インボイス制度で免税事業者から仕入れた場合の法人税処理は?仕入税額控除できない部分の会計処理を税理士が解説
- 安田 亮
- 6 時間前
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こんにちは!代表の安田です。
インボイス制度が始まったことで、免税事業者やインボイス登録をしていない事業者から仕入れを行った場合、消費税の仕入税額控除に制限がかかるようになりました。
ただし、制度開始後すぐに全額控除できなくなるわけではありません。
一定期間は経過措置が設けられており、免税事業者等からの課税仕入れについても、仕入税額相当額の一定割合を控除できます。
ここで経理担当者が迷いやすいのが、仕入税額控除できない部分を法人税上どう処理するのかという点です。
税抜経理方式を採用している法人では、通常、消費税相当額を「仮払消費税等」として処理します。
しかし、免税事業者等からの仕入れについて、インボイス制度の経過措置により仕入税額控除できない部分は、法人税上「仮払消費税等」として清算するのではなく、仕入や経費などの「対価の額」に含めて処理します。
つまり、免税事業者から税込11万円の商品を仕入れた場合に、消費税相当額1万円のうち一部しか仕入税額控除できないのであれば、控除できない部分は商品の取得価額や経費に含める必要があります。
本日は、インボイス制度における免税事業者等からの仕入れの経過措置、仕入税額控除できない部分の法人税処理、経費・棚卸資産ごとの決算時対応、申告調整が必要になるケースを解説します。
免税事業者等からの仕入れは原則として仕入税額控除できない
インボイス制度では、消費税の仕入税額控除を受けるために、原則として、適格請求書発行事業者が発行したインボイスの保存が必要です。
そのため、免税事業者やインボイス登録をしていない課税事業者からの課税仕入れについては、原則として仕入税額控除を受けることができません。
ただし、制度開始直後から全額控除不可とすると、買手・売手の双方に大きな影響が生じます。
そこで、一定期間は、免税事業者等からの課税仕入れについて、仕入税額相当額の一部を控除できる経過措置が設けられています。この経過措置により、一定の帳簿・請求書等を保存している場合には、免税事業者等からの仕入れであっても、一定割合を仕入税額控除できます。
免税事業者等からの仕入れに係る経過措置
現行の経過措置は、次のように段階的に控除割合が下がる仕組みです。
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで
→ 仕入税額相当額の80%を控除可能
令和8年10月1日から令和10年9月30日まで
→ 仕入税額相当額の70%を控除可能
令和10年10月1日から令和12年9月30日まで
→ 仕入税額相当額の50%を控除可能
令和12年10月1日から令和13年9月30日まで
→ 仕入税額相当額の30%を控除可能
たとえば、標準税率10%対象の仕入れで、本体価格10万円、消費税相当額1万円、税込11万円の取引があったとします。
令和5年10月1日から令和8年9月30日までの80%控除期間であれば、消費税相当額1万円のうち8,000円は仕入税額控除できます。一方、残り2,000円は仕入税額控除できません。
この2,000円を法人税上どう処理するかが今回のテーマです。
法人税では控除できない部分を「対価の額」に含める
税抜経理方式を採用している法人では、通常、課税仕入れに係る消費税額を「仮払消費税等」として処理します。
しかし、インボイス制度において免税事業者等からの仕入れに係る仕入税額控除が制限される場合、控除できない部分については、仮払消費税等として扱いません。
法人税上は、その控除できない部分を、資産や経費の「対価の額」に含めて所得計算を行ないます。
たとえば、80%控除期間に、免税事業者から本体価格10万円、消費税相当額1万円、税込11万円の商品を仕入れた場合を考えます。
控除できる消費税額は8,000円です。
控除できない2,000円は、仮払消費税等ではなく、仕入の対価に含めます。
したがって、税務上の考え方としては、次のようになります。
仕入等の対価の額:102,000円
仮払消費税等:8,000円
支払総額:110,000円つまり、法人税上は、控除できない消費税相当額を「費用や資産の取得価額に含める」と理解すると分かりやすいです。
仕入時に完結させる仕訳例
会計システムが対応している場合、仕入時点で、仕入税額控除できる部分とできない部分を分けて処理する方法があります。
80%控除期間に、免税事業者から本体価格10万円、消費税相当額1万円、税込11万円の商品を仕入れた場合の仕訳例は、次のとおりです。
仕入 102,000 / 現金預金 110,000
仮払消費税等 8,000この仕訳では、仕入税額控除できる8,000円だけを仮払消費税等とし、控除できない2,000円は仕入に含めています。
