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関連者間取引の書類保存特例は外国法人にも適用される?対象法人と関連者の範囲を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 2 日前
  • 読了時間: 8分

こんにちは!代表の安田です。


令和8年度税制改正では、グループ内取引や親子会社間取引に関する新たな実務対応として、「関連者間取引に係る書類の整理保存の特例」が創設されました。


この制度では、関連者との間で行なう一定の取引について、契約書などに対価の額の明細や計算根拠が十分に記載されていない場合、その不足事項を明らかにする特定事項記載書類の取得・保存が求められます。特に、親会社からの経営指導料、技術支援料、ライセンス料、情報提供料などがある法人では、今後の税務調査対応にも影響する重要な改正です。


ここで実務上よく出る疑問が、外国法人はこの書類保存特例の対象になるのかという点です。海外親会社や海外子会社との取引がある法人では、「外国法人との取引も関係するのか」「外国法人側にも書類保存義務があるのか」と気になるところでしょう。


この特例の対象法人は内国法人であり、外国法人は除かれるとされています。

一方で、特例における「関連者」には外国法人も含まれるため、内国法人が外国法人である関連者と取引する場合には、内国法人側で特定事項記載書類の取得・保存が必要になる可能性があります。


今回は、関連者間取引の書類保存特例と外国法人の関係について、税理士の視点でわかりやすく解説します。


関連者間取引の書類保存特例とは?

関連者間取引の書類保存特例とは、内国法人が関連者との間で一定の取引を行なう場合に、その取引内容や対価の算定根拠を明らかにするための書類保存を求める制度です。


令和8年4月1日以後開始事業年度に、関連者との間で工業所有権等の譲渡・貸付けや役務提供などの関連者間取引を行う場合が対象になるとされています。そして、その取引に係る契約書等に対価の額の明細等の記載がない場合には、その記載されていない事項、つまり特定事項を明らかにする特定事項記載書類の取得・保存が内国法人側に求められます。


つまり、契約書が存在していても、対価の計算方法や明細が不十分であれば、補完資料を整備する必要があるということです。


特定事項記載書類がないとどうなるのか

この制度で特に注意したいのは、単なる書類整理の話では済まない点です。特定事項記載書類の保存がないことは、内国法人の青色申告承認の取消事由に該当するとされています。


青色申告の承認が取り消されると、欠損金の繰越控除や各種特典に影響する可能性があり、法人税実務上の影響は非常に大きくなります。そのため、関連者間取引がある法人では、金額の妥当性だけでなく、取引内容と対価の根拠を説明できる書類が保存されているかを早めに確認する必要があります。


外国法人はこの特例の対象法人になるのか

本日の中心論点は、外国法人がこの特例の対象法人に含まれるかです。

結論として、外国法人は対象法人から除かれます。この特例の対象法人について、法人税法施行規則上、「青色申告法人」や「内国法人である普通法人等」が規定されています。


一見すると、「青色申告法人」という表現には外国法人も含まれるのではないかと思うかもしれません。しかし、外国法人が青色申告の承認を受ける場合の規定では、基本的に内国法人の青色申告規定を準用するものの、その準用対象から関連者間取引に係る書類の整理保存の特例が除かれているとされています。そのため、外国法人はこの特例の対象外になると整理されています。


日本支店を持つ外国法人はどうなるのか

外国法人の中には、日本国内に支店や営業所などの恒久的施設を有する法人もあります。こうした外国法人についても、この関連者間取引の書類保存特例そのものは対象外とされています。


日本支店などの恒久的施設を有する外国法人については、この特例が創設される以前から、恒久的施設に係る取引に関する文書化義務が設けられています。そのため、関連者間取引の書類保存特例に基づく書類の作成・保存は不要とされています。


つまり、外国法人は何もしなくてよいという意味ではありません。外国法人には別の文書化ルールがあり、今回の新特例ではなく、既存の恒久的施設関連の文書化制度で対応する整理になっているということです。


「対象法人」と「関連者」は分けて考える

ここで実務上とても大切なのが、対象法人と関連者を分けて考えることです。

今回の特例における対象法人は、基本的に内国法人です。一方で、この特例における関連者については、内国法人との間に持株関係等がある法人が該当するため、外国法人も含まれるとされています。つまり、次のように整理できます。

  • 外国法人自身は、関連者間取引の書類保存特例の対象法人ではない

  • しかし、内国法人から見た関連者には、外国法人も含まれる

  • そのため、内国法人が外国法人である関連者と対象取引を行なう場合、内国法人側で特定事項記載書類の保存が必要になる可能性がある


この区別を誤ると、「相手が外国法人だから関係ない」と誤解してしまうリスクがあります。


海外親会社・海外子会社との取引は要注意

実務で特に注意したいのは、海外親会社や海外子会社との取引です。

たとえば、次のような取引がある内国法人では、関連者間取引の書類保存特例の対象になる可能性があります。

  • 海外親会社から経営指導を受け、マネジメントフィーを支払っている

  • 海外関連会社から技術支援やノウハウ提供を受けている

  • 海外グループ会社から商標や特許の使用許諾を受けている

  • 海外子会社に対して一定の役務提供を行っている

  • グループ内で情報提供料や管理料を授受している

これらの取引で、契約書にサービス内容や対価の算定方法が明確に書かれていない場合には、内国法人側で補完資料を整備する必要が出てきます。


移転価格文書とは別に確認が必要

海外関連者との取引というと、まず移転価格税制を思い浮かべる方も多いでしょう。もちろん、国外関連取引については、独立企業間価格やローカルファイル等の文書化対応が問題になります。


ただし、今回の関連者間取引の書類保存特例は、対価の妥当性そのものを直接判定する制度というより、契約書等に不足している取引内容や対価の明細を補完する書類保存ルールとして位置付けられます。したがって、移転価格文書があるから必ず足りる、あるいは移転価格文書がないから直ちに不備という単純な話ではありません。


実務では、移転価格文書、契約書、請求書、役務提供の実績資料、対価計算資料などを総合的に見て、特定事項を明らかにできる状態になっているかを確認する必要があります。


税務調査で見られやすいポイント

関連者間取引は、税務調査でも確認されやすい項目です。特に外国法人が絡む場合には、国内側で取引実態を十分に説明できないケースがあります。

たとえば、調査では次のような点が確認される可能性があります。

  • 契約書に役務提供の内容が具体的に記載されているか

  • 対価の額の明細や計算方法が分かるか

  • 実際に役務提供が行われたことを示す資料があるか

  • 関連者との持株関係や支配関係を説明できるか

  • 海外法人から受領した請求書だけでなく、算定根拠資料を保存しているか

「毎年同じ金額を海外親会社へ支払っているが、計算根拠は本社しか分からない」という状態では、今後リスクが高まる可能性があります。


今のうちに確認したい実務対応

令和8年4月1日以後開始事業年度からの適用に備え、関連者間取引がある法人では、次の対応を進めておくと安心です。


まず、関連者の範囲を確認することです。国内法人だけでなく、海外親会社・海外子会社・海外兄弟会社なども含めて、持株関係や支配関係を整理します。


次に、対象取引の洗い出しです。工業所有権等の譲渡・貸付け、技術支援、経営指導、情報提供、管理業務などが対象になり得ます。


さらに、契約書や請求書の記載内容を確認します。対価の額の明細、計算方法、役務提供の内容が不足している場合には、特定事項記載書類として補完できる資料を作成・取得しておく必要があります。


顧問先に伝えたいこと

税理士としては、顧問先に対して、次の点を伝えておきたいところです。

  • 関連者間取引の書類保存特例は、外国法人自体には適用されない

  • ただし、内国法人から見た関連者には外国法人も含まれる

  • 海外親会社や海外関連会社との役務提供・ライセンス取引は要確認

  • 特定事項記載書類の保存漏れは、青色申告承認取消リスクにつながる

  • 日本支店を持つ外国法人には、別途、恒久的施設に係る文書化ルールがある

特に、海外グループ会社との取引については、経理部門だけでなく、法務・事業部門・海外本社との情報連携も必要になります。


まとめ

令和8年度税制改正で創設された関連者間取引に係る書類の整理保存の特例は、令和8年4月1日以後開始事業年度に、関連者との間で一定の役務提供等を行う内国法人に適用されます。この特例では、関連者間取引に係る契約書等に対価の額の明細等が記載されていない場合、内国法人側で特定事項記載書類を取得・保存する必要があり、その保存がないことは青色申告承認の取消事由に該当します。対象法人は内国法人であり、外国法人は除かれますが、特例における関連者には外国法人も含まれます。そのため、内国法人が海外親会社や海外子会社などの外国法人と対象取引を行なう場合には、内国法人側で書類保存対応が必要になる可能性があります。


海外関連者との取引では、「相手が外国法人だから対象外」と単純に判断するのは危険です。外国法人は対象法人ではないが、関連者にはなり得るという点を押さえ、契約書や対価計算資料の整備を早めに進めておきましょう。

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