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国税を分割で納付できる?e-Taxのダイレクト分割納付と事前相談の注意点を税理士が解説

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 6月3日
  • 読了時間: 15分

こんにちは!代表の安田です。


法人税、消費税、所得税などの納付時期に、資金繰りの都合で一括納付が難しくなることがあります。特に、売上の入金遅れ、大口取引先からの回収遅延、設備投資後の資金不足、想定以上の消費税納税などが重なると、納期限までに税金を全額納付できないケースもあります。


このような場合に検討できる手続きの一つが、e-Taxを利用した「ダイレクト分割納付」です。


ダイレクト分割納付とは、納期限を過ぎた国税について、税務署または国税局の徴収担当職員と事前に納付相談を行い、納付計画を立てたうえで、e-Tax上から複数回に分けて口座振替により納付する方法です。


これにより、税務署や金融機関の窓口に毎回出向かなくても、あらかじめ登録した納付予定日に、預貯金口座から分割納付を行なうことができます。


ただし、重要なのは、ダイレクト分割納付は「自由に分納できる制度」ではないという点です。納期限までに一括納付が困難な事情がある場合に、事前に税務署等へ相談し、納付計画を立てることが前提です。


事前相談をせずにe-Tax上で納付計画だけを登録しても、分割納付が認められず、財産の差押えなどの滞納処分が行なわれる可能性があります。


本日は、ダイレクト納付とダイレクト分割納付の違い、利用できる税目、分割可能期間と回数、事前相談の流れ、延滞税の注意点、税理士が代理で相談する場合のポイントを解説します。


ダイレクト納付とは

ダイレクト納付とは、e-Taxで申告書や納付情報を送信した後、事前に届け出た預貯金口座から、即時または指定した期日に国税を口座引落しで納付する手続きです。


インターネットバンキングを契約していなくても利用でき、税務署や金融機関の窓口へ行かずに納付できるため、法人・個人事業主の電子納税手段として広く使われています。

通常のダイレクト納付では、主に次のような使い方をします。

・申告書をe-Taxで送信した後、納付税額を口座振替で納付する
・納期限までの任意の日を指定して納付する
・源泉所得税や法人税、消費税などを電子納付する
・予納として納付する

あらかじめ「ダイレクト納付利用届出書」を提出し、利用開始手続きが完了していれば、e-Taxから納付日と納付金額を指定して納税できます。

納税のたびに金融機関へ行く必要がないため、経理業務の効率化にもつながります。


ダイレクト分割納付とは

ダイレクト分割納付とは、ダイレクト納付を利用して、納期限を経過した国税を複数回に分けて納付する手続きです。

納税者が納期限までに一括納付できない場合、税務署または国税局の徴収担当職員と事前に納付相談を行ない、納付計画を立てます。

その納付計画に基づき、e-TaxソフトWEB版の専用画面から、複数の納付予定日と納付金額を登録します。登録後は、指定した日ごとに、納税者本人名義の預貯金口座から口座引落しにより納付が行なわれます。


通常のダイレクト納付が「1回ごとの納付」を前提にしているのに対し、ダイレクト分割納付は「納付計画に基づく複数回の納付」をe-Taxで管理できる点が特徴です。


ただし、対象となるのは原則として納期限後の国税です。

納期限前の税金を自由に分割するための機能ではありません。


ダイレクト分割納付は事前相談が必須

ダイレクト分割納付で最も重要なのは、利用前に税務署等との事前相談が必要である点です。


税金は本来、納期限までに一括して納付するのが原則です。

そのため、納期限までに一括納付が難しい場合には、納税者の資金繰り、収支状況、今後の入金予定、納付可能額などを踏まえて、税務署等の徴収担当職員と納付計画を相談する必要があります。事前相談では、一般的に次のような資料を求められることがあります。

