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期中切放し法を適用する場合は注記が必要に|期中会計基準第37号で押さえる有価証券減損・棚卸資産切下げの実務

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 4 時間前
  • 読了時間: 8分

おはようございます!代表の安田です。


2026年4月1日以後開始する事業年度から、企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」が適用されています。


この期中会計基準は、従来の中間会計基準と四半期会計基準を統合したものであり、金融商品取引法に基づく第1種中間財務諸表と、取引所規則に基づく第1・第3四半期財務諸表の双方に対応することを目的として開発されました。


適用初年度において実務上注意したいのが、有価証券の減損処理と棚卸資産の簿価切下げに関する取扱いです。従来は、一定の条件のもとで「切放し法」と「洗替え法」の選択適用が認められていましたが、期中会計基準では、原則として期中洗替え法を適用し、例外的に期中切放し法の継続適用を認める形に整理されています。


本日は、期中切放し法と期中洗替え法の違い、注記が必要となるケース、第1・第3四半期決算短信での対応について、公認会計士の視点から解説します。


1. 期中会計基準とは

期中会計基準は、従来の中間会計基準と四半期会計基準を統合した新しい会計基準です。


これまで中間財務諸表と四半期財務諸表では、それぞれの実務に応じた会計処理が行なわれてきました。期中会計基準では、基本的に従来の四半期・中間における会計処理を維持しつつ、企業の報告頻度の違いによって年次業績の測定が左右されるべきではない、という考え方が取り入れられています。


この考え方が特に影響するのが、次の2つです。

  • 有価証券の減損処理

  • 棚卸資産の簿価切下げ

これらについて、期中会計基準では、従来と異なる取扱いが設けられています。


2. 期中洗替え法が原則に

期中会計基準では、有価証券の減損処理と棚卸資産の簿価切下げについて、期中洗替え法が原則とされています。


期中洗替え法とは、期中会計期間ごとに評価損や簿価切下げの状況を見直し、前回の処理を洗い替える方法です。たとえば、第1四半期末に時価が大きく下落して評価損を計上したとしても、中間期末に時価が一定程度回復していれば、その時点の状況に応じて評価損の金額を見直します。


この方法は、期中の一時点で発生した評価損をそのまま固定するのではなく、その後の状況変化を反映する点に特徴があります。


3. 期中切放し法とは

一方、期中切放し法とは、期中に一度計上した評価損や簿価切下げを、その後の期中会計期間で戻し入れない方法です。


従来の四半期会計基準・中間会計基準では、有価証券の減損処理や棚卸資産の簿価切下げについて、継続適用を条件に切放し法と洗替え法の選択適用が認められていました。なお、棚卸資産の簿価切下げについては、年度決算で切放し法を適用している場合に限られていました。


しかし、期中会計基準では、期中洗替え法が原則となり、期中切放し法は、期中会計基準の適用前から切放し法を適用していた企業に限り、例外的に継続適用が認められる整理となっています。


つまり、今後新たに期中切放し法を選択するというよりも、従来から切放し法を採用していた企業が継続する場合に限り認められる、という位置づけです。


4. 期中切放し法と期中洗替え法で結果が変わるケース

期中切放し法と期中洗替え法では、会計処理の結果が異なることがあります。


たとえば、3月決算会社が、期首に時価のある有価証券を1,000で取得したとします。その後、第1四半期末の時価が200、中間期末の時価が300となり、いずれの時点でも時価が回復する見込みがないと判断された場合を考えます。


この場合、第1四半期末では、期中切放し法でも期中洗替え法でも、時価200まで下落しているため、有価証券評価損800を計上します。


しかし、中間期末では処理が異なります。

期中切放し法では、第1四半期末に計上した評価損800をそのまま維持します。一方、期中洗替え法では、中間期末の時価300を基に評価損を700に見直します。


このように、同じ有価証券であっても、採用する方法によって期中財務諸表に表示される損益が異なる場合があります。


5. 期中切放し法を適用する場合は注記が必要

期中会計基準では、有価証券の減損処理や棚卸資産の簿価切下げについて、期中切放し法を適用する場合には、その旨の注記が必要とされています。


これは、期中洗替え法が原則である一方、期中切放し法は例外的な継続適用であり、利用者に会計処理の前提を明らかにする必要があるためです。


特に、有価証券の評価損や棚卸資産の簿価切下げは、損益に大きな影響を与える可能性があります。投資家や金融機関などの財務諸表利用者が、期中損益の内容を適切に理解するためにも、どちらの方法を採用しているかを示すことは重要です。


