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国際最低課税額に対する法人税の初回申告期限に注意|3月決算法人は令和8年9月30日まで

  • 執筆者の写真: 安田 亮
    安田 亮
  • 20 分前
  • 読了時間: 9分

おはようございます!代表の安田です。


大企業グループや海外子会社を有する企業にとって、国際課税の実務は年々重要性を増しています。


その中でも、令和5年度税制改正で創設された「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税」は、対象となる企業グループにとって非常に重要な制度です。


この制度は、いわゆるグローバル・ミニマム課税のうち、所得合算ルール、いわゆるIIRを国内法制化したものです。令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用されており、対象となる3月決算法人では、令和7年3月期分について、いよいよ初回申告期限が近づいています。


具体的には、3月決算法人の場合、令和7年3月期に係る国際最低課税額確定申告書を、令和8年9月30日までに提出する必要があります。


今回は、国際最低課税額に対する法人税の概要、対象となる企業グループ、初回申告期限、あわせて必要となる情報申告制度について整理します。


国際最低課税額に対する法人税とは?

国際最低課税額に対する法人税とは、一定規模以上の多国籍企業グループを対象に、グループ内の子会社や恒久的施設が所在する国・地域での税負担が、国際的に合意された最低税率に満たない場合、その不足分について親会社所在地国などで追加課税する制度です。


簡単にいうと、海外子会社等が低税率国に所在し、その国での実効税率が一定水準を下回る場合に、日本の親会社等に追加的な法人税が課される仕組みです。


制度の背景には、各国間の過度な法人税率引下げ競争や、低税率国への利益移転を防ぐという国際的な流れがあります。


基準税率は15%

この制度では、基準となる税率は15%です。

特定多国籍企業グループ等に属する子会社や恒久的施設等が所在する国の実効税率が15%に満たない場合、その税負担が15%に達するまでの部分について、日本の親会社等に課税されます。


たとえば、ある海外子会社が所在する国での実効税率が10%であれば、基準税率15%との差額部分が問題になります。その不足部分について、一定の計算に基づき、日本側で国際最低課税額に対する法人税が課されるという考え方です。


この仕組みは、海外子会社の利益や現地税負担を含めたグループ全体の税務情報を把握しなければ対応できません。そのため、対象企業では、通常の法人税申告とは異なる国際税務・連結情報の整理が必要になります。


対象となる特定多国籍企業グループ等とは?

この制度の対象となるのは、一定規模以上の特定多国籍企業グループ等です。


特定多国籍企業グループ等について、多国籍企業グループ等のうち、各対象会計年度の直前4対象会計年度のうち2以上の対象会計年度において、総収入金額が7億5,000万ユーロ以上であるもの等と整理されています。


つまり、すべての海外子会社保有企業が対象になるわけではありません。基本的には、一定規模以上の大規模な多国籍企業グループが対象です。


ただし、対象になるかどうかの判定には、グループ全体の収入規模や会計年度、構成会社等の範囲を確認する必要があります。日本法人単体の売上規模だけで判断しない点に注意が必要です。


令和6年4月1日以後開始対象会計年度から適用

国際最低課税額に対する法人税は、令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用されています。3月決算法人であれば、令和6年4月1日から始まる令和7年3月期が、最初の対象会計年度になります。


そのため、該当する3月決算法人では、令和7年3月期について、初回の申告対応が必要になります。通常の法人税申告とは期限が異なるため、決算申告が終わった後も、国際最低課税額に対する法人税の申告準備を継続して進める必要があります。


初回申告期限は対象会計年度終了日の翌日から1年6か月以内

国際最低課税額がある場合、対象となる内国法人は、原則として各対象会計年度終了日の翌日から1年3か月以内に、国際最低課税額確定申告書を提出する必要があります。


ただし、初回申告については、提出期限が延長され、対象会計年度終了日の翌日から1年6か月以内とされています。3月決算法人の場合、令和7年3月期の対象会計年度終了日は令和7年3月31日です。その翌日から1年6か月以内となるため、初回申告期限は令和8年9月30日となります。


この期限は、通常の法人税申告期限とは大きく異なります。通常申告後に時間があるように見えても、海外子会社情報の収集や実効税率計算には時間を要するため、早めの準備が必要です。


原則としてe-Taxによる申告が必要

国際最低課税額確定申告書は、原則としてe-Taxによる申告が必要です。

国税庁ホームページでは、関連する申告書として、「別表二十 各対象会計年度の国際最低課税額に係る申告書」などが公表されています。


対象法人では、申告書様式の確認だけでなく、e-Taxで提出できる体制、社内承認フロー、電子署名・代理送信の方法なども確認しておく必要があります。


特に初回は、通常の法人税申告とは別の制度対応になるため、申告書作成ソフトや税務代理体制の確認も早めに行うことが大切です。


国際最低課税額がある場合だけでなく情報申告にも注意

今回の制度対応で忘れてはいけないのが、情報申告制度です。

令和5年度税制改正では、国際最低課税額に対する法人税とあわせて、特定多国籍企業グループ等に関する一定情報を税務当局へ提供する制度も創設されています。


具体的には、特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等である内国法人は、特定多国籍企業グループ等報告事項等を、所轄税務署長へ提供する必要があります。

これは、国際最低課税額の申告そのものとは別に、グループ情報を税務当局へ提供する制度です。


特定多国籍企業グループ等報告事項等とは?