この方法で処理できれば、法人税上の所得計算と会計処理が一致しやすく、決算時の追加調整も少なくなります。
ただし、実務上は、会計システムや販売管理システムがこの処理に対応していないことがあります。従来どおり、本体価格10万円と仮払消費税等1万円に分けて仕訳している会社も少なくありません。
システム改修が難しい場合は決算時に対応できる
免税事業者等からの仕入れについて、仕入時点で控除不能額を対価に含める処理をするには、会計システム側で細かい税区分設定が必要になることがあります。
しかし、すべての会社がすぐにシステム改修できるわけではありません。
このような場合、仕入時は従来と同じように処理し、決算時に控除できない部分を追加処理する方法も考えられます。
たとえば、80%控除期間中に、免税事業者へ税込11万円を支払った場合、支払時にはいったん次のように処理します。
経費 100,000 / 現金預金 110,000
仮払消費税等 10,000その後、決算時に、仕入税額控除できない2,000円について、次のような追加仕訳を行います。
雑損失 2,000 / 仮払消費税等 2,000本来は、控除できない2,000円を経費本体に含めるべきですが、決算時に雑損失として処理しても、法人税上は損金算入される点では同じです。
そのため、経費処理の場合は、結果として法人税申告書での調整が不要になるケースがあります。
経費支払いの場合は雑損失処理でも申告調整不要になりやすい
免税事業者等に対して、福利厚生費、外注費、修繕費、消耗品費などの経費を支払った場合を考えます。
80%控除期間中に、本体価格10万円、消費税相当額1万円、税込11万円を支払った場合、控除できない部分は2,000円です。
この2,000円は本来、その経費の対価に含めるべきものです。
しかし、支払時にいったん仮払消費税等1万円として処理している場合には、決算時に2,000円を雑損失へ振り替えることで、結果として損金算入されます。
雑損失 2,000 / 仮払消費税等 2,000この場合、法人税上は、本来の経費として損金になるか、雑損失として損金になるかの違いはありますが、損金算入される金額は同じです。
そのため、交際費等のように別途損金算入制限がある費用でない限り、通常は申告調整不要と考えられます。ただし、交際費、寄附金、役員給与、資産取得に関係する支出などは別途検討が必要です。
「経費なら全部雑損失でよい」と機械的に処理するのではなく、支出の内容を確認しましょう。
棚卸資産を仕入れた場合は注意が必要
経費の場合と異なり、棚卸資産を仕入れた場合には注意が必要です。
商品や製品などの棚卸資産について、控除できない消費税相当額は、原則として商品の取得価額に含まれます。
その商品が期中にすべて販売されていれば、取得価額は売上原価となり、結果として損金算入されます。
この場合、決算時に控除不能額を雑損失として処理しても、所得計算上の影響は生じにくく、申告調整は不要になりやすいです。
しかし、期末に在庫が残っている場合は違います。
期末在庫に対応する控除不能額は、まだ売上原価になっていません。
本来は棚卸資産の取得価額に含まれ、翌期以降にその商品が販売されたときに売上原価になります。
それにもかかわらず、決算時に控除不能額の全額を雑損失として損金処理してしまうと、期末在庫に対応する部分まで当期の損金にしてしまうことになります。
そのため、期末在庫に対応する部分については、法人税申告で加算調整が必要になります。
<具体例:80%控除期間に商品20個を仕入れ、5個が期末在庫として残った場合>
具体例で見てみましょう。
X期に、免税事業者から次の商品を仕入れたとします。
商品単価:本体価格100,000円
消費税相当額:10,000円
税込価格:110,000円
仕入数量:20個
税込総額:2,200,000円
消費税相当額:200,000円
期末在庫:5個
販売済み:15個80%控除期間であれば、消費税相当額20万円のうち80%、つまり16万円は仕入税額控除できます。
一方、残り20%の4万円は仕入税額控除できません。
この4万円は、本来、商品の取得価額に含めるべき金額です。
20個のうち15個は期中に販売済みなので、その15個分に対応する3万円は売上原価として当期の損金になります。
しかし、5個は期末在庫として残っています。
5個分に対応する1万円は、まだ売上原価になっていないため、当期の損金にはできません。
したがって、決算時に控除不能額4万円全額を雑損失にしている場合には、期末在庫5個分に対応する1万円を法人税申告書で加算する必要があります。
控除不能額:40,000円
期末在庫対応分:40,000円 × 5個 / 20個 = 10,000円
法人税申告で加算すべき額:10,000円この加算は、商品の税務上の簿価が会計上の簿価を上回る部分として、別表四で加算し、別表五(一)で留保管理することになります。
