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食事補助の非課税限度額引上げと社員食堂の外部委託|委託費込みで50%基準を判定されるケースに注意

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 21 時間前
  • 読了時間: 8分

おはようございます!代表の安田です。


会社が従業員に対して行なう食事補助は、福利厚生の中でも導入しやすく、従業員満足度の向上にもつながりやすい制度です。社員食堂、弁当補助、昼食代補助など、さまざまな形がありますが、税務上は「給与課税されない範囲」を正しく押さえておく必要があります。


令和8年度税制改正では、会社が従業員等に支給する食事に係る非課税限度額が、従来の月額3,500円以下から月額7,500円以下へ引き上げられました。これにより、食事補助制度を見直す企業も増えると考えられます。


ただし、注意したいのは、限度額が引き上げられても、すべての食事補助が自動的に非課税になるわけではないという点です。特に社員食堂の運営を外部業者に委託している場合に、税務調査で「食事の価額」の評価が問題になり、外部業者への委託費を含めて50%基準を判定すべきと指摘されるケースがあると紹介されています。


今回は、食事補助の非課税要件と、社員食堂を外部委託している場合の実務上の注意点を整理します。


食事補助が非課税となる2つの要件

会社が役員や従業員に食事を支給した場合、その経済的利益は原則として給与課税の対象です。ただし、一定の要件を満たす場合には、従業員が受ける経済的利益はないものとして、給与課税の対象外とされます。


食事支給が非課税となるためには、次の2つの要件をいずれも満たす必要があります。

  1. 従業員が食事の価額の50%以上を負担していること

  2. 食事の価額から従業員負担額を控除した会社負担額が、1か月当たり7,500円以下、税抜であること


ここで重要なのは、令和8年度改正で引き上げられたのは、2つ目の月額限度額です。1つ目の50%以上負担要件は変更されていません。


そのため、会社負担額が月額7,500円以下に収まっていても、従業員負担が食事の価額の50%未満であれば、非課税要件を満たさない可能性があります。


令和8年4月1日以後は月額7,500円以下に引上げ

食事補助の非課税限度額については、令和8年度税制改正により、1か月当たり3,500円以下から7,500円以下へ引き上げられました。この改正は、令和8年4月1日以後に支給すべき食事から適用されています。


物価上昇により食事代が高くなっている中で、企業にとっては福利厚生制度を設計しやすくなる改正といえます。ただし、繰り返しになりますが、50%基準は残っています。実務では、月額7,500円だけを見て判断しないことが大切です。


食事の価額はどう評価するのか

非課税要件を判定するには、まず食事の価額を正しく評価する必要があり、食事の評価方法について、次の2つに分けて整理されています。


  • 使用者が調理して支給する食事

社員食堂などで会社が食事を作って支給する場合は、その食事の材料等に要する直接費の額に相当する金額で評価します。具体的には、食材費や調味料など、食事を作るために直接かかった費用が基準になります。


  • 使用者が購入して支給する食事

弁当などを外部業者から購入して支給する場合は、その食事の購入価額に相当する金額で評価します。つまり、業者へ支払う購入金額が食事の価額になります。

この違いが、社員食堂を外部委託している場合に大きな問題になります。


社員食堂を外部委託している場合の注意点

社員食堂がある会社では、実際の調理や運営を外部業者へ委託しているケースが少なくありません。この場合、会社としては「社員食堂なのだから、会社が調理して支給する食事と同じ扱いでよい」と考えがちです。


しかし、税務調査において、外部業者に委託して従業員へ支給する食事について、弁当などと同じく「使用者が購入して支給する食事」として、外部業者への支払額、つまり委託費を含めて評価すべきと指摘されるケースが多いとされています。


委託費を含めると食事の価額が大きくなり、従業員負担額が食事の価額の50%未満になってしまうことがあります。その結果、会社としては非課税のつもりで運用していても、税務調査で給与課税を指摘されるリスクがあります。


外部委託でも「使用者が調理して支給する食事」と同視できる場合

外部委託している社員食堂が、必ず「購入して支給する食事」と扱われるわけではありません。一定の要件を満たす場合には、外部業者が調理していても、実質的には使用者が調理して支給する食事と同視できます。そのためには、外部業者に対して次の対応を行なっていることが必要です。

  • 社内の食堂や調理場等の施設を無償で使用させていること

  • 食事の材料等を提供していること


なお、外部業者が材料等を仕入れる場合でも、その外部業者が会社に請求する材料費その他の費用の内訳が適正かつ明確に区分されている場合には、この要件を満たす取扱いが示されています。


