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【2026年3月期から】有価証券報告書に「平均年間給与の対前年比増減率」が新設|算定式と株式報酬の扱いの注意点

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 4月28日
  • 読了時間: 4分

おはようございます!代表の安田です。


2026年3月期の有価証券報告書から、従業員情報の開示において、新たに「平均年間給与の対前年比増減率」の記載が求められることになりました。


従前から「平均年間給与」自体の開示は行なわれていましたが、増減率の追加により、投資家・求職者・取引先などステークホルダーが、賃上げ状況をより直感的に比較しやすくなります。


一方で、平均年間給与に含める「給与の範囲」には明確な法令解説が十分でなく、特に株式報酬(譲渡制限付株式・ストックオプション等)を含めるかで実務のばらつきが見られる点が注意点です。


本記事では、公認会計士の立場から、増減率の算定方法と実務対応のポイントを整理します。


1. 何が追加される?「平均年間給与の対前年比増減率」

新たに求められる増減率は、次の算式で計算します。


(当事業年度の平均年間給与 − 前事業年度の平均年間給与) ÷ 前事業年度の平均年間給与


つまり、ベースとなる情報は従来どおりの「平均年間給与」であり、そこから前年差を率で示す形式です。


2. 平均年間給与に「賞与を含める」ことは明記されている

平均年間給与の具体的な範囲について、法令上の詳細な説明は多くないものの、開示府令 第二号様式の記載上の注意において、平均年間給与には賞与を含める旨が規定されています。

そのため、実務ではまず、

  • 基本給+諸手当

  • 賞与

を含めた金額を前提に、集計・算定の整合性を取ることが出発点になります。


3. 実務で割れやすい論点:株式報酬費用を「給与」に含めるか?

実際の開示状況を概観すると、株式報酬費用の取扱いで各社の対応が分かれているとされています。具体的には、

  • 譲渡制限付株式(RS)やストック・オプション(SO)に係る費用を給与に含める企業

  • これらを除外して算定する企業

が存在する、という整理です。


そして現時点では、「どちらが望ましい」と一概には言えず、各社が自社の報酬実態に即して判断した結果であれば差異は許容されると考えられている、というスタンスが示されています。


4. 企業が取るべき実務方針:制度趣旨+自社実態に沿って説明可能にする

増減率が追加されると、前年差の変動理由が注目されやすくなります。株式報酬の有無によって増減率がぶれる場合、投資家から見れば「賃上げなのか/報酬設計の変更なのか」が区別しづらくなることもあります。


実務的には、次の観点で方針を決めるのがおすすめです。

  • 報酬実態の反映:自社の賃金・報酬制度に照らし、給与としての実態に合うか

  • 継続性:前年と同じ範囲・同じロジックで集計しているか(比較可能性)

  • 説明可能性:株式報酬の影響が大きいなら、社内で変動要因を説明できる状態か

  • 運用負荷:算定に必要なデータが毎期安定的に取得できるか


5. すぐ使えるチェックリスト(開示・監査対応向け)

  1. 平均年間給与の集計範囲(基本給・手当・賞与等)を明文化し、前年と一致させる

  2. 株式報酬(RS/SO等)を含める/除外する方針を決め、理由を文書化

  3. 増減率の算式どおりに計算し、前年差の主要因を整理(ベースアップ、賞与水準、構成比変化等)

  4. 監査・レビューに備え、算定根拠(データ出所、集計手順、対象従業員範囲)を証跡として残す

  5. 開示後の問い合わせ(投資家・採用候補者等)を想定し、説明文案を準備


まとめ:増減率の開示は「数字の見え方」が強まる。自社の報酬実態に沿った一貫性ある算定が重要

2026年3月期の有報から、平均年間給与の「対前年比増減率」が追加され、賃金動向がより比較されやすくなります。算定式は明確ですが、平均年間給与の範囲は詳細な法令解説が十分ではなく、特に株式報酬費用を含めるかどうかで各社の対応に差があります。


現時点では、一律の正解というより、制度趣旨を踏まえつつ、自社の報酬実態を最も適切に反映し、継続的・説明可能な方法で開示することが重要です。


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