オフィスの間仕切り撤去費用は資産計上? 損金処理? 税務上の考え方を税理士が解説
- 安田 亮
- 4月26日
- 読了時間: 6分
おはようございます!代表の安田です。
オフィスの移転や増床、部門再編、フリーアドレス化などに伴い、社内レイアウトを見直す企業は少なくありません。その際によく発生するのが、既存の間仕切りを撤去し、新しい間仕切りを設置する工事です。
このような場面で経理実務上よく問題になるのが、「古い間仕切りの撤去費用は、新しい間仕切りの取得価額に含めるべきか」それとも「当期の費用として損金処理してよいのか」という点です。
一見すると、新しいレイアウトを完成させるために必要な支出である以上、新しい間仕切りの取得価額に含めるべきにも思えます。しかし、税務上は必ずしもそのようには扱いません。
今回は、オフィスの間仕切り撤去費用の税務処理について、実務上の考え方をわかりやすく整理します。
1.古い間仕切りの撤去費用は、新しい間仕切りの取得価額に含めない
オフィスのレイアウト変更にあたり、現在の間仕切りを撤去し、新たに購入した間仕切りで内部を再区画するケースについて、古い間仕切りの撤去費用は、新たに購入した間仕切りの取得価額に算入しないと示されています。
つまり、撤去費用は新しい資産の一部として資産計上するのではなく、撤去した日の属する事業年度の損金の額に算入するのが基本的な取扱いです。
実務では、「新しい間仕切りを設置する前提で発生した費用だから、まとめて資産計上するのでは」と考えがちですが、税務上は新設費用と撤去費用を分けて考える必要があります。
2.なぜ取得価額に含めないのか
減価償却資産の取得価額について、建設等に係る資産の場合には、主に次のような費用の合計額になると整理されています。
その資産の建設等のために要した原材料費、労務費、経費
その資産を事業の用に供するために直接要した費用
しかし、古い間仕切りの撤去費用は、これらのいずれにも該当しないとされています。つまり、撤去費用は新しい間仕切りそのものを作るための費用でもなければ、新しい間仕切りを事業供用するために直接必要な費用として整理されるものでもない、という考え方です。
この点が、税務処理の結論を分ける重要なポイントです。
3.撤去費用はその事業年度の損金になる
今回のような間仕切りの撤去費用について、建物等を取り壊した場合の帳簿価額の損金算入に関する通達の考え方を準用するとされています。
この考え方によれば、まだ使用に耐える資産を取り壊し、新たな資産に入れ替える場合、取り壊した日の属する事業年度で損金算入することになります。そのため、古い間仕切りの撤去費用も、撤去した年度の費用として処理するのが原則です。
ここで重要なのは、「新しい間仕切りを設置した年度」ではなく、実際に撤去した日の属する事業年度で判断するという点です。決算期をまたぐ工事では、いつ撤去したのかを確認しておく必要があります。
4.新しい間仕切りの設置費用とは分けて考える必要がある
実務では、工事見積書や請求書の中で、
既存間仕切りの撤去費用
廃材処分費
新設間仕切りの購入費
新設工事費
などが一括表示されることがあります。
しかし、税務処理上はこれらをまとめて処理するのではなく、撤去に関する部分と、新設に関する部分を区分して考えることが大切です。古い間仕切りの撤去費用は当期損金、一方で新しい間仕切りの取得・設置に要する費用は資産計上という整理が基本になります。
請求書の内訳が曖昧なままだと、経理処理を誤る原因になるため、工事業者から明細を取り寄せておくと安心です。
5.建物取壊費用でも例外がある点に注意
ただ、建物の取壊し費用に関する例外的な取扱いもあります。
建物付き土地を取得し、当初からその建物を取り壊して土地を利用する目的が明らかな場合には、建物の帳簿価額や取壊費用の合計額を土地の取得価額に算入することがあるとされています。
たとえば、
建物付きの土地を取得してすぐに建物を取り壊した
取得後おおむね1年以内に取壊しに着手した
当初から建物を使う意思がなく、土地利用が目的だった
といったケースでは、通常の取壊費用とは異なる処理になる可能性があります。
つまり、撤去・取壊し費用は常に費用処理とは限らないということです。もっとも、今回のオフィス内の間仕切り撤去は、この土地取得目的の例外とは性質が異なります。
6.実務で誤りやすいポイント
① 撤去費用をすべて新資産の取得価額に含めてしまう
これはよくある誤りです。資料では、古い間仕切りの撤去費用は新しい間仕切りの取得価額には算入しないと整理されています。
② 請求書が一括記載のまま区分せずに処理してしまう
撤去費用と新設費用を分けないまま資産計上すると、税務上の処理を誤るおそれがあります。
③ 「新しい設備のために必要だったから全部資産」と考えてしまう
税務では、支出の目的や発生原因に応じて個別に判断する必要があります。新設工事に関連しているからといって、撤去費用まで自動的に取得価額に入るわけではありません。
④ 土地建物の取壊費用の例外と混同してしまう
建物付き土地の取得時の取壊費用には例外がありますが、それをオフィス内装の撤去費用にそのまま当てはめることはできません。
7.オフィス改装時に確認しておきたいこと
オフィスの間仕切り撤去やレイアウト変更を行う際は、次の点を整理しておくと経理処理がスムーズです。
① 見積書・請求書の内訳を確認する
撤去費用、新設費用、処分費などが分かれているか確認します。
② 工事の実施時期を確認する
撤去した日がどの事業年度に属するかは損金算入時期に関係します。
③ どこまでが新資産の取得価額か整理する
新設間仕切りの本体費用や設置費用と、旧資産の撤去費用は分けて考える必要があります。
④ 大規模改装の場合は他の論点も確認する
間仕切りだけでなく、床、天井、電気設備、空調、原状回復費用などが絡む場合は、資本的支出や修繕費の検討も必要になります。
まとめ
オフィスのレイアウト変更に伴って古い間仕切りを撤去した場合、その撤去費用は新たに購入した間仕切りの取得価額には算入せず、撤去した日の属する事業年度の損金に算入するのが基本的な税務処理です。その理由は、撤去費用が新しい資産の建設費や事業供用のために直接要した費用には該当しないためです。
一方で、建物付き土地を取得して当初から建物を取り壊すことが明らかな場合など、例外的に取壊費用等を土地の取得価額に算入するケースもあります。そのため、撤去費用・取壊費用は一律に処理せず、何を撤去するのか、なぜ撤去するのか、どの資産に関連するのかを踏まえて判断することが大切です。
オフィス改装は金額も大きくなりやすいため、見積段階から費用の区分を意識しておくことで、後の経理処理や税務対応がスムーズになります。




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