステムで作成し、どのように保存し、検索や確認ができる状態になっているかまで、電帳法対応として整理しておくことが重要です。


関連者側も写しの保存が必要になる場合がある

関連者が内国法人に特定事項記載書類を交付した場合、交付した側の関連者にも保存義務が生じることがあります。資料によると、関連者が特定事項記載書類を内国法人へ交付し、その写しがある場合には、関連者はその写しを保存する必要があります。


この写しについても、保存方法は紙に限られません。資料では、関連者側でも次の保存方法が可能と整理されています。

  • 紙保存

  • スキャナ保存

  • パソコン等で電子作成した場合のオリジナル電子データ保存

つまり、書類を受け取る内国法人だけでなく、交付する関連者側でも、保存体制を確認しておく必要があります。


電子取引で特定事項を送る場合は双方に保存義務

関連者が特定事項をメールやクラウド等で内国法人に送信する場合は、電子取引として扱われます。資料によると、この場合、内国法人だけでなく、関連者側も電子取引データとして特定事項を保存する義務が生じます。


これは非常に実務的なポイントです。たとえば、親会社が子会社に対して、対価の算定根拠をメール添付のPDFで送った場合、子会社側だけでなく、親会社側でもその電子取引データを電帳法上の要件に従って保存する必要があるということです。


保存形態ごとの整理

特定事項記載書類等の保存の適用関係を実務向けにまとめると、次のようになります。


1. 関連者から内国法人が紙の特定事項記載書類を取得する場合

内国法人は、紙保存またはスキャナ保存が可能です。関連者側は、書類の写しがあれば、紙保存・スキャナ保存・オリジナル電子データ保存が可能です。


2. 関連者から内国法人が特定事項を電子取引で取得する場合

内国法人・関連者の双方で、電子取引データとして保存する必要があります。


3. 内国法人が特定事項記載書類を自社で作成する場合

内国法人は、紙保存・スキャナ保存・オリジナル電子データ保存のいずれかで保存できます。


この整理からも分かるように、保存方法は一つではありません。ただし、どの方法を選ぶかによって、満たすべき電子帳簿保存法上の要件が変わります。


実務で誤りやすいポイント

今回のテーマでよくある誤解は、次のようなものです。


1. スキャンすれば何でも保存要件を満たすという誤解

特定事項記載書類は重要書類に該当するため、単なるPDF化では足りません。速やかな入力、タイムスタンプ、帳簿との相互関連性など、スキャナ保存の要件を確認する必要があります。


2. 自社作成の電子ファイルなら自由に保存できるという誤解

オリジナル電子データ保存が可能でも、システム概要書等の備付けなど一定の要件があります。作成したExcelやPDFを漫然と保存するだけでは不十分な場合があります。


3. 書類を受け取る側だけが保存すればよいという誤解

電子取引で特定事項を送信する場合、内国法人だけでなく関連者側にも保存義務が生じます。グループ内で保存ルールを統一しておかないと、一方だけ対応漏れになる可能性があります。


会社が今のうちに確認したいこと

関連者間取引がある会社では、制度開始前に次の点を確認しておくと安心です。


まず、対象となる関連者間取引を洗い出すことです。経営指導料、技術支援料、ライセンス料、情報提供料など、特定事項記載書類が必要になり得る取引を確認します。


次に、特定事項をどの方法で補完するかを決めます。関連者から書類を取得するのか、自社で作成するのか、電子取引としてやり取りするのかによって、保存方法が変わります。


さらに、電子保存を行なう場合は、電子帳簿保存法の要件を満たしているかを確認しましょう。特にスキャナ保存を使う場合、特定事項記載書類が重要書類に該当する点を前提に運用を整える必要があります。


まとめ

令和8年度税制改正で創設された関連者間取引に係る書類の整理保存の特例では、契約書等に対価の額を算定するために必要な事項がない場合、特定事項記載書類を取得または作成し、保存する必要があります。この特定事項記載書類は紙保存だけでなく、電子帳簿保存法に基づくスキャナ保存も可能ですが、資料によると、同書類はスキャナ保存上の重要書類に該当するため、速やかな入力、タイムスタンプ、帳簿との相互関連性の確保など、重要書類としての要件を満たす必要があります。


また、内国法人が自社で作成した特定事項記載書類は、紙保存、スキャナ保存、オリジナル電子データ保存が可能です。関連者側の写しについても、紙保存、スキャナ保存、オリジナル電子データ保存が認められます。さらに、特定事項を電子取引で送信する場合には、内国法人・関連者の双方に電子取引データ保存義務が生じます。


関連者間取引の書類保存は、法人税だけでなく、電子帳簿保存法の実務とも密接に関係します。グループ内取引がある法人は、どの書類を、誰が、どの形式で、どの要件に従って保存するのかを早めに整理しておくことが大切です。

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