・直近の収支状況が分かる資料
・預貯金口座の明細
・売掛金の回収予定表
・資金繰り表
・月次試算表
・納付可能額の見込み
・今後の入出金予定

税務代理人が事前相談を行まうことも可能ですが、その場合には必要書類に加えて税務代理権限証書が必要になります。


事前相談なしで登録すると滞納処分のリスクがある

e-Tax上で分割納付計画を登録できるからといって、税務署等との相談を経ずに勝手に分割計画を登録してよいわけではありません。

事前相談を行なわずに納付計画を登録した場合、税務署側でその分割納付が認められない可能性があります。

その場合、納税者は税金を滞納している状態のままとなり、財産の差押えや公売などの滞納処分が行なわれることもあります。


「e-Taxで分納登録をしたから大丈夫」と考えるのは危険です。

分割納付を検討する場合は、必ず事前に所轄の税務署または国税局の徴収担当へ相談しましょう。

資金繰りが苦しくなってからではなく、納期限までに一括納付が難しいと分かった時点で早めに相談することが大切です。


分割できる期間と回数

ダイレクト分割納付では、一度の登録により、登録日から12か月後の日付まで納付予定日を指定できます。

また、最大48回まで分割納付が可能です。

たとえば、毎月1回ずつ12回で納付することもできますし、月に複数回の納付日を設定することもできます。


ただし、分割可能期間や回数は、あくまでシステム上登録できる上限です。

実際にどのような納付計画が認められるかは、納税者の収支状況や納付能力、滞納額、税務署等との相談内容によって決まります。


「最大48回まで登録できるから、必ず48回払いにできる」という意味ではありません。

税務署等との事前相談で、現実的に履行できる納付計画を立てることが重要です。


対象となる税目

ダイレクト分割納付は、原則として幅広い国税に利用できます。

法人税、消費税、所得税、相続税、贈与税など、納期限を経過した国税について、一定の条件を満たせば分割納付の対象になります。


ただし、すべての税目が対象になるわけではありません。

原則として全税目としつつ、源泉所得税の自主納付分、源泉所得税及び復興特別所得税の自主納付分、印紙税のうち税印押なつ・納付計器に係るもの、国際観光旅客税などは除かれると整理されています。


実際に自社・自分の納税がダイレクト分割納付の対象になるかどうかは、税務署等への事前相談の際に確認しましょう。


納付額には延滞税も加算される

ダイレクト分割納付を利用する場合でも、納期限を過ぎた税金については延滞税が発生します。


分割納付は、納税義務そのものを減らす制度ではありません。

納期限までに完納できなかった場合、本税に加えて、完納の日までの期間に応じた延滞税が加算されます。そのため、納付計画を立てる際には、本税だけでなく延滞税も考慮する必要があります。


たとえば、消費税100万円を納期限までに納付できず、数か月に分けて納付する場合、最終的な負担は100万円だけではありません。延滞税が加算されるため、納付総額は増えます。


資金繰りを考える際には、「分納できるから納税負担が軽くなる」のではなく、「一時的な資金負担を分散できるが、延滞税は発生する」と理解しておきましょう。


ダイレクト分割納付と納税猶予は同じではない

税金を期限までに納付できない場合、「分割納付」「納税猶予」「換価の猶予」など、似たような言葉が出てきます。

ダイレクト分割納付は、e-Taxを利用して分割納付計画を登録し、口座引落しで納付するための手続きです。


一方、納税猶予や換価の猶予は、一定の要件を満たす場合に、納税の猶予や財産の換価を猶予する制度です。


これらは制度趣旨や要件が異なります。

納期限までに納付できない場合には、単に「分納したい」と伝えるだけでなく、事業の状況、資金繰り、納付可能額、猶予制度の適用可能性も含めて、税務署等へ相談することが大切です。


税理士が代理で相談できる

ダイレクト分割納付では、税務代理人である税理士が納税者に代わって税務署等と事前相談を行なうこともできます。

資金繰りや税額、今後の納付計画を税務署へ説明する際には、税理士が関与していると資料整理がしやすくなります。

税理士が代理で相談する場合には、一般的な必要資料に加えて、税務代理権限証書が必要です。実務上は、次のような流れになります。

1. 納期限までに一括納付が難しいことを把握する
2. 税理士へ資金繰り状況を相談する
3. 納付可能額や入金予定を整理する
4. 必要資料を準備する
5. 税理士または納税者が税務署等へ事前相談する
6. 納付計画を立てる
7. e-Taxで分割納付計画を登録する
8. 指定日に口座引落しで納付する

ただし、税理士に依頼すれば必ず分割納付が認められるわけではありません。

最終的には、税務署等が納税者の個別事情を踏まえて判断します。


ダイレクト分割納付を利用するための前提

ダイレクト分割納付を利用するには、そもそもダイレクト納付を利用できる状態になっている必要があります。つまり、事前にダイレクト納付利用届出書を提出し、預貯金口座の登録が完了していなければなりません。


利用開始までに一定の日数がかかることもあります。

そのため、資金繰りが厳しくなってから慌てて登録するのではなく、普段からダイレクト納付を利用できる状態にしておくと安心です。


特に、法人税・消費税・源泉所得税など、定期的に国税を納付する事業者は、ダイレクト納付を導入しておくことで、通常の納付にも分割納付にも対応しやすくなります。


どのような場合に相談すべきか

次のような場合には、早めに税務署または税理士へ相談しましょう。

・消費税の納税額が想定より大きい
・売掛金の回収が遅れている
・大口取引先からの入金が遅延している
・資金繰り表上、納期限までに全額納付できない
・金融機関からの融資実行が納期限に間に合わない
・設備投資や仕入代金の支払いが重なっている
・過去の滞納分も含めて整理したい
・税務調査後の追徴税額を一括納付できない

納期限が過ぎてから放置すると、督促、延滞税、差押えなどのリスクが高まります。

「納められないから何もしない」のではなく、「いつ、いくらなら納められるのか」を整理して、早めに相談することが重要です。


事前相談で準備したい資料

税務署等との事前相談では、単に「お金がない」と伝えるだけでは不十分です。

納付計画を立てるには、客観的な資料が必要です。

準備しておきたい資料は次のとおりです。

・直近3か月程度の資金繰り表
・預貯金口座の入出金明細
・売掛金の回収予定表
・買掛金や借入金の支払予定表
・月次試算表
・納税額の内訳
・今後の売上見込み
・金融機関との融資相談状況
・納付可能額の計算資料

個人事業主の場合は、事業用口座だけでなく、生活費や個人支出との関係も整理しておくと説明しやすくなります。法人の場合は、役員借入金、金融機関借入、売掛金回収、固定費の支払予定なども確認しましょう。


分割納付計画を立てるときの考え方

分割納付計画を立てる際には、無理な計画を作らないことが大切です。

たとえば、毎月の資金繰りが厳しいのに、短期間で多額の納付を約束してしまうと、途中で計画どおりに納付できなくなる可能性があります。

一方で、納付期間を長くすればするほど延滞税の負担も増えます。

現実的な納付計画を作るには、次の点を確認しましょう。

・毎月の固定費
・給与や社会保険料の支払予定
・仕入や外注費の支払予定
・売掛金の入金予定
・借入金の返済予定
・税金以外の未払金
・今後発生する消費税や法人税の予定納税
・納付計画中に発生する新たな税金

過去の滞納分だけを見て計画を立てると、次の納税時期にまた資金不足になることがあります。

今後発生する税金も含めて、資金繰り全体で考えることが重要です。


口座残高不足に注意

ダイレクト分割納付では、指定した納付予定日に預貯金口座から引落しが行なわれます。

そのため、納付予定日に口座残高が不足していると、引落しができません。

一度でも計画どおりに納付できないと、税務署等との信頼関係にも影響し、その後の対応が難しくなることがあります。


納付予定日の前には、必ず口座残高を確認しましょう。

特に、同じ日に給与、家賃、仕入代金、借入返済、社会保険料などの引落しが重なる場合は注意が必要です。


納付用口座を分ける、納付予定日の数日前に資金を移す、資金繰り表に納税予定日を明記するなど、社内管理の仕組みを整えておきましょう。


分割納付中も新たな税金は期限内納付が原則

過去の国税について分割納付計画を立てている間も、新たに発生する税金は原則として期限内に納付する必要があります。

たとえば、前期の消費税を分割納付している間に、次の中間納付や源泉所得税の納期限が来ることがあります。

分割納付中だからといって、新たな税金の納付が自動的に猶予されるわけではありません。

そのため、資金繰り計画には、現在分割納付している税金だけでなく、今後発生する税金も織り込む必要があります。

税務署等との相談時にも、今後の納税予定を含めて説明できるようにしておくとよいでしょう。


経理担当者が社内で確認すべきこと

法人で納税資金が不足しそうな場合、経理担当者は早めに経営者へ報告し、対応方針を決める必要があります。

特に消費税は、赤字でも納税が発生することがあります。

利益は出ていないのに消費税だけ大きく発生するケースもあるため、決算直前になって慌てないようにしましょう。社内では次の点を確認します。

・納税額の概算
・納期限
・現在の預金残高
・納期限までの入金予定
・納期限までの支払予定
・金融機関からの借入可能性
・役員からの一時的な資金補填の可否
・税務署への事前相談の必要性
・税理士への相談タイミング

納税は資金繰りの重要項目です。

決算申告書の作成だけでなく、納税資金の確保まで含めてスケジュールを管理しましょう。


ダイレクト分割納付のメリット

ダイレクト分割納付には、次のようなメリットがあります。

・税務署や金融機関へ毎回行かずに分割納付できる
・複数の納付予定日を一度に登録できる
・口座引落しで納付漏れを防ぎやすい
・税理士が関与して納付計画を整理しやすい
・資金繰りに合わせて納付日と金額を管理しやすい