特定多国籍企業グループ等報告事項等には、グループ全体や構成会社等に関する情報が含まれ、主な内容として次のような事項が挙げられています。

  • 特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等の名称

  • 構成会社等の所在地国ごとの国別実効税率

  • 特定多国籍企業グループ等のグループ国際最低課税額

  • その他、制度上求められる関連情報


これらの情報は、日本法人単独では把握できないものも多く、海外親会社や海外子会社、グループ税務部門との連携が欠かせません。


情報申告制度の提供期限

特定多国籍企業グループ等報告事項等についても、原則として各対象会計年度終了日の翌日から1年3か月以内に、e-Taxにより所轄税務署長へ提供する必要があります。


ただし、最初に提供しなければならない場合には、国際最低課税額確定申告書と同様に、対象会計年度終了日の翌日から1年6か月以内に提供することになります。


したがって、対象となる3月決算法人では、令和7年3月期に係る国際最低課税額確定申告書だけでなく、特定多国籍企業グループ等報告事項等についても、令和8年9月30日までに申告・提供する必要があります。


初回対応で見落としやすいポイント

国際最低課税額に対する法人税は、対象企業が限定される一方、該当する場合には対応負荷が大きい制度です。初回対応では、次の点を見落とさないよう注意が必要です。


1. 通常の法人税申告期限とは異なる

通常の法人税申告が終わっていても、国際最低課税額に対する法人税の初回申告期限は別途到来します。3月決算法人では、令和8年9月30日が重要な期限です。


2. 情報申告制度も同時に確認が必要

国際最低課税額の申告だけでなく、特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供も必要です。片方だけ対応して安心しないよう注意しましょう。


3. 海外グループ会社の情報収集に時間がかかる

国別実効税率やグループ国際最低課税額の算定には、海外子会社やグループ全体の財務・税務情報が必要です。国内法人だけで完結する申告ではありません。


4. e-Tax対応が必要

原則としてe-Taxでの申告・提供が必要です。提出形式、電子署名、代理送信、添付書類の形式などを事前に確認しておきましょう。


対象法人が確認すべき実務対応

対象となる可能性がある法人では、まずグループ全体で制度該当性を確認する必要があります。具体的には、次のような対応が必要になります。

  • 特定多国籍企業グループ等に該当するか確認する

  • 直前4対象会計年度の総収入金額を確認する

  • 構成会社等の範囲を整理する

  • 所在地国ごとの実効税率を確認する

  • 国際最低課税額の有無を判定する

  • 国際最低課税額確定申告書の提出要否を確認する

  • 特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供要否を確認する

  • e-Tax提出体制を整える

  • 国税庁公表の申告書・記載要領を確認する


特に、日本法人がグループ内の最終親会社ではない場合でも、国内構成会社等として情報提供義務が生じる可能性があります。親会社任せにせず、日本側での提出義務を確認することが重要です。


3月決算法人は令和8年9月30日を期限管理に

対象となる3月決算法人にとって、令和8年9月30日は非常に重要な期限です。

令和7年3月期について、次の両方を同日までに対応する必要があります。

  • 国際最低課税額確定申告書の提出

  • 特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供

どちらも初回対応であり、社内でも慣れていない可能性が高い手続です。

通常の法人税申告とは別に、プロジェクト管理のような形で、情報収集、計算、レビュー、申告書作成、e-Tax提出までのスケジュールを組むことをおすすめします。


まとめ

令和5年度税制改正により、グローバル・ミニマム課税の所得合算ルール、いわゆるIIRに対応する制度として、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税が創設されました。


この制度は、令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用され、特定多国籍企業グループ等に属する内国法人について、海外子会社や恒久的施設等の所在地国における実効税率が基準税率15%に満たない場合、その不足部分について日本側で課税する仕組みです。


対象となる特定多国籍企業グループ等とは、原則として、直前4対象会計年度のうち2以上の対象会計年度で総収入金額が7億5,000万ユーロ以上である多国籍企業グループ等をいいます。


国際最低課税額がある場合、原則として対象会計年度終了日の翌日から1年3か月以内に国際最低課税額確定申告書を提出する必要があります。ただし、初回申告については、対象会計年度終了日の翌日から1年6か月以内とされており、対象となる3月決算法人では、令和7年3月期分について令和8年9月30日までに申告が必要です。


また、情報申告制度により、特定多国籍企業グループ等報告事項等についても、初回は同じく令和8年9月30日までにe-Taxで提供する必要があります。


国際最低課税額に対する法人税は、対象企業が限られる一方、該当する場合には情報収集・計算・申告の負担が大きい制度です。対象となる可能性がある法人は、通常の法人税申告とは別に、国際最低課税額確定申告書と情報申告の期限管理を早めに進めておきましょう。


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