期末在庫がなければ申告調整は不要になりやすい
同じ棚卸資産でも、期末在庫が発生しない場合は取扱いがシンプルです。
たとえば、X期に商品20個を仕入れ、そのすべてをX期中に販売した場合を考えます。
この場合、控除できない消費税相当額は、本来すべて売上原価になります。
したがって、仕入時にいったん仮払消費税等として処理し、決算時に控除不能額を雑損失として処理したとしても、結果的に当期の損金になる点は同じです。
この場合、所得金額に加算すべき期末在庫対応額がないため、通常は法人税申告での調整は不要です。つまり、棚卸資産の場合は、期末在庫の有無が非常に重要です。
期末在庫なし
→ 控除不能額は全額売上原価相当
→ 雑損失処理でも申告調整不要になりやすい
期末在庫あり
→ 在庫対応分は当期損金にならない
→ 雑損失処理している場合は加算調整が必要経過措置終了後も考え方は同じ
経過措置が進むにつれて、仕入税額控除できる割合は下がっていきます。
80%控除期間では控除不能部分は20%ですが、70%控除期間では30%、50%控除期間では50%、30%控除期間では70%になります。
経過措置が終了し、控除できない部分が大きくなるほど、法人税処理への影響も大きくなります。ただし、基本的な考え方は同じです。
免税事業者等からの仕入れに係る仕入税額相当額のうち、仕入税額控除できない部分は、法人税上、対価の額に含めます。
経費であれば、その経費の額に含めます。
棚卸資産であれば、商品の取得価額に含めます。
固定資産であれば、固定資産の取得価額に含めます。
したがって、控除不能額を単純に雑損失にする決算時対応を行う場合には、その支出が経費なのか、棚卸資産なのか、固定資産なのかを確認する必要があります。
固定資産を取得した場合は取得価額に含める
免税事業者等から機械装置、工具器具備品、建物附属設備、ソフトウェアなどの固定資産を購入する場合もあります。
この場合、仕入税額控除できない部分は、法人税上、固定資産の取得価額に含めます。
たとえば、免税事業者から税込110万円の備品を購入し、消費税相当額10万円のうち2万円が控除できない場合、その2万円は固定資産の取得価額に含めて減価償却の対象にします。
この2万円を決算時に雑損失として全額損金算入してしまうと、本来は減価償却で費用化すべき金額を一時に損金算入することになってしまいます。
そのため、固定資産については、経費と同じ感覚で雑損失処理しないよう注意が必要です。
固定資産を取得した場合は、固定資産台帳の取得価額にも反映させる必要があります。
経過措置を受けるには帳簿・請求書等の保存が必要
免税事業者等からの仕入れに係る経過措置を受けるには、一定の帳簿と請求書等の保存が必要です。
帳簿には、通常の記載事項に加えて、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を記載します。たとえば、次のような記載が考えられます。
・80%控除対象
・免税事業者からの仕入れ
・経過措置対象
・インボイス未登録先また、請求書等については、区分記載請求書等と同様の記載事項が必要です。
インボイスではないから何も保存しなくてよい、というわけではありません。
経過措置を適用するには、帳簿と請求書等の保存要件を満たしているか確認しましょう。
令和6年10月1日以後開始課税期間からは金額上限にも注意
現行の国税庁Q&Aでは、令和6年10月1日以後に開始する課税期間について、一の免税事業者等から行う経過措置対象仕入れの額が一定金額を超える場合、その超える部分について経過措置を適用できない取扱いが示されています。
具体的には、課税期間に応じて、税込10億円または税込1億円の上限が設けられています。
多くの中小企業では影響がないケースも多いと思われますが、特定の免税事業者等との取引金額が大きい法人では注意が必要です。
経過措置の控除割合だけでなく、金額上限の有無も確認しましょう。
会計システム対応をどうするか
免税事業者等からの仕入れが多い法人では、会計システムや経費精算システムの設定が重要になります。
考えられる対応は、大きく次の2つです。
仕入時に税区分で処理する方法
免税事業者等からの仕入れ用の税区分を設定し、仕入時点で控除可能額と控除不能額を分ける方法です。この方法であれば、決算時の追加処理や申告調整を減らしやすくなります。
ただし、システム改修や取引先ごとの登録番号管理が必要です。
決算時にまとめて追加処理する方法
仕入時は従来どおり処理し、決算時に免税事業者等からの仕入れを集計して、控除不能額を雑損失や取得価額に振り替える方法です。
システム改修コストを抑えられる一方、期末在庫や固定資産がある場合には、申告調整や台帳修正が必要になります。
どちらがよいかは、免税事業者等との取引件数、取引金額、棚卸資産の有無、固定資産取引の有無、システム対応状況によって変わります。
実務上のチェックポイント
免税事業者等からの仕入れについては、次の点を確認しましょう。
1. 取引先が適格請求書発行事業者か確認する
登録番号の有無を確認し、免税事業者等からの仕入れかどうかを区分します。
2. 経過措置の対象期間を確認する
取引日や役務提供完了日がどの期間に該当するかにより、控除割合が変わります。
3. 帳簿と請求書等の保存要件を確認する
経過措置を受けるには、一定の帳簿記載と請求書等の保存が必要です。
4. 控除できない部分を対価の額に含める
法人税上、控除不能額は仮払消費税等ではなく、経費・棚卸資産・固定資産などの対価に含めます。
5. 経費か棚卸資産か固定資産かを区分する
経費なら雑損失処理で申告調整不要となる場合がありますが、棚卸資産や固定資産では注意が必要です。
6. 期末在庫の有無を確認する
棚卸資産で期末在庫が残る場合、在庫対応分は当期損金にならないため、加算調整が必要になることがあります。
7. 固定資産の取得価額を確認する
控除不能額を固定資産の取得価額に含め、固定資産台帳や減価償却計算に反映させます。
8. 会計システムの税区分を整備する
仕入時処理で完結させるのか、決算時対応にするのか、社内ルールを決めておきましょう。
税務調査で確認されやすい資料
免税事業者等からの仕入れに関しては、税務調査で次の資料が確認される可能性があります。
・取引先の登録番号確認資料
・免税事業者等からの仕入一覧
・請求書、領収書、納品書
・帳簿の経過措置対象記載
・会計システムの税区分設定
・控除不能額の計算資料
・決算時の雑損失振替仕訳
・棚卸資産の期末在庫明細
・法人税申告書別表四、別表五(一)
・固定資産台帳特に、決算時にまとめて追加処理している場合は、どの取引について、いくらを控除不能額として計算したのかを説明できる資料が必要です。
よくある誤解
免税事業者からの仕入れは全額損金にならない
誤りです。消費税の仕入税額控除が制限されるだけで、法人税上は控除できない部分を対価の額に含めて所得計算します。経費であれば、通常は損金算入されます。
控除できない消費税相当額は仮払消費税等のままでよい
税抜経理方式では、仕入税額控除できない部分は仮払消費税等として清算するのではなく、対価の額に含める必要があります。
仕入時に処理しなければならず、決算時対応はできない
仕入時に処理する方法が分かりやすいですが、システム対応が難しい場合には、決算時に追加処理する方法も考えられます。
経費も棚卸資産も固定資産も、全部雑損失で処理すればよい
危険です。経費であれば申告調整不要になりやすいですが、棚卸資産で期末在庫がある場合や固定資産を取得した場合には、加算調整や取得価額への反映が必要です。
期末在庫があっても申告調整は不要
棚卸資産の期末在庫に対応する控除不能額は、当期の売上原価になりません。雑損失として処理している場合には、法人税申告で加算調整が必要になることがあります。
まとめ
インボイス制度では、免税事業者やインボイス登録をしていない事業者からの課税仕入れについて、原則として仕入税額控除を受けることができません。
ただし、一定期間は経過措置により、仕入税額相当額の一定割合を控除できます。
現行制度では、令和5年10月1日から令和8年9月30日までは80%、令和8年10月1日から令和10年9月30日までは70%、令和10年10月1日から令和12年9月30日までは50%、令和12年10月1日から令和13年9月30日までは30%を控除できる経過措置が設けられています。
税抜経理方式を採用している法人では、免税事業者等からの仕入れに係る仕入税額相当額のうち、仕入税額控除できない部分を仮払消費税等として処理するのではなく、法人税上は経費・棚卸資産・固定資産などの対価の額に含めて所得計算を行います。
仕入時にシステム上で対応できる場合は、控除可能額だけを仮払消費税等とし、控除不能額を仕入や経費に含める処理が分かりやすいでしょう。
一方、システム改修が難しい場合には、仕入時はいったん従来どおり処理し、決算時に控除不能額を追加処理する方法も考えられます。
ただし、経費、棚卸資産、固定資産で取扱いが異なります。
経費であれば、決算時に控除不能額を雑損失として処理しても、通常は申告調整不要となる場合があります。
一方、棚卸資産で期末在庫が残っている場合には、在庫対応分は当期損金にならないため、法人税申告で加算調整が必要です。
固定資産を取得した場合には、控除不能額を固定資産の取得価額に含めて、減価償却計算に反映する必要があります。
免税事業者等からの仕入れがある法人は、取引先の登録状況、経過措置の対象期間、帳簿・請求書等の保存要件、控除不能額の法人税処理を整理し、決算時に漏れなく確認しましょう。




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