特に、複数回の分割納付を行う場合、毎回納付書を作成して金融機関へ行くのは手間がかかります。e-Tax上で分割納付計画を登録できれば、納付管理の効率化につながります。


ダイレクト分割納付の注意点

一方で、注意点もあります。

・事前相談が必須
・納期限後の国税が対象
・延滞税が発生する
・すべての税目が対象ではない
・必ず希望どおりの分割計画が認められるとは限らない
・口座残高不足があると引落しできない
・事前相談なしの登録では滞納処分のリスクがある

ダイレクト分割納付は便利な電子納税手段ですが、税金の納付義務を軽くする制度ではありません。

納税資金が不足する場合の対応策の一つとして、早めに相談し、適切に利用することが大切です。


よくある誤解

  • e-Taxで登録すれば自由に分納できる

誤りです。ダイレクト分割納付は、税務署等との事前相談を行い、納付計画を立てたうえで利用する手続きです。


  • 納期限前の税金も自由に分割できる

原則として、ダイレクト分割納付の対象は納期限を経過した国税です。納期限前の通常納付とは区別して考える必要があります。


  • 分割納付すれば延滞税はかからない

納期限を過ぎた税金には、完納の日までの期間に応じて延滞税が加算されます。分割納付をしても延滞税がなくなるわけではありません。


  • 最大48回まで必ず認められる

最大48回はシステム上の上限であり、実際の納付計画は税務署等との相談により決まります。納税者の状況によっては希望どおりにならないこともあります。


  • 税理士に頼めば必ず分割納付できる

税理士が代理で事前相談を行うことはできますが、分割納付が認められるかどうかは、納税者の個別事情や納付計画によって判断されます。


  • 事前相談せずに登録しても、引落しされれば問題ない

事前相談を経ずに登録した場合、分割納付が認められず、滞納処分が行われる可能性があります。必ず事前相談が必要です。


実務上のチェックリスト

ダイレクト分割納付を検討する場合は、次の点を確認しましょう。


1. 納期限までに一括納付できるか確認する

納税額、預金残高、入金予定、支払予定を確認します。


2. ダイレクト納付の利用手続きが完了しているか確認する

預貯金口座の登録が済んでいるかを確認します。


3. 税務署等へ事前相談する

納期限までに一括納付が難しい場合は、所轄税務署または国税局の徴収担当へ相談します。


4. 必要資料を準備する

収支状況、預貯金明細、資金繰り表、売掛金回収予定などを整理します。


5. 納付計画を立てる

いつ、いくら納付できるかを現実的に検討します。


6. e-Taxで納付予定日と納付金額を登録する

事前相談で立てた納付計画に基づき、専用画面から登録します。


7. 口座残高を管理する

納付予定日の前に、引落し口座の残高を確認します。


8. 新たに発生する税金も管理する

分割納付中でも、次の納税期限は通常どおり到来します。


まとめ

国税の納付が納期限までに一括で難しい場合、e-Taxを利用したダイレクト分割納付を検討できることがあります。

ダイレクト分割納付とは、ダイレクト納付を利用できる納税者が、納期限を経過した国税について、税務署または国税局の徴収担当職員と事前に納付相談を行い、納付計画を立てたうえで、e-TaxソフトWEB版の専用画面から複数の納付予定日を登録し、口座引落しにより分割納付する手続きです。


一度の登録で、登録日から12か月後の日付まで納付予定日を指定でき、最大48回の分割納付が可能です。ただし、これはシステム上の上限であり、実際の納付計画は税務署等との相談により決まります。また、分割納付をしても、納期限を過ぎた本税には完納の日までの期間に応じた延滞税が加算されます。


ダイレクト分割納付で最も重要なのは、事前相談です。

納期限までに一括納付が難しい場合には、必ず事前に所轄税務署または国税局の徴収担当職員へ相談し、収支状況や預貯金明細などをもとに納付計画を立てる必要があります。

税理士などの税務代理人が相談を行なうことも可能ですが、その場合には税務代理権限証書が必要です。


事前相談をせずにe-Tax上で納付計画を登録した場合には、分割納付が認められず、財産の差押えや公売などの滞納処分が行われる可能性があります。


納税資金に不安がある場合は、放置せず、早めに資金繰り表や入金予定を整理し、税務署または税理士へ相談しましょう。

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