6. 第1・第3四半期決算短信では対応が分かれる可能性

一方で、第1・第3四半期決算短信における四半期財務諸表では、実務上、注記対応が分かれる可能性があります。


取引所の四半期財務諸表等の作成基準では、一部を除き注記の省略が認められています。そして、期中切放し法を適用している旨の注記は、第1・第3四半期決算短信において必須注記とはされていません。

そのため、第1・第3四半期決算短信の四半期財務諸表では、

  • 期中切放し法を適用している旨を注記する会社

  • 注記を省略する会社

のいずれの対応も考えられます。


もっとも、注記が必須でないからといって、常に省略すべきとは限りません。評価損や棚卸資産の切下げが重要な場合、また投資家にとって会計処理の違いが業績理解に影響する場合には、任意で説明を加えることも検討に値します。


7. 期中洗替え法へ変更する場合の経過措置

従来、切放し法を適用していた企業が、期中会計基準の適用を機に期中洗替え法へ変更することも考えられます。


この場合、適用初年度については、経過措置により遡及適用は不要とされています。

つまり、過年度の四半期・中間財務諸表を遡って修正する必要はなく、適用初年度から新たな処理を適用できることになります。


ただし、会計処理の変更により期中損益の見え方が変わる可能性があるため、社内では変更理由、影響額、開示方針を整理しておくことが望まれます。


8. 実務で確認すべきポイント

期中会計基準の適用にあたり、企業は次の点を確認しておく必要があります。


(1)従来の会計処理を確認する

まず、自社がこれまで有価証券の減損処理や棚卸資産の簿価切下げについて、切放し法を採用していたのか、洗替え法を採用していたのかを確認します。


(2)期中洗替え法へ変更するか検討する

期中会計基準では期中洗替え法が原則となるため、従来切放し法を採用していた企業は、期中洗替え法へ変更するか、例外的に期中切放し法を継続適用するかを検討する必要があります。


(3)期中切放し法を継続する場合は注記を準備する

期中切放し法を適用する場合は、その旨の注記が必要になります。中間財務諸表だけでなく、第1・第3四半期決算短信でどのように対応するかも含めて、開示方針を整理しておく必要があります。


(4)決算短信での任意開示を検討する

第1・第3四半期決算短信では注記省略が認められる場合がありますが、重要性が高い場合には、投資家に誤解を与えないよう任意で説明することも選択肢になります。


(5)監査人・レビュー担当者と早めに協議する

期中切放し法と期中洗替え法では損益に差が出る場合があります。特に評価損や棚卸資産の切下げ額が大きい企業では、監査人やレビュー担当者と早めに方針をすり合わせておくことが重要です。


9. 実務チェックリスト

期中会計基準への対応にあたり、以下を確認しておくとよいでしょう。

  • 有価証券の減損処理について、従来の方法を確認したか

  • 棚卸資産の簿価切下げについて、従来の方法を確認したか

  • 期中洗替え法へ変更するか、期中切放し法を継続するかを決定したか

  • 期中切放し法を継続する場合、注記文案を準備しているか

  • 第1・第3四半期決算短信で注記するか、省略するかの方針を決めているか

  • 期中洗替え法へ変更する場合、経過措置の適用を確認したか

  • 会計処理の違いによる損益影響を試算しているか

  • 監査人・レビュー担当者と事前に協議しているか

  • 開示チェックリストや決算短信テンプレートを更新したか


まとめ

2026年4月1日以後開始する事業年度から適用されている期中会計基準第37号では、有価証券の減損処理と棚卸資産の簿価切下げについて、期中洗替え法が原則とされました。


一方、従来から切放し法を適用していた企業については、例外的に期中切放し法の継続適用が認められます。ただし、期中切放し法を適用する場合には、その旨の注記が必要です。


第1・第3四半期決算短信では、取引所の作成基準上、当該注記が必須とされていないため、注記する会社と省略する会社で対応が分かれる可能性があります。しかし、会計処理の違いが業績理解に影響する場合には、投資家への分かりやすさを重視した説明も検討すべきです。


期中会計基準の適用初年度は、会計処理の選択、注記対応、決算短信での開示方針など、実務上の判断が多くなります。早めに従来の処理を確認し、監査人と協議しながら、適切な会計・開示対応を進めることが重要です。


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