このような実態があれば、外部業者に支払う委託費は食事の価額に含めず、材料費や調味料などの直接費のみで食事の価額を評価できることになります。


委託費を含めるかどうかで判定結果が変わる

使用者が調理して支給する食事では、食事の価額に委託費を含めないため、従業員負担50%以上の要件と月額7,500円以下の要件を満たせば、給与課税なしとなります。


一方、使用者が購入して支給する食事では、食事の価額に委託費を含むため、従業員負担が50%以上に届かず、給与課税ありとなるイメージが示されています。


つまり、同じ社員食堂のように見えても、会社が材料を管理して調理だけを委託しているのかそれとも外部業者から食事サービスを購入しているのかによって、税務上の結論が変わるということです。


「調理のみを委託している」と説明できる体制が重要

外部委託の社員食堂を、使用者が調理して支給する食事と同視するには、実態として調理人が従業員か外部業者かの違いしかないといえる状態が必要です。


企業側が食事の調理に係る材料費、厨房設備費、水道光熱費などを負担し、外部業者には調理のみを委託しているのであれば、委託費を除いた材料費等を食事の価額にできるとされています。そのためには、単に契約書に「委託」と書いてあるだけでは不十分です。実際に、会社側が材料の管理や費用負担の実態を説明できることが重要です。


企業側で材料明細や在庫を把握しておく

調理のみを外部業者に委託していると説明するためには、外部業者が仕入れた食材について、材料費を精算するだけでなく、材料の明細や在庫についても企業側が把握しておくことが肝要とされています。


また、食事メニューについても、委員会などを設置して、企業側が把握できる状況にあることが望ましいとされています。


これは実務上とても重要です。税務調査で問われるのは、形式上の契約名ではなく、実態として誰が食材を管理し、誰の計算で食事が提供されているのかです。


税務調査で指摘されやすいポイント

税務調査では、次のような場合に指摘を受けやすいと考えられます。

  • 外部業者への支払額の内訳が不明確

  • 材料費と委託費が区分されていない

  • 会社側が食材の明細や在庫を把握していない

  • 社員食堂の運営を丸ごと外部業者に任せている

  • 従業員負担額を材料費ベースでしか判定していない

  • 月額7,500円以下だけを確認し、50%基準を軽視している


特に、令和8年度改正で月額限度額が引き上げられたことで、会社側が安心してしまいがちですが、資料でも、50%以上負担要件は変更されていないため、改正後も同様の指摘が想定されるとされています。


食事補助制度を見直す際のチェックポイント

社員食堂や食事補助を運用している会社は、次の点を確認しておくと安心です。


まず、現在の食事提供が、税務上、使用者が調理して支給する食事に当たるのか、使用者が購入して支給する食事に当たるのかを整理することです。


次に、外部委託している場合は、契約内容だけでなく、施設の無償使用、材料の提供、材料費と委託費の区分、在庫管理、メニュー管理ができているかを確認します。


さらに、従業員負担額が、正しく評価した食事の価額の50%以上になっているか、会社負担額が月額7,500円以下、税抜になっているかを確認する必要があります。


顧問先に伝えたいこと

税理士の立場からは、食事補助制度について、単に「月額7,500円まで非課税です」と説明するだけでは不十分です。特に社員食堂を外部委託している顧問先には、次の点を伝えたいです。

  • 非課税限度額は月額7,500円に引き上げられた

  • ただし、従業員50%以上負担の要件は残っている

  • 社員食堂の外部委託では、委託費を食事の価額に含めるかが重要

  • 材料費と委託費を明確に区分できないと、給与課税リスクがある

  • 材料明細や在庫管理など、会社側の関与を説明できる資料が必要


このあたりを事前に確認しておくことで、税務調査での思わぬ指摘を防ぎやすくなります。


まとめ

令和8年度税制改正により、会社が役員や従業員に支給する食事について、非課税となる会社負担額の限度は月額7,500円以下、税抜へ引き上げられました。ただし、食事支給が非課税となるためには、これに加えて、従業員が食事の価額の50%以上を負担していることが必要であり、この要件は改正後も変わっていません。社員食堂の運営を外部業者に委託している場合、会社が材料を購入・管理し、調理のみを外部委託しているといえる実態があれば、材料費等の直接費で食事の価額を評価できます。一方で、実態として外部業者から食事を購入していると判断される場合には、外部業者への委託費を含む支払額で食事の価額を評価することになり、従業員50%以上負担要件を満たさず、給与課税が生じる可能性があります。


食事補助制度は福利厚生として有効ですが、外部委託している社員食堂では、税務上の判定を誤りやすい分野です。令和8年度改正後も、月額7,500円基準だけでなく、50%基準と食事の価額の評価方法をあわせて確認しておくことが大